早朝にて、雉奴は北伐の必要性を堂々と主張し、同時に兵站の確保も訴えた。その堂々たる振る舞いに、廷臣や皇子たちは驚き、魏王派に傾いていた一部の者も態度を保留し様子を見るようになった。
御花園では、徐慧と武媚娘が、心を病んだ蕭薔とブランコ遊びをしていた。武媚娘は雉奴の朝議での様子を心配していたが、徐慧は皇帝が確認済みの奏疎を読んでいた雉奴なら大丈夫だと慰めた。武媚娘は冗談を言わないでと徐慧に言った。
太子謀仮事件について、武媚娘はどこで間違えたのか分からずにいた。棺の紗の色は魏徴との秘密だった。徐慧は侯君集の部下、紇幹承基が太子を誤った方向に導いたのではと推測したが、武媚娘は紇幹承基は無関係だと確信していた。この件を話したのは徐慧だけで、徐慧が話をそらそうとしているのが気にかかったが、すぐに徐慧がそんなことをするはずがないと思い直した。
武媚娘は退朝した雉奴に様子を尋ね、雉奴は上手くいったと答えた。武媚娘は雉奴に、龍椅に近づくほど兄弟たちとは疎遠になると告げ、宮中の争いに巻き込まれたくないならまだ諦めることもできると忠告した。しかし雉奴は諦めない、武媚娘と兄たちを守ると決意を表明した。
皇帝は再び武媚娘を呼び、奏疎を写させた。王内侍は武媚娘に、太子謀仮事件の際に何故弁明しなかったのかと尋ねた。武媚娘は、皇帝が自分を信じていないため、何を言っても無駄だと落胆していた。王内侍は皇帝の心情を察するように諭し、皇帝は実の兄弟から毒酒を盛られた経験があり、誰をも信じられないのだと説明した。
奏疎を書き終えた武媚娘は、わざと床に落とし、李牧に関する奏疎を盗んだ。皇帝は武媚娘に怪我がないかを尋ねた。雉奴は李牧と会い、彼の正体を尋ねた。李牧が蔵経閣の前を通るたびに中を覗き込み、そこに武媚娘がいることに気づき、二人の関係が特別なものだと感じたからだ。しかし、李牧は何も語らなかった。
第43話の感想
第43話では、雉奴の成長と武媚娘の苦悩が際立つ展開でした。これまでどちらかといえば武媚娘の庇護のもとにいた雉奴が、自らの意誌で北伐を提言する姿は頼もしく、彼の成長を強く感じさせました。皇帝の意図を汲み取り、的確な意見を述べる様子からは、武媚娘の教えがしっかりと活かされていることが伺えます。しかし、武媚娘は雉奴の成長を喜ぶ一方で、宮廷の権力争いに巻き込まれることを危惧する母親のような複雑な感情を抱いているようでした。
一方、武媚娘自身は太子謀仮事件の真相究明に奔走するも、皇帝からの信頼を失い、苦しい立場に立たされています。王内侍の言葉からも、皇帝の猜疑心の深さが改めて浮き彫りになり、武媚娘の置かれた状況の厳しさが伝わってきました。それでも、李牧に関する奏疎を盗み出すなど、水面下で策を講じる武媚娘のしたたかさは健在です。李牧と武媚娘の関係、そして李牧の正体も今後の展開を大きく左右しそうです。
つづく