武媚娘のもとへ、徳妃が甘露羹を持参して訪れた。徳妃は皇帝の容態を気遣い、媚娘は徳妃が皇帝を深く想っていることを察する。媚娘は徳妃の手作り甘露羹を皇帝に勧める絶好の機会だと考えた。
甘露殿にて、媚娘は皇帝に甘露羹を差し出した。皇帝は媚娘に先に食べるよう促し、作った者を尋ねた。徳妃だと知った途端、皇帝は怒り、甘露羹を床に叩きつけた。
媚娘は皇帝が徳妃の真心を踏みにじったと感じたが、宦官が銀針で毒味をしたところ、甘露羹には猛毒が盛られていた。皇帝は媚娘の手を介して危なく毒殺されるところだったと皮肉を言った。
皇帝は直ちに晨夕宮の捜索を命じたが、徳妃の姿はどこにもなかった。
媚娘は淨出池のほとりで徳妃を見つけた。問い詰めると、徳妃は斉王を守るためだと答え、自らの罪は償うが、無実の息子だけは助けてほしいと懇願し、湖に身を投げた。
長孫無忌は合図の烽火を上げさせた。斉王と殷大人は長安に上がる烽火を目撃し、皇帝が闇殺されたと勘違いし、予定通り挙兵して長安へ向かった。
皇帝は郝宦官が東宮に忍び込んだことを知り、魏大人は太子の忠誠心を疑うべきではないと進言した。皇帝は魏大人を太子にふさわしい師だと称賛した。
楊淑妃と韋貴妃が相次いで皇帝に徳妃の助命を嘆願した。長孫無忌も徳妃の件で皇帝に謁見しようとしたが、後宮の人々が御書房にいるのを見て、一度引き下ろうとした。しかし皇帝は皆徳妃のことなので、同席して話を聞こうと言った。
長孫無忌は謀仮を企てた徳妃を皇家の陵墓に葬るべきではないと主張したが、韋貴妃は幼い頃から母と離れて育った斉王のために徳妃が誤った道を歩んだのだと訴え、長年の皇帝への真情を考え、徳妃に相応しい最期を賜るよう願い出た。皇帝は徳妃の謀仮を公表せず、丁重に葬儀を行うよう命じた。
第19話の感想
第19話は、徳妃の悲劇的な最期と、その裏に隠された母性愛、そして宮廷内の複雑な人間関係が描かれた、非常に印象深いエピソードでした。
徳妃はこれまで、どちらかといえば悪役的な立ち位置で描かれてきました。しかし今回、彼女が斉王を守るため、自らの命を犠牲にする覚悟で毒を盛ったことが明らかになります。息子を思う一心で、皇帝にさえ牙を剝く彼女の姿は、これまでの印象を覆すほどに強く、切ないものでした。罪を犯したとはいえ、一人の母親としての彼女の愛情に胸を打たれました。
つづく