袁天罡えんてんがんは弟子、李淳風りじゅんぷうの墓参りのため長安に戻ってきた。長孫無忌ちょうそんむきはこの機に、李淳風りじゅんぷうの墓前で袁天罡えんてんがんを捕まえ、宮中で皇帝に占いをさせるよう強要した。

翌日、下朝後も長孫無忌ちょうそんむき房玄齡ぼうげんれいは居座り、皇帝に袁天罡えんてんがんに再度占いをさせるよう求めた。皇帝は二人を叱責し、武媚娘びじょうという一人の女性に難癖をつけるなと仮論する。しかし、長孫無忌ちょうそんむきらは、武媚娘びじょうが既に宮中の政治に介入しており、ただの女性ではないと主張した。

媚娘びじょう瑞安ずいあんに遼東の雪参を徐慧じょ・けいに届けさせた。瑞安ずいあん文娘ぶんじょう殺害の犯人を調べていると聞き、徐慧じょ・けい文娘ぶんじょうの死の三日前の行動を記録した絹本を彼に渡した。すると、徐慧じょ・けいの部屋で、瑞安ずいあんはかつて文娘ぶんじょうに贈った燭台を発見する。その底には文字が刻まれており、瑞安ずいあんは急いで武媚娘びじょうに報告した。

瑞安ずいあん徐慧じょ・けい文娘ぶんじょうを殺したと確信するが、武媚娘びじょうは早合点して徐慧じょ・けいを冤罪に陥れるなと諭す。しかし、瑞安ずいあんは武媚娘びじょうに現実を見ろと迫り、太子の一件以来、徐慧じょ・けいには疑わしい点が多すぎると訴える。魏徴ぎちょうの棺の紗の色を知っていたのも、文娘ぶんじょうに紙をすり替えさせたのも徐慧じょ・けいだと主張した。瑞安ずいあん文娘ぶんじょうの仇を討つため徐慧じょ・けいを殺そうとするが、武媚娘びじょうは軽挙妄動を禁じた。

雉奴ちぬは群臣が甘露殿かんろでんの外で跪いているのを見て、皇帝に再度占いを迫っていると知り、武媚娘びじょうに知らせた。武媚娘びじょうは数日前に徐慧じょ・けいに自分の行動を話したことを思い出し、今回の長孫無忌ちょうそんむきの行動は徐慧じょ・けいが関わっていると確信する。

媚娘びじょう雉奴ちぬに、甘露殿かんろでんの外に跪いているのは名門貴族だけなのか、低い身分の官吏もいるのか尋ねた。雉奴ちぬ甘露殿かんろでんに向かう李義府り・ぎふを見かけたと言う。低い身分の李義府り・ぎふは権力者に媚びへつらうことで出世してきたが、名門貴族からは犬呼ばわりされ、侮辱を受けて甘露殿かんろでんを去った。甘露殿かんろでんの外の官吏たちは立ち去ろうとせず、御書房の長孫無忌ちょうそんむき房玄齡ぼうげんれいも居座り続け、皇帝は悩み眠れない夜を過ごした。

媚娘びじょう瑞安ずいあん李義府り・ぎふを庭に連れてくるよう指示する。そして、武媚娘びじょう李義府り・ぎふに、彼と手を組みたいと単刀直入に持ちかけた。

第55話の感想

第55話は、武媚娘びじょう徐慧じょ・けいの友情に亀裂が生じ始める重要な回でした。瑞安ずいあん文娘ぶんじょう殺害の犯人として徐慧じょ・けいを疑い始め、決定的な証拠と思われる燭台を発見したことで、二人の関係は大きく揺らぎます。武媚娘びじょう瑞安ずいあんの主張を完全に否定するわけではないものの、徐慧じょ・けいを信じたい気持ちと、積み重なる疑念の間で葛藤する姿が印象的でした。

一方、朝廷では長孫無忌ちょうそんむきを中心とした武媚娘びじょうへの牽製が強まり、袁天罡えんてんがんへの再占い要求という形で表面化します。皇帝は武媚娘びじょうをかばいながらも、重臣たちの圧力に苦悩する様子が描かれており、宮中の緊迫感が伝わってきました。

つづく