皇帝は北方の仮乱軍討伐へ出発しようとしていた。武媚娘びじょうは心配そうに、いつ戻るか尋ねると、皇帝は順調にいけば一年半ほどで戻れると答えた。そして、行く先々から手紙を送ると約束し、武媚娘びじょうは地図を見ながら皇帝の位置を把握できると告げた。武媚娘びじょうは自らも花木蘭のように戦場へ同行したいと申し出たが、皇帝は宮中で良い知らせを待つようにと言い、戦場は女のいる場所ではないと諭した。

皇帝は武媚娘びじょうを戦甲と長明灯が納められた殿に連れて行った。そして、人を殺める度に心に罪を感じ、灯を一つ灯していると説明した。既に多くの灯が灯っており、これ以上増えないように願っていると語った。

夜、太子は刀を持って称心しょうしんのもとを訪れた。称心しょうしんは太子が予想より遅く来たことを指摘し、酒を飲み過ぎないように忠告した。酒は体に悪く、物事を誤らせるとも言った。称心しょうしんは太子の苦悩を理解し、自ら犠牲になる覚悟を決めていた。太子と称心しょうしんは森へ行き、太子は称心しょうしんの首をはねた。武媚娘びじょうは、かつて自分の罪をかぶり、故郷を離れることになった李君羨りくんせんのことを思い出し、彼のために長明灯を一つ灯した。

翌日、太子は朝議に出席しなかった。他の大臣たちは、太子が狩猟に夢中で欠席したのだろうと非難し合った。魏徴ぎちょうは推測で太子を中傷するなと叱責した。その時、太子が到著し、皇帝に遅刻の理由を問われた。太子は過去の愚行と決別すると宣言し、称心しょうしんの首を差し出した。

韋貴妃い・きひは、乾祥宮けんしょうきゅうの窓を閉め切っているのは蕭薔しょう・ちょうの出産のためだと話し、蕭薔しょう・ちょうが子供を産めば自分の子供になると春盈しゅんえいに語った。蕭薔しょう・ちょうが産後に死ねば、皇帝は子供を自分にくれるだろうと韋貴妃い・きひは言い、その言葉を蕭薔しょう・ちょうは偶然耳にしてしまった。

太子妃は闕楼で夜宴を催し、嬪妃たちを招待した。蕭薔しょう・ちょうが流産したという噂を払拭するため、韋貴妃い・きひ蕭薔しょう・ちょうにも参加するよう促した。蕭薔しょう・ちょう韋貴妃い・きひに軟禁されていたことを馮才人さいじん陳美人ちん びじんに話そうと思い、二人に会ったが、声をかけようとした際に、彼女たちが自分の悪口を言っているのを聞いてしまった。二人は蕭薔しょう・ちょうの流産を願っており、通りかかった武媚娘びじょう徐慧じょ・けいは、二人の陰口を非難したが、馮才人さいじん陳美人ちん びじんは無視した。

蕭薔しょう・ちょうは二人の言葉を聞き、深く傷ついた。武媚娘びじょうが自分のために声を上げてくれたことに驚き、韋貴妃い・きひのことを武媚娘びじょうに話そうとしたが、機会が見つからなかった。徐慧じょ・けい蕭薔しょう・ちょうに何か悩みがあれば打ち明けるようにと声をかけた。

第30話の感想

第30話は、権力争いの中で翻弄される人々の苦悩と、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、緊張感あふれる展開でした。皇帝は国を守るために戦場へ向かうも、心には罪の意識を抱え、その苦悩を長明灯に託す姿が印象的でした。武媚娘びじょうは皇帝の身を案じながらも、宮中で静かに待つことしかできない自身の無力さに葛藤しているように見えました。花木蘭のように戦場へ同行したいと願う彼女の強い意誌は、今後の展開にどう影響していくのか、注目したいところです。

一方、太子は称心しょうしんを殺害することで、過去の過ちを償おうとしますが、その表情からは真の贖罪の念は感じられず、むしろ焦燥感や不安が見て取れました。彼の今後の行動が、皇位継承争いにどのような波紋を呼ぶのか、目が離せません。

つづく