魏徴ぎちょうは死期を悟り、武媚娘びじょうに遺言を残した。もし自分の棺に黒紗がかけられていたら太子廃位の意、白紗なら太子存続の意だと。太子への深い思いやりに心を打たれた武媚娘びじょうは、魏徴ぎちょうの最後の願いを太子に伝えようと考えた。

徐慧じょ・けいは武媚娘びじょうの計画を知り、協力すると申し出た。武媚娘びじょうは太子妃への贈り物である繚綾に託して紙条を東宮に届けようとしていた。徐慧じょ・けいの助言で、瑞安ずいあんに届けさせることにした。

しかし、徐慧じょ・けいは武媚娘びじょうの筆跡を真価て、内容を正仮対にした偽の紙条を用意した。そして、文娘ぶんじょうに命じ、瑞安ずいあんから紙条をすり替えさせた。瑞安ずいあん文娘ぶんじょうに好意を抱いており、文娘ぶんじょうの策略にまんまと嵌ってしまった。

瑞安ずいあん文娘ぶんじょうに鴛鴦錦帕を贈ろうとしたが、文娘ぶんじょうはそれを拒んだ。鴛鴦錦帕は宮中では対食の証とされているためである。

一方、侯君集こうくんしゅうは戦勝し、鞠智盛きくちせいを捕らえて長安に凱旋した。鞠智盛きくちせいは唐への忠誠を誓い、貢物を献上することを約束した。皇帝は侯君集こうくんしゅうをねぎらい、共に酒を酌み交わした。しかし、その席に太子の姿はなかった。

第35話の感想

第35話は、魏徴ぎちょうの死をきっかけに、宮廷内の権力闘争がさらに激化していく様子が描かれています。魏徴ぎちょうは最後の力を振り絞り、太子を守るための秘策を武媚娘びじょうに託します。その姿は、師としての責任感と太子への深い愛情に溢れており、感動的でした。しかし、この善意が徐慧じょ・けいの策略によって歪められてしまうのが、この物語の残酷なところです。

徐慧じょ・けいは、表向きは武媚娘びじょうの味方であるかのように振る舞いながら、裏では狡猾な陰謀を巡らせています。彼女の冷酷さと計算高さは、見ていて背筋が寒くなるほどです。武媚娘びじょうの筆跡を真価て偽の紙条を作成する場面は、彼女の知略の高さを示すと同時に、その恐ろしさを改めて実感させられました。

つづく