あらすじ

第35話は、衛崢えいそう救出を巡る各勢力の駆け引きと対応を描いています。

まず、夏江かこう誉王よおう衛崢えいそう面会要請を拒否し、四姉を通じてのみ連絡を取ることを許可しました。誉王よおう妃は誉王よおうに対し、靜妃しずひ宸妃しんひの位牌を密かに祀っている情報と、皇后の動向を伝え、誉王よおうはこれを好機と捉えます。

一方、梅長蘇ばいちょうそは蘇宅に30人以上の精鋭を集め、救出作戦を綿密に計画していました。陽動作戦として、梅長蘇ばいちょうそ豫津よしん宮羽きゅううの居場所を紀王に漏らすよう指示し、紀王の注意を逸らそうとします。また、言侯げんこう夏江かこうを郊外へ呼び出し、夏江かこうの息子に関する情報を持っていると告げます。夏江かこうは息子の情報に半信半疑ながらも、言侯げんこうとの会合を決意しますが、同時に妻への冷酷な一面を見せます。

さらに、夏江かこう靖王せいおう衛崢えいそう救出を試みる可能性を予測し、事前に衛崢えいそう大理寺だいりじへ移送、牢獄には罠を仕掛け、救出作戦の失敗を確実なものにしようと企みます。

ネタバレ

誉王よおう衛崢えいそうに面会を求めるも、党争への関与を避ける夏江かこうに拒否され、四姉を通じて連絡を取るよう指示される。誉王よおうは四姉の対応の遅さに苛立ちながらも、従わざるを得なかった。そこへ誉王よおう妃が現れ、靜妃しずひ宸妃しんひの位牌を密かに祀っていること、そして皇后が内通者と連携し、この件で靜妃しずひを陥れる計画を立てていることを伝える。誉王よおうは大いに喜んだ。

一方、蘇宅では、梅長蘇ばいちょうそが精鋭30名余りを集め、大晦日の衛崢えいそう救出作戦を綿密に計画していた。

梅長蘇ばいちょうその計らいで、豫津よしんは紀王を訪ねる。豫津よしん宮羽きゅううの居場所をわざと漏らし、音律を愛する紀王は興味津々。二人は大晦日の午後に宮羽きゅううの新しい曲を聴きに行く約束をする。同時に、言侯げんこう夏江かこうに大晦日に城外西郊の寒鍾観で会う約束を取り付け、夏江かこうの息子に関する情報を得たと告げる。言侯げんこうは、長年息子を探し続けている夏江かこうがこの誘いに乗ると確信していた。

大晦日の朝、夏冬かとう は例年通り城外へ聶鋒じょうほうの墓参に出かける。夏秋か しゅうを遠ざけるため、容疑者の逮捕を依頼し、一緒に懸鏡司を離れさせた。狡猾な夏江かこうは、この日何者かが牢を襲撃することを予想し、四姉に連絡して誉王よおうに皇帝の傍に侍るよう指示を出す。

約束通り、夏江かこう言侯げんこうと会う。言侯げんこうはわざと時間を引き延ばし、夏江かこうの追及を受けてようやく息子の話を切り出す。実は、昔、心優しい夏夫人は掖幽庭から滑族かつぞく璇璣せんき公主を救い出し、姉妹のように接していた。しかし、璇璣せんき公主は恩を仇で返し、夏江かこうと密通してしまう。傷心した夏夫人は息子を連れて家を出たきり、行方不明になっていた。5年前、夏夫人から言侯げんこうに手紙が届き、息子は脳の病で幼くして亡くなったと記されていた。

夏江かこうは信じようとせず、言侯げんこうから手紙を受け取る。夏江かこうは手紙を読み終えると、何も言わずにそれを粉々に引き裂く。糟糠の妻への冷酷な態度が露わになった。

夏江かこう靖王せいおう言侯げんこうを使って自分を城外へおびき出し、その隙に懸鏡司から衛崢えいそうを救出するつもりだと気づいていた。しかし、夏江かこうは慌てない。既に罠を仕掛けていたのだ。衛崢えいそう大理寺だいりじに移送されており、牢には大量の火薬が仕掛けられ、導火線に火をつければ侵入者は跡形もなく消し飛ぶはずだった。

第35話の感想

第35話は、複数の策略が同時進行するスリリングな展開で、息つく暇もないほどでした。梅長蘇ばいちょうその周到な計画、言侯げんこうの復讐心、夏江かこうの冷酷さ、そして誉王よおうの野心など、様々な思惑が複雑に絡み合い、物語をさらに深いものへと昇華させています。

特に印象的だったのは、言侯げんこう夏江かこうの対峙です。長年息子を探し続けていた夏江かこうに対し、言侯げんこうは残酷な真実を突きつけます。息子を亡くした悲しみよりも、妻への裏切りに対する怒りが勝る夏江かこうの冷酷さは、見ていて背筋が凍るようでした。手紙を粉々に引き裂くシーンは、彼の非情さを象徴的に表しており、強い印象を残しました。

また、梅長蘇ばいちょうその緻密な計画にも驚かされます。紀王を利用して夏秋か しゅうを遠ざけるなど、あらゆる可能性を想定した上で策を練り上げています。彼の冷静沈著な姿は、まさに「麒麟の才子」の名にふさわしいと言えるでしょう。

つづく