皇帝が手を挙げると、多くの侍衛が現れ、太子たちを取り囲んだ。皇帝が備えをしていたとは、太子は思いもよらなかった。皇帝は太子に降伏すれば命を助けるといったが、太子は皇帝に太上皇になるよう迫り、侯君集こうくんしゅうが長安城外の一万の精兵を率いて突入してくると言い放った。しかし皇帝は、大唐には侯君集こうくんしゅう以外にも将軍がいると言い、侯君集こうくんしゅうの軍隊は既に長安城外で李勣り・せき将軍に討ち取られたと告げた。

瑞安ずいあんは東宮を訪ね武媚娘びじょうを探した。拘束されていた武媚娘びじょうは屏風を倒して瑞安ずいあんの注意を引いた。瑞安ずいあんは彼女を見つけるとすぐに縄を解き、武媚娘びじょう承慶殿しょうけいでんに駆けつけると、ちょうど太子と皇帝が対峙している場面に遭遇した。皇帝は太子をあっという間に製圧し、武媚娘びじょうは太子を助けるよう懇願した。

皇帝は太子に、既に彼を太子に立てると決めていたにも関わらず、太子は仮乱を起こしたと告げた。父の発言で廃位されていないことを知った太子は、武媚娘びじょうを騙し者だと罵った。

太子が天牢に送られた後、皇帝は武媚娘びじょうを呼び出し、なぜ太子と結託して謀仮を起こしたのかと問いただした。武媚娘びじょうは太子と結託していないと弁明したが、皇帝は立太子の書かれた紙切れを彼女に投げつけた。言い訳は無意味だと悟った武媚娘びじょうは、一死を願い出た。皇帝に殺されるなら本望だと。しかし皇帝は彼女を殺さなかった。情けではなく、自戒のためだった。

媚娘びじょうが侍衛に連れ出されると、雉奴ちぬは彼女に何かできることはないかと尋ねた。武媚娘びじょうは彼に、皇帝に太子の赦免を願い、聞き入れられなければ土下座して頼み続けるよう指示した。

魏王ぎおう韋貴妃い・きひは森で密会していた。雷鳴が轟き始めると、韋貴妃い・きひは彼に早く立ち去るよう促したが、魏王ぎおうはこの雨が終わるまで待ち、御書房の前で父に太子の赦免を請うと告げた。そうすればきっと自分が新たな太子に立てられると考えたのだ。

皇帝は重臣たちと御書房で会議をしていた。長孫無忌ちょうそんむきは直ちに皇太子を交代させるべきだと進言した。その時、おう内侍が雉奴ちぬが殿外で土下座して太子の命乞いをしていると報告した。皇帝は無視しようとしたが、激しい雨が降り始め、雉奴ちぬは雨の中跪き続けた。そこに魏王ぎおうも現れ、雉奴ちぬと共に雨の中土下座した。

二人の皇子を見て、長孫無忌ちょうそんむきは改めて皇太子交代の話を持ち出した。皇帝は呉王ごおうの身分が不適格だと考え、魏王ぎおうも信用していなかった。長孫無忌ちょうそんむき雉奴ちぬを太子にするよう進言した。太子、呉王ごおう魏王ぎおうの間には確執があるが、三人は皆雉奴ちぬに好意的だった。雉奴ちぬが即位すれば他の三人の皇子も危害を加えられることはなく、これが最善の選択だと説いた。

魏王ぎおう雉奴ちぬに、なぜ突然土下座を始めたのか、誰かに指示されたのかと尋ねた。雉奴ちぬは「武(ぶ)…」と一言発したところで気を失ってしまった。

第38話の感想

第38話は、緊迫感あふれる展開と登場人物たちの複雑な心情が巧みに描かれた、非常にドラマチックなエピソードでした。皇帝の冷徹な判断力と太子の焦燥、武媚娘びじょうの機転と窮地、そして雉奴ちぬ魏王ぎおうの兄弟愛、それぞれの思惑が交錯し、物語は予想外の展開を見せます。

特に印象的なのは、武媚娘びじょうの窮地における冷静な判断と行動です。太子に協力したと疑われ、死を覚悟する場面でも、彼女は雉奴ちぬに的確な指示を出し、状況を好転させる糸口を探ります。その知略と胆力は、まさに未来の女帝を予感させるものでした。

つづく