楚客そきゃく魏王ぎおうに宮中の様子を報告し、二人は新しく充容となった徐慧じょ・けいを利用して武媚娘びじょうを排除しようと企みます。一方、才人さいじんの位に戻された武媚娘びじょうは、甘露殿かんろでんに侍寝するように皇上から命じられます。その夜、当直だったのは李牧りぼく。殿の外で彼を見かけた武媚娘びじょうは驚きつつも、平静を装って殿内へ入ります。

皇上は奏疎の一冊が見当たらないと言い、武媚娘びじょうに探すよう命じます。武媚娘びじょうは少し探したふりをして、紛失したのは李牧りぼくの身世に関する奏疎だと答えます。皇上は何か隠していることがあるのかと問いますが、武媚娘びじょうは否定します。すると、皇上は武媚娘びじょうを平手打ちし、彼女はそのまま甘露殿かんろでんを退出します。

この一部始終を殿の外で見ていた李牧りぼくは、殿内へ入ろうとしますが、武媚娘びじょうに止められます。彼女は李牧りぼくを連れ出し、後の災いを避けるためにもすぐに宮廷を去るようにと促します。李牧りぼくは、尊厳さえも捨ててまで宮中に留まる武媚娘びじょうを冷ややかに見つめ、もはや自分が知っている武媚娘びじょうではないと非難します。

媚娘びじょうは自分の部屋に戻り、李牧りぼくの身世が記された奏疎を燃やそうとしますが、その直前、奏疎の中に李牧りぼくの両親と一族の死の真相が書かれていることに気づきます。彼女は急いで李牧りぼくを探し出し、一緒に宮廷を出ようと告げます。

李牧りぼくの両親と一族百七十人余りは倉庫に閉じ込められ、生きたまま焼き殺されました。李牧りぼくだけが小さな窓から逃げ延びたのです。もし皇上がいなければ、李牧りぼくの一族はこんな悲劇に見舞われることはなかったでしょう。武媚娘びじょう楊淑妃よう・しゅくひを訪ね、二人を宮廷から逃がす方法を相談します。李牧りぼくが道を踏み外すことを恐れる武媚娘びじょうは、自分がそばにいることが最善策だと考えます。

皇上は韋氏一族の朝廷内における勢力を排除するよう命じます。韋源承いげんしょうは官職を剝奪され、財産を没収された上に天牢に投獄され、処刑を待つ身となります。さらに、韋氏と繋がりの深い蕭家も家財を没収され、一族は嶺南へ流刑となります。

媚娘びじょう蕭薔しょう・ちょうと共に御花園で過ごしますが、蕭薔しょう・ちょうの朗らかな様子を羨ましく思います。瑞安ずいあんは、もし蕭薔しょう・ちょうが五行草によって子をもうけることができなくなり、一族が嶺南へ流刑になったことを知ったらどんなに悲しむだろうかと口にします。武媚娘びじょう瑞安ずいあんを叱りつけますが、狂気を装っている蕭薔しょう・ちょうは、これらの言葉を聞き、心に深い傷を負いながらも、平静を装い続けます。

第44話の感想

第44話は、武媚娘びじょう李牧りぼくの運命が大きく揺れ動く、非常に緊迫感のあるエピソードでした。これまで宮廷でのし上がることに執念を燃やしてきた武媚娘びじょうが、李牧りぼくの身世の真相を知り、共に宮廷を脱出することを決意する場面は、彼女の変化を象徴する重要なシーンと言えるでしょう。愛する人のため、自らの野望さえも捨てようとする彼女の姿には心を打たれました。

特に印象的だったのは、李牧りぼくと再会した後の武媚娘びじょうの表情です。それまでの冷徹な表情とは打って変わり、李牧りぼくへの愛情と、彼を失うかもしれない恐怖が入り混じった複雑な表情は、彼女の揺れ動く心情を雄弁に物語っていました。また、李牧りぼくの冷ややかな言葉にも耐え、必死に説得する姿からは、彼の安全を何よりも願う強い意誌が感じられました。

つづく