あらすじ
第二十九話は江左盟による岳州知府の贈り物強奪事件とその余波を描いています。江左盟は誉王への贈り物として岳州知府が用意した五千両以上の銀子を奪い、梅長蘇はこの事件を公にすることで民衆の誉王への不満を煽り、皇帝の注意を引く計画を立てました。宮中では、贈収賄事件の発覚により誉王の面目は丸潰れとなり、梁帝は靖王に災害救済の任務を任せることになります。靖王の手腕は梁帝や朝廷の臣下から高く評価され、これが誉王の嫉妬心を掻き立てます。誉王は秦般弱と対策を練り、靖王の後ろ盾となっている赤焰逆賊事件を利用し、靖王の立場を根本から揺るがそうと画策します。また、秦般弱は自身の特別な身分を明かし、誉王と夏江の協力を促そうとします。一方、靜妃の行動が梅長蘇の警戒心を呼び起こし、彼は自分の身分が既に露見しているのではないかと疑念を抱きます。冬の到来と共に梅長蘇の体調は悪化しますが、彼は重要な任務をこなし続けます。
ネタバレ
江左盟が五日前、誉王への貢ぎ物を運ぶ輸送隊を撫州で襲撃しました。貢ぎ物を送ったのはなんと、被災が最も深刻な岳州の知事でした。金額は五千両以上にも上ります。梅長蘇は靖王に、二日のうちにこの事件を岳州中に広め、民衆の怒りを煽り、皇帝の注意を引くよう手配したと伝えました。
宮中では、刑部と吏部が誉王の収賄事件を皇帝に報告しました。誉王は言い訳しますが、沈追と蔡荃によって確固たる証拠を突きつけられます。皇室の面目が失墜し、皇帝は激怒。誉王はもう災害対策の責任者にはふさわしくないと判断し、靖王に交代させました。
靖王は災害対策で素晴らしい成果を上げ、皇帝や廷臣から絶賛されます。「馬に乗れば戦え、馬を降りれば政治ができる」と称賛され、誉王は嫉妬に狂います。秦般弱に唆され、家で酒に溺れていた誉王はついに、梅長蘇が既に靖王の配下になっていることを認めました。秦般弱は、梅長蘇と江左盟を先に攻撃することを提案します。それは誉王を助けるためだけでなく、江左盟に紅袖招を壊滅させられた復讐を果たすためでもありました。誉王はその意図を見抜き、計画の不備を指摘します。靖王は朝廷での支持基盤が既に強固であり、梅長蘇だけに頼っているわけではないのに対し、誉王自身は六部の中に使える人間がいないことを嘆きます。江左盟は強大すぎて正面から戦うのは難しいため、靖王を倒すことで梅長蘇の力を奪う「釜底抽薪」の策を提案します。靖王が倒れれば、梅長蘇は活躍の場を失う、というわけです。そして靖王の弱点は、長年、靖王と皇帝の間にある壁となっている赤焰軍の冤罪事件だと考えます。
秦般弱は誉王と夏江を協力させるため、自分が滑族の璇璣公主の末裔であることを明かし、夏江を説得すると申し出ます。夏江と璇璣公主にはかつて繋がりがあったからです。
夏江はこのところ、莅陽長公主を尾行させており、謝玉の手紙を入手するために彼女を殺そうと企んでいましたが、なかなか機会がありませんでした。その手紙は、夏江の身に迫る脅威となっているのです。
靜妃は『翔地記』を読んだ後、いつも靖王に同じ菓子を二つ持たせていました。もちろん一つは梅長蘇のためのものです。梅長蘇は菓子の入った箱を見て不安を感じます。甄平に理由を聞かれ、靜妃が送る菓子の中に、自分が幼い頃から食べられない榛子酥がないことを明かします。榛子酥は靖王の大好物であることから、靜妃が自分の正体に気づいているのではないかと疑い始めます。
童路は十三先生に宗主からの妙音坊閉鎖の命令を伝えます。その後、雋娘という名の四姐の身元確認を十三先生に求め、確認を得て安心して去っていきました。
再び厳しい冬が訪れ、梅長蘇の咳は止まらず、病状が悪化します。それでも彼は病を押して言侯を訪ねます。屋敷に入り、豫津から景睿が元気に過ごしていると聞き、少し安心しました。
第29話の感想
第29話は、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、今後の展開がますます読めなくなるような、緊張感あふれる回でした。
誉王は窮地に立たされ、ついに梅長蘇が靖王側の人間だと認めます。焦りと嫉妬に駆られる誉王の姿は、これまで保っていた冷静さを失い、見ていて痛々しいほどでした。しかし、その中で彼が示した「釜底抽薪」の策は、靖王の弱点を見事に突いており、梅長蘇にとって大きな脅威となる予感がします。赤焰軍の冤罪事件が再び取り上げられることで、靖王はどのような苦境に立たされるのでしょうか。
一方、梅長蘇は靜妃の行動から、自身の正体が見破られているのではないかと疑念を抱き始めます。これまで冷静沈著に事を運んできた彼ですが、病状の悪化も相まって、わずかな綻びにも敏感になっているようです。靜妃の真意はどこにあるのか、非常に気になるところです。
つづく