あらすじ
第十一話では、凌長燼が何日も屋敷から出てこないことを太尉に咎められ、蝶奴への対処についても疑念を抱かれていました。唐千月が蝶奴かどうかを確認するため、凌長燼はお茶会を設け、墨魁花茶を使って彼女を試そうとしますが、凌長風は唐千月の体が弱いことを理由にそれを阻止します。また、凌長燼は寶珠から麒麟の血を入手し、隠れている蝶奴をおびき出そうとします。麒麟の血と侍衛を連れ、凌長風の屋敷へ向かった凌長燼は、衝突を引き起こしますが、唐千月は事前に鎖で自らを縛っていたため、蝶奴としての正体を見せることはありませんでした。凌長燼の疑念と行動に対し、凌長風は剣を抜いて対抗しますが、事態を止めることはできません。結局、凌長燼は疑念を抱えたまま立ち去り、愛する者を救えないと凌長風を警告します。屋敷に戻った凌長燼は、寶珠の無条件の信頼と献身に心を揺さぶられます。自分が寶珠を傷つけた後でも、変わらず支えてくれる彼女の姿に、凌長燼は罪悪感と戸惑いを覚えるのでした。
ネタバレ
太尉は凌長燼を呼び出し、新婚とはいえ家に閉じこもっていることを叱責した。太尉は、長燼が捕らえた蝶奴を始末していないことを見抜き、墨魅花が咲いていない現状では蝶奴を一掃できないため、開花を早めるよう指示を出した。
長燼は唐千月が蝶奴だと疑い、凌長風と彼女を茶に招いた。墨魅花茶を振る舞い、長風は先に飲んでみせた後、千月の体調を気遣い、彼女と侍女の寶珠に飲むのを止めた。長燼は千月が蝶奴だと確信していたが、参軍は彼女が花凌城で何年も無事に過ごしていることから、蝶奴ではないと仮論した。長燼は百蠱図冊の記述を思い出し、夷瀾族は自らを蠱毒化しても正気を保てると考えた。
麒麟血は蝶奴を引き寄せるため、以前姉に与えた長燼は、寶珠から血を得ることにした。寶珠は長燼の意図を察し、快く血を提供した。疑いを避けるため、わざと茶碗を割るなど配慮も見せた。長燼は罪悪感を覚えながらも、寶珠の手から麒麟血を採取した。
麒麟血と多くの侍衛を連れ、長燼は長風の屋敷に押し入った。物音に気づいた長風は千月を隠し、長燼と対峙した。長風は屋敷に蝶奴がいることを否定し、剣を抜いて抵抗したが、長燼は麒麟血を開封した。幸いにも、千月は鎖で自らを拘束しており、蝶奴としての正体が露見することは免れた。麒麟血に仮応がないことに困惑した長燼は、長風に警告を残して去った。長風は、寶珠を傷つけた長燼を非難した。
屋敷に戻った長燼を、寶珠が出迎えた。長燼は罪悪感に苛まれたが、寶珠は彼の首の傷を見つけ、手当てを始めた。寶珠の優しさに戸惑う長燼。寶珠は、人命を第一とする父の教えと、長燼が大切な人のために血を必要としたのだと理解し、彼を抱きしめた。
第11話の感想
第11話は、凌長燼の疑念と、それによって引き起こされる様々な葛藤が描かれた、緊迫感あふれるエピソードでした。唐千月が蝶奴であるという確信に突き動かされる長燼ですが、その行動は周囲の人々を傷つけ、彼自身も苦悩する結果となります。
特に印象的なのは、寶珠とのシーンです。長燼は麒麟血を得るため、寶珠を欺き、彼女の血を奪います。罪悪感を抱きながらも、目的のためには手段を選ばない冷酷さを見せる長燼。しかし、そんな彼を寶珠は純粋な愛情と信頼で包み込みます。自分の血を奪ったにも関わらず、怪我を心配し、献身的に尽くす寶珠の姿は、長燼の心にわずかながらも変化をもたらしているように感じられました。
一方、長風と千月の関係も大きな見どころです。長風は千月を守るため、兄である長燼に立ち向かいます。兄弟でありながら、愛する人を守るため対立する二人の姿は、物語の悲劇性を際立たせています。千月自身も、鎖で自らを縛り、蝶奴であることを隠す強い意誌を見せます。それぞれのキャラクターがそれぞれの立場で葛藤し、選択を迫られる様子が丁寧に描かれており、感情移入せずにはいられませんでした。
つづく