徐慧じょ・けいは、ブレスレットを壊した後に浣衣局で莫公公に会いに行きました。彼女は、魏王ぎおうと協力することでどのような利益を得られるか尋ねました。莫公公は、徐慧じょ・けいが後宮で太子の失脚に協力すれば、魏王ぎおう府は武媚娘びじょうの代わりに彼女を立て、皇帝の寵愛を独占させることができると答えました。徐慧じょ・けいは、彼らと協力することに同意しました。

太子と雉奴ちぬは馬場で馬術を競いました。太子の馬は雉奴ちぬの馬よりも優れており、太子は魏征から贈られた馬に感謝しました。魏征は、馬を贈ったのは自分ではないと説明しました。皇帝は馬場に現れ、太子にこの馬は寧遠国からの贈り物であり、自分からのプレゼントであると告げました。皇帝は、太子の自省の書を読み、最近の太子の様子が良いことを考慮して、踏雪烏騅を贈ったことを説明しました。

皇帝は太子と一緒に散歩をし、太子は最近少し不安を感じていることを打ち明けました。皇帝は、若いうちは恐れずに、年老いてからは後悔しないようにとアドバイスしました。皇帝は、もし自分たちが普通の家庭に生まれていたら、太子をもっと甘やかすこともできたでしょうが、皇宮で生まれ、大唐の太子として生まれた以上、その責任は重いものであると述べました。しかし、皇帝の心の中では、太子は常に変わっていないと付け加えました。

魏王ぎおうは、東宮に潜入させた内通者から、太子が側近の称心しょうしんを漠北の老いた母親の元に帰らせる計画を立てているという情報を得ました。魏王ぎおうは、これは自分にとって良い機会だと考えました。

王公公は、皇帝と太子に多くの奏折を持ってきました。その内容は、太子が男寵だんちょう称心しょうしんと密会し、不道徳な行為を行っているというものでした。太子はすぐに跪いて釈明しましたが、皇帝は彼を信じ、奏折を目の前で燃やしてしまいました。皇帝は、自分は太子を信じているが、天下の人々はそうではないかもしれないと言いました。そのため、称心しょうしんは死ななければならないし、できれば太子自らが殺すべきだと告げました。太子は仕方なく承諾しました。

乾祥宮けんしょうきゅうの西殿に閉じ込められていた蕭薔しょう・ちょうは、外に出ようと騒ぎましたが、宦官と宮女に止められました。春盈しゅんえいは彼女に多くの点心を持ってきました。春盈しゅんえいは、蕭薔しょう・ちょうが自由に歩き回ると胎児に影響が出るので、韋貴妃い・きひも許可しないだろうと言いました。蕭薔しょう・ちょうは仕方なく薬草入りの点心を食べながら、自分が乾祥宮けんしょうきゅうに軟禁されていることに気づきました。

太子は称心しょうしんと一緒に狩りに出かけました。太子は矢を取り、先を歩く称心しょうしんを射殺しようとしましたが、称心しょうしんが振り返って矢を向けられていることに気づきました。しかし、太子は結局引き金を引くことができず、近くの鳥を射殺しました。太子は称心しょうしんを東宮に連れ戻しましたが、魏征は太子にできるだけ早く称心しょうしんを殺すように忠告しました。

第29話の感想

第29話は、太子李承乾り・しょうけんの苦悩と追い詰められていく様が描かれ、見ていて辛い回でした。父である皇帝・李世民り・せいみんからの寵愛と重圧、そして魏王ぎおう李泰り たいの陰謀に挟まれ、彼の立場はどんどん危うくなっていきます。

特に印象的なのは、馬場で李世民り・せいみん李承乾り・しょうけんが語り合うシーンです。皇帝は太子に深い愛情を抱いているものの、同時に皇帝としての厳しさも持ち合わせています。李承乾り・しょうけんは父に愛されていると実感しながらも、太子としての重責に押しつぶされそうになっている様子が見て取れます。「若い時は恐れるな、老いては後悔するな」という皇帝の言葉は、太子を励ますと同時に、皇位継承者としての覚悟を促す言葉でもありました。

つづく