あらすじ
第五十四話は、劉楚玉と容止の複雑な愛憎劇と政治闘争のクライマックスを描いています。劉楚玉は負傷した容止を大魏軍に送り届けます。劉楚玉は依然として容止に疑念を抱いていましたが、幾つかの出来事を経て、二人の想いは次第に深まっていきます。
拓跋弘が仕組んだ鴻門の宴で、容止は劉楚玉を救うために毒を飲むことを余儀なくされ、劉楚玉への深い愛情を示します。その後、容止は機転を利かせて窮地を脱し、ついには太后と協定を結び、権力を手放す代わりに自由を得ます。
物語の終盤、容止は劉楚玉を守るため、毒によって体が不自由になったと見せかけますが、実際には視力も行動能力も失っていません。劉楚玉が宋の公主府に戻ると、そこには容止が待っていました。二人はついに結ばれ、穏やかな日々を送ることになります。
一方、大魏では政局が大きく変わり、太后が実権を握りますが、容止が残した政策は民衆から広く支持されます。物語は二人の幸せな姿で幕を閉じ、愛の力がすべてに打ち勝つことを示唆しています。
ネタバレ
劉楚玉は容止を大魏の陣営へ送り届けます。彼は傷を負い昏睡状態。劉楚玉は彼の頬を優しく撫で、心配で胸が張り裂けそうでした。容止が目を覚ますも、劉楚玉の怒りは収まらず、彼への信頼は揺らいでいました。そこへ沈遇が現れ、拓跋弘が容止に退兵を命じたことを伝えます。沈遇は好機と捉えますが、容止は劉楚玉を救った手前、命令に従い撤退を決意。拓跋弘の真意を既に察していました。馬車に乗せられた劉楚玉は沈んだ気持ちでしたが、清越が「摂政王の寵愛を受けている劉楚玉には、沈遇も手出しできない」と励ますと、少し気分が晴れました。それを聞いた容止は、小さく口角を上げます。
道中、突然現れた宦官が、北郊で摂政王の勝利を祝う宴があると告げます。容止は劉楚玉と共に赴き、拓跋弘と太后自らが出迎えます。拓跋弘は容止に酒を勧めますが、容止は体調不良を理由に断ります。すると、拓跋弘は突如血を吐き、容止を毒殺未遂で責め立てます。罠だと悟った容止。拓跋弘の兵が劉楚玉を捕らえ、太后は容止に毒薬を飲ませます。劉楚玉を守るため、容止は屈辱を堪え、太后を「最も残酷な女」と罵りながら毒を飲み幹します。
勝利を確信した拓跋弘に対し、容止は「虎と手を組む危険」を指摘し、太後の正体を暴露します。激怒した拓跋弘は攻撃を命じますが、そこへ沈遇が援軍を率いて到著。全ては容止の計画通りでした。容止は兵権を放棄すると宣言。たとえ不利な状況になっても後悔しないと断言し、もし自分が死ねば、配下の死士たちが大魏皇族を執拗に狙うと警告します。事態の深刻さを理解した太后は、拓跋弘を説得し、容止とその部下を解放させます。沈遇は平城に残り、劉楚玉は別れ際に清越を託します。
出発後も劉楚玉の怒りは解けません。容止は飲んだ薬で武力を失うだけだと嘘をつき、再起の可能性を匂わせ、劉楚玉を遠ざけようとします。劉楚玉は背を向けますが、容止が血を吐く音を聞き、慌てて駆け戻ります。容止は危篤状態。劉楚玉は必死に看病します。容止は、劉楚玉の血で運命を変えるという提案を拒否したことを告白。「運命は自分の手で掴む」と信じていたのです。劉楚玉に香囊を返し、強く生きていくよう励まします。容止の容態が悪化し、劉楚玉は涙を流しながら希望を捨てないでと懇願します。容止はもはやどうにもならないと首を振りますが、劉楚玉への愛は権力への野望を凌駕していました。
平城へ連れ戻された容止。拓跋弘は容止の遺体を切り刻むよう命じますが、太后はそれを止め、丁重に葬るよう指示します。拓跋弘は事前に解毒剤を飲んでおり、容止を陥れるために毒を盛られた芝居を打っていたのです。しかし、彼の顔色は依然として青ざめていました。紅袖が男子を出産。太后は「拓跋宏」と名付けるよう提案します。大魏の伝統では、新皇子を太子に立てれば生母は処刑されることになっていました。しかし太后は、太子ではなく皇帝にすると発言。拓跋弘は警戒心を抱きます。太后は、自分の本当の息子は拓跋洪という名で、保身のために彼を殺し、拓跋弘を擁立したことを告白。そして、もはや自分の意のままにならない拓跋弘を廃し、新たな皇帝を立てるつもりだと明かします。拓跋弘は太後の恐るべき深謀遠慮に気づきますが、時すでに遅し。太后は彼の側近を全て掌握し、実権を奪っていました。
劉楚玉は一人で宋の公主府に戻ります。月明かりの下、彼女は容止が琴を弾いているのを発見。優しく名前を呼ぶと、容止は衰弱して倒れ込みます。実は容止は毒で死んだのではなく、一時的に目が見えず、身体も麻痺していただけでした。太后と取引し、自由の身となっていたのです。劉楚玉は容止の障害など気にしません。生きていてくれればそれでいいのです。その後、容止は計略を用いて太後の侍女を買収し、視力と歩行能力を取り戻します。建康の公主府で、劉楚玉は大魚を釣り上げ、容止に見せようと興奮気味に呼びかけます。容止は盲目で足が不自由なふりを続けます。劉楚玉は彼を「嘘つき」と非難します。容止は策略で自由を手に入れ、天下さえも掌握できたはずなのに、全てを捨て劉楚玉を選びました。愛のために全てを犠牲にする覚悟を示したのです。物語は、愛し合う二人の幸せな姿で幕を閉じます。
最終話の感想
「鳳囚凰 〜陰謀と裏切りの後宮〜」の最終話、第54話は、息詰まる展開と感動的な結末が共存する、まさに圧巻の一言でした。容止の知略と劉楚玉への深い愛情が、物語全体を貫く大きな柱となっていましたが、最終話ではそれが最大限に発揮され、観ている者の心を揺さぶりました。
拓跋弘の策略、太後の冷酷な野望、そして容止の窮地。次々と繰り出される危機に、ハラハラドキドキさせられっぱなしでした。特に、容止が毒を飲まされるシーンは、彼の劉楚玉への愛の深さを改めて感じさせ、涙を誘います。
しかし、どんな困難な状況でも、決して諦めない容止の姿は、まさに英雄的。そして、彼の策略によって、最終的には自由を掴み取る展開は、カタルシスさえ感じさせます。偽りの死を装い、太后との取引をするなど、彼の知略には感服するばかりです。
一方で、劉楚玉の容止への揺るぎない愛情も印象的でした。容止の障害を受け入れ、ただ生きていてくれるだけで良いという彼女の純粋な想いは、多くの視聴者の共感を呼んだことでしょう。
最終的に二人が静かに寄り添うラストシーンは、これまでの波乱万丈な物語を締めくくるに相応しい、美しく、そして心温まるものでした。策略と愛憎渦巻く後宮という舞台で、真の愛を貫き通した二人の姿は、深く心に刻まれました。