李世民は李泰にすっかり失望し、雉奴を太子に立てることを決めた。武媚娘は牢に閉じ込められていたが、雉奴は武媚娘を案じ、牢を訪れた。武媚娘は、雉奴が太子になれば、いずれ妻をめとり子をもうけることになるだろうと話し、悲しみを隠せない。雉奴もまた、たとえ結婚しても、どのような女性と結婚するのかさえ分からず、全ては父の決定次第だと嘆き、二人の間には言葉もなく、ただ運命のいたずらに翻弄される思いだった。
流刑を控えた李泰と李承乾は、雉奴に見送られ都を去った。李泰は雉奴にひざまずき、過去の過ちを悔やみ、今の苦境を招いたことを詫びた。雉奴もまた、現状を嘆くが、もはやどうすることもできない。一方、武媚娘は李牧の助命を嘆願するため、李世民に訴え出た。当初、李世民は武媚娘の言葉に耳を貸そうとしなかったが、彼女の必死の叫びに足を止めた。しかし、李牧が李世民の闇殺を企てたことは、李世民の心に深い傷を残しており、武媚娘の願いを聞き入れることはなかった。
李牧の命を救うため、武媚娘は宮門の外で夜遅くまでひざまずき続けた。李世民は牢にいる李牧を訪ね、二つの杯の酒を用意した。一つは無毒、もう一つは毒入りだった。李世民は李牧にどちらかを選ぶよう促し、もし毒のない方を選べば解放すると告げた。李牧は一つの杯を選び、酒を飲み幹した。李世民は背を向け、牢を後にした。しばらくして、李牧は昏倒した。李世民は宮殿に戻り、武媚娘を呼び入れた。宮門の外でずっとひざまずいていた武媚娘は、王徳に支えられながら、李世民の前に進み出た。武媚娘はなおも諦めず、李牧の助命を嘆願した。
第49話の感想
第49話は、運命の残酷さと人間の無力さを痛感させられるエピソードでした。李泰の失脚、雉奴の苦悩、そして武媚娘の必死の嘆願、それぞれの想いが交錯し、見ているこちらも胸が締め付けられるようでした。
特に印象的だったのは、雉奴と武媚娘の牢獄での会話です。太子という重責を担うことになった雉奴は、自分の将来や結婚相手さえも自分で決められない不自由さに苦悩し、武媚娘もまた、愛する雉奴との未来が閉ざされていく悲しみを隠しきれません。二人の間には言葉はなくとも、深い愛情と切ない諦めが感じられ、非常に感動的なシーンでした。
つづく