あらすじ
裴行倹は西州の租税問題に取り組む中で、帳簿上は良田と記録されている土地が実際には耕作不能の砂丘地であること、そして民衆が重税に苦しんでいることを目の当たりにした。そこで、民衆の負担を軽減し、民心を掌握するため、全ての借用書を焼き捨てるという大胆な決断を下した。この行為は張懐寂の不興を買ったものの、民衆からは心からの感謝を捧げられた。
しかし、この善意ある行動が思わぬ波紋を広げる。尚賢郷の民衆は裴行倹の部下である琉璃を誤解し、彼女を傷つけてしまう。この知らせを聞いた裴行倹は激昂し、刀を手に都護府へ乗り込み問いただした結果、自身も重傷を負い、民衆の反乱を扇動したという濡れ衣を着せられてしまう。
この一件は長安にも伝わり、大長公主の耳にも入った。しかし、大長公主は噂を鵜呑みにせず、真偽を確かめようとしていた。
そんな中、琉璃が全ての真相を明らかにする。彼女が刺されたことも含め、全ては大長公主を欺くための周到に計画された計略だったのだ。琉璃と裴行倹は麴都護の協力を得ることに成功し、大長公主に対抗するための布石を水面下で進めていく。裴行倹の安全と未来を守るため、彼らは静かに闘いを進めていくのだった。
ネタバレ
西州に著任した裴行倹は、帳簿上は各戸百畝の良田があると記録されているものの、実際は耕作に適さない砂丘ばかりで、民衆は困窮しているという現実を目の当たりにする。税を徴収すれば民はさらに苦しみ、徴収しなければ自分の立場が危うくなるという板挟みに陥る裴行倹。それを張懐寂はほくそ笑んで見ていた。
しかし、裴行倹は民の不安を取り除くため、全ての借用書を焼き捨てるという大胆な行動に出る。民衆は歓喜するが、張懐寂は慌てて消火を命じるも誰も従わず、焦燥感を募らせる。張懐寂は「大軍が来たらどうするのだ」と裴行倹を問い詰めるが、裴行倹は西州の民も大唐の民であり、均田製の恩恵を受けるべきだと主張し、旧債を帳消しにする代わりに、今後はきちんと税を納めるよう諭す。民衆は裴行倹の厚意に感謝し、ひざまずく。
その後、裴行倹は唐の基準に基づいた税製を導入することを宣言する。すると、尚賢郷の民衆が裴行倹の屋敷に押し寄せ、琉璃は白三に逃げるよう促されるが、群衆に取り囲まれてしまう。襲撃を受け重傷を負った琉璃は麴鏡唐らに医館へ運ばれるが、生死の境を彷徨う。白三は韓四を責めると同時に自責の念に駆られ、裴行倹にどう報告すべきか途方に暮れる。
王君孟は琉璃の負傷を都護に報告し、混乱の拡大を懸念して城外駐屯軍の入城を要請する。重傷の琉璃を見た裴行倹は刀を手に都護府へ乗り込む。白三は必死に止めようとするが、裴行倹の決意は固かった。都護府に乱入した裴行倹は都護と麴崇裕に面会を求めるが、兵士に取り囲まれ、自身も負傷する。結局、職務怠慢、民衆扇動、都護闇殺未遂などの罪で捕らえられるが、都護は表向きは裴行倹を許す一方で、二度とこのようなことがないように釘を刺す。
この一件は長安にも伝わり、大長公主は琉璃襲撃事件の真偽を疑い、確認を待つ。蘇夫人は琉璃の負傷の知らせに心を痛めるが、琉璃が無事に帰還したことで安堵する。琉璃は都護を説得するために偽の約束書を作成し、裴行倹の命を守るために芝居を打ったのだと説明する。西州の主は決して変わらないこと、麴家の安全を保障することを約束し、麴崇裕の信頼を得たのだった。
琉璃は襲撃事件はあらかじめ計画されたもので、大長公主をも欺くための策略だったと明かす。そして、麴崇裕の妻子が長安にいることを利用して、彼を味方につけようと画策する。阿盧は大長公主に琉璃襲撃事件と裴行倹の借用書焼き捨てについて報告する。大長公主は裴行倹を脅威とみなし、自らの地位を守るため、彼が長安に戻ることを阻止しようと動き出す。
第19話の感想
第19話は、裴行倹の正義感と民への思いやり、そして琉璃の知略と機転が際立つエピソードでした。西州の現状を目の当たりにし、民の苦しみを理解した裴行倹が借用書を焼き捨てるシーンは、彼の清廉潔白な人柄と強い決意が感じられ、胸を打たれました。しかし、その行動がさらなる波乱を招き、自身も窮地に立たされてしまう展開は、見ていてハラハラさせられました。
一方、琉璃は機転を利かせ、偽の襲撃事件を計画することで裴行倹の命を救い、さらに麴崇裕の懐柔にも成功します。彼女の冷静な判断力と大胆な行動力は、まさに「烈風に舞う花衣」のタイトルを体現しているかのようです。偽造した約束書の内容や、大長公主をも欺く周到な計画など、彼女の知略には感嘆させられます。
対照的に、張懐寂の焦燥感や大長公主の冷酷さが際立ち、物語の緊張感を高めています。特に、大長公主が裴行倹を脅威とみなし、排除しようと画策する場面は、今後の展開を闇示するようで不気味な印象を受けました。
つづく