掖庭えきていで、小さな男の子が木の人形遊びに興じていた。好奇心に駆られた武如意ぶ・にょいが話しかけると、男の子は体が弱く小さいせいでいつも兄たちにいじめられていると打ち明け、人形に八つ当たりしているのだと語った。この男の子こそ、後の李治り・ち、幼名は雉奴ちぬだった。武如意ぶ・にょい雉奴ちぬの話を聞き、強く逞しくなるために武芸を学ぶよう励まし、宮中で兄たちを恐れることなく、立派な男になるよう諭した。

雉奴ちぬの人形を見て、武如意ぶ・にょいは閃きを得た。彼女は雉奴ちぬに人形を四つ作ってくれるよう頼んだ。そして完成した人形を使い、羅将軍らしょうぐんと共に、皇上の乳母であるお婆様の前で人形劇を演じることにした。お婆様は、かつて皇帝が皇位争いのために兄弟を殺めたことを深く恨み、それ以来皇帝に会うことを拒んでいた。皇帝の願いは、ただ一つ、お婆様に幼い頃のように「恵児けいじ」と呼んでもらうことだった。

人形劇を見終えたお婆様に、武如意ぶ・にょいは皇帝への憎しみを捨てるよう説得した。あの時、皇帝が兄弟を殺めていなければ、彼自身が殺されていたであろうと。

一方、皇帝は楊妃を見舞っていた。病弱な楊妃は、文徳ぶんとく皇后の肖像画を描き続けていた。皇帝が絵の上手さを褒めると、楊妃は謙遜して文徳ぶんとく皇后の賢良淑徳を称えた。楊妃はわざと咳き込み、侍女は皇帝に、楊妃は元々体が弱く、最近は風邪をひいているにも関わらず、文徳ぶんとく皇后の肖像画を描き続けていると伝えた。皇帝は楊妃に薬を飲ませ、掖庭えきていに幽閉されているお婆様の話をした。長年、皇帝は誰を遣わしても、お婆様は会おうとしてくれなかった。

皇帝は仕方なく、お婆様に贈り物を送ることにした。贈り物の中には、幼い頃の玩具もあったが、お婆様は受け取ろうとしなかった。武如意ぶ・にょいは贈り物の中から小さな木馬だけを取り出し、残りは皇帝の使いに返却した。

韋貴妃い・きひは、皇帝の動向を探るため、密かに彼を尾行させていた。侍女の春盈しゅんえいは、皇帝が先日夜中に一人で掖庭えきていを訪れたが、お婆様はやはり会おうとしなかったと報告した。掖庭えきていでの生活が長引くにつれ、お婆様の体と記憶力は衰えていた。

毎年、韋貴妃い・きひが主催していた瑠璃宴るりえんを、今年は皇帝が楊妃に主催させることに決めた。このことに、韋貴妃い・きひは不満を抱いた。

第10話の感想

第10話は、権力争いの中で翻弄される人々の様々な感情が繊細に描かれており、非常に印象的なエピソードでした。特に、武如意ぶ・にょいの機転と優しさが際立っていました。幼い雉奴ちぬへの励まし、そしてお婆様への説得、どちらも彼女の聡明さと慈悲深さが感じられる場面でした。人形劇という奇策を用いて、長年の確執を解こうとする彼女の行動力には感心させられます。

皇帝の乳母であるお婆様と皇帝の確執は、皇位争いの残酷さを物語っています。兄弟を殺めたという罪悪感を抱えながらも、お婆様に許しを請いたいと願う皇帝の姿は、権力という重圧に苦しむ人間の弱さを表しているようでした。お婆様もまた、愛する者を失った悲しみと憎しみから抜け出せずにいる、哀れな人物として描かれています。武如意ぶ・にょいの介入によって、二人の関係に変化が生まれるのか、今後の展開が気になります。

つづく