あらすじ
第10話は、梅長蘇が巧みな計略を巡らせ、靖王の地位固めに奔走する様子を描いています。
まず、梅長蘇は沈追を戸部尚書に推薦し、靖王に朝廷の人事を知るための詳細な官吏名簿を提供しました。そして、演武場での出来事を利用して、靖王に軍の統製強化を促します。
続いて、「蘭園蔵屍案」を解決に導き、楼之敬を罪に陥れることに成功します。これは梅長蘇の計画通りに進んだ結果でした。
同時に、梅長蘇は吏部への工作を開始します。心柳と心楊を使い、吏部尚書の息子である何文新を殺人罪で逮捕させるという策略です。誉王はこの事態に対し、自ら手を打ち収拾しようと画策します。
一方、寧国侯府の事件は適切に処理されたものの、靖王は正当な評価を得ることができず、逆に誉王が賞を受けました。
ネタバレ
梅長蘇は靖王に沈追という人物を推挙した。民のことを思い、実直な沈追は戸部尚書の適任者だと。ちょうどその時、梁帝の側近である高湛も沈追の名を挙げ、その中立的な立場から梁帝も彼を最適だと判断し、沈追は戸部尚書に任命された。
靖王は長年の遠徴で六部の事情に疎いため、梅長蘇は予め用意していた六部及び三司協審の官吏名簿を靖王に渡し、彼らと誠実に付き合うよう助言した。
演武場では、飛流と戚猛が手合わせをしていた。観戦していた梅長蘇に対し、戚猛は挑発的な態度をとる。梅長蘇はこの機会を利用し、靖王の軍の規律の緩み、綱紀の乱れを指摘し、皇位継承の準備として軍務の厳正化を促した。靖王はハッと気づき、戚猛を厳罰に処した。
靖王は三司を招集し、梅長蘇が提供した名簿に基づき、輔審官吏を任命した。
梅長蘇の計画通り、"蘭園蔵屍案"は証拠確鑿となり、楼之敬は逮捕され、死刑を宣告された。
野菜売りに扮した童路は、梅長蘇と十三先生への連絡役を担っていた。彼の妹は蘭園で楼之敬に殺害され、無念の死を遂げていた。今、一家は仇を討ち、梅長蘇に深く感謝した。
梅長蘇は次の目標を吏部に定めた。楊柳心妓楼では、宮羽の手配により、心柳と心楊が命懸けで文遠伯の息子、邱澤を陥れる準備を整えていた。二人の弟は13歳の時、邱澤に撲殺されていたのだ。
宮羽の計略により、吏部尚書何敬中の息子、何文新は邱澤と妓女を巡って争い、激しい喧嘩となる。計画通り、何文新は衆人環視の中で邱澤を撲殺した。
京兆尹高昇は自ら何文新を捕縛に向かうが、門前払いを受ける。吏部尚書の何敬中は誉王に助けを求めた。誉王の幕僚は、何文新を一旦引き渡し、高昇に結審させ、刑部に報告が上がった後で、改めて対応する策を提案した。
文遠伯は幾度も刑部に事件の進捗を問い合わせるが、刑部尚書の斉敏に躱され続け、埒が明かない。
寧国公は秋決となり、家財は没収された。裁判は見事に成功したが、靖王は梁帝から僅かな称賛しか得られなかった。一方、寛大な態度を示し、騒ぎを起こさなかった誉王は多大な褒美を受けた。輔審官吏たちは不公平だと感じたが、靖王にとってはいつものことだった。
言豫津と蕭景睿は紀王府を訪ね、紀王が事件現場に居合わせ、何文新が殺害するのを目撃していたことを知る。
第10話の感想
第10話は、梅長蘇の周到な計画性と冷徹なまでの復讐心が際立つエピソードでした。まるで盤上の駒を動かすように、何敬中父子と邱澤を利用し、見事に復讐を果たす様は、見ていて鳥肌が立ちました。特に、心柳と心楊姉妹の悲痛な過去と、復讐への強い意誌が描かれたシーンは、胸を締め付けられる思いでした。彼女たちの弟を殺害した邱澤が、同じように命を落とすという因果応報的な結末は、ある種の残酷さを感じさせながらも、カタルシスも感じられました。
一方、靖王は梅長蘇の指示に従い、著実に勢力を拡大していきます。しかし、寧国公事件の功績が正当に評価されず、誉王が褒美を得るという不条理な状況に、改めて朝廷内の権力争いの複雑さを思い知らされます。靖王の真面目さと実直さは、時に損をする結果に繋がるようですが、梅長蘇の支えによって、少しずつ変化していく兆しも見られます。演武場での戚猛への叱責は、まさにその象徴と言えるでしょう。
つづく