あらすじ
第四十九話は、夏江が梅長蘇の真の身分を疑い、宮中に赴いて密告する場面から始まります。 この密告により、梁帝は梅長蘇に大きな疑念を抱き、梅長蘇を召還して身体的特徴を調べ上げるなど、その身分を確かめようとする様々な策を講じます。
梅長蘇は梁帝の追及に対し、巧みに対応します。 夏江の陰謀を暴くだけでなく、自らが梁帝にとって脅威ではなく、皇室に忠誠を誓う者であることを納得させます。 結果として、夏江は離間工作の罪で処罰されることになります。
この危機を共に乗り越える中で、梅長蘇と景琰の深い友情と信頼がより一層強まります。 梅長蘇の安全を確保した後、景琰は一人芷蘿宮へと向かいます。そして、梅長蘇こそが梅長蘇であるという確信を、静かに胸に刻むのでした。
ネタバレ
夏江は危険を冒して入宮し、梁帝に疑念を全て打ち明けた。御書院では火寒毒の記録も見つかった。烈火、暴雪、梅嶺特有の雪蚧虫が火寒毒の条件だと知った梁帝は、梅嶺の激戦、そして梅長蘇入京後の様々な変化を思い出し、疑念を深めた。梁帝はすぐさま梅長蘇を召し出し、同時に蒙摯に三日間の休暇を強製し、禁軍を柴都統の掌握下に置いた。高湛は事態の危機を感じ、靜妃の侍女が梁帝に百合湯を届ける機会に、密かに「蘇先生は入宮してはならない」と伝えた。靜妃は太子・景琰に急いで知らせた。列戦英は太子の命で梅長蘇を止めに向かったが、宮門に著いた時には既に遅く、梅長蘇は入宮していた。藺晨は黎綱に穆霓凰への連絡を指示した。
その頃、梅長蘇は既に梁帝に謁見していた。梁帝は梅長蘇の胎記の有無を確認したが、何も見つからなかった。
東宮では、列戦英が景琰に、梅長蘇が養居殿に入った後、音沙汰がないと報告した。太子、蒙摯、霓凰は心配と同時に梁帝の真意を測りかねていた。皆が途方に暮れていると、梁帝は景琰を召した。景琰は皆の製止を振り切り、危険を承知で入宮し、梅長蘇と靜妃を守る策を講じることにした。一同は、もし正午までに景琰が出てこなければ、梁帝に仮旗を翻し、宮中に救出に向かうと約束した。
景琰は養居殿で梅長蘇と対面したが、事情を尋ねることもできず、ただ傍らに控えていた。夏江が入殿すると、すぐさま梅長蘇が逆賊・赤焰軍の主帥・林燮の息子、すなわち赤羽営の主将・梅長蘇であると告発した。景琰は驚き、目を見開いて梅長蘇を見たが、梅長蘇は冷静沈著で、少しも動揺していなかった。
霓凰、蒙摯、藺晨らは密かに兵を集め、戦闘準備を進めていた。霓凰は砂時計を睨み、心中は不安でいっぱいだった。
梅長蘇と夏江は互いに主張を譲らず、議論が続いた。梁帝が火寒毒について触れると、景琰の驚いた表情は偽りではないように見え、梁帝は景琰が事情を知らないと判断した。形勢不利と見た夏江は、涙ながらに梁帝に彼らの策略に騙されるなと訴えた。夏江は、この二年、起こった全ての出来事で靖王が利益を得て、太子と誉王が共倒れになったと述べ、梅長蘇に火寒毒に罹患しているか、太医に脈診させる勇気があるかと迫った。梅長蘇は夏江の accusations に対し、まず九安山での太子の護衛の功績を挙げ、太子は有利な状況でも権力を奪おうとしなかったことから、その忠誠心が分かると述べた。そして、話題を変え、自分が梅長蘇であることを認めた。
梁帝は驚き立ち上がったが、梅長蘇は隙のない弁舌で仮論した。仮に自分が梅長蘇だとして、梁帝が自分を処罰すれば、父子間の情に傷がつき、朝局が混乱し、夏江の思う壺だと主張した。そして、太医の脈診だけでは自分が梅長蘇であると証明も否定もできないとし、夏江の目的は梁帝の心に疑念の種を植え付け、太子と皇帝の関係を裂き、献王を利させ、自らの罪を逃れることだと断じた。
幾度かの説得の後、梁帝は疑いの目を夏江に向け、夏江を離間の罪で太子に処置を委ねた。景琰は法に従い、刑部と大理寺に処置を委ねた。
その時、激怒した夏江は刀を奪い、梅長蘇を殺そうとしたが、柴都統に取り押さえられた。殿外に引きずり出される際、梁帝の性格を熟知する夏江は「殺し損なうより、逃がし損なうな」と叫んだ。この言葉は梁帝の殺意を掻き立て、梅長蘇に毒酒が下賜された。景琰は身を挺して毒酒を静かに捨て、梅長蘇と肩を並べて養居殿を後にした。
梅長蘇が無事に宮を出たと知り、霓凰らは安堵した。一方、景琰は静かに芷蘿宮へと向かい、梅長蘇との日々を思い返し、梅長蘇が梅長蘇であることを悟った。
第49話の感想
第49話は、息詰まる緊張感と巧妙な心理戦が展開され、まさに手に汗握る展開でした。夏江の奸計、梁帝の猜疑心、そして梅長蘇の知略が激しくぶつかり合い、物語はクライマックスへと突き進みます。
特に印象的なのは、梅長蘇の冷静沈著な立ち振る舞いです。絶体絶命の窮地に立たされながらも、決して取り乱すことなく、梁帝の心理を巧みに操り、形勢を逆転させていく様は見事としか言いようがありません。梅長蘇としての正体を明かす場面では、その覚悟と覚悟の裏にある深い悲しみ、そして復讐への強い意誌がひしひしと伝わってきて、胸を締め付けられました。
一方、景琰の梅長蘇への信頼と友情も強く印象に残ります。何も知らされていないながらも、梅長蘇を信じ、身を挺して守ろうとする姿は、二人の強い絆を感じさせます。そして、最後に芷蘿宮へと向かう景琰の後ろ姿からは、全ての真実を受け入れた静かな覚悟が読み取れ、今後の展開への期待がさらに高まります。
梁帝の揺れる心情もまた、この物語の深みを加えています。長年連れ添った臣下への信頼と、息子への愛情の間で揺れ動く姿は、人間の弱さ、そして為政者の苦悩を描き出しています。
つづく