高陽公主の嫁ぎ先である房府に一年間身を寄せていた武媚娘。高陽公主は杏林宴を開き、兄である皇子たちを招いて酒を酌み交わします。その宴には、高陽公主が想いを寄せる辯機和尚の姿も。呉王をはじめとする皇子たちは辯機を嘲笑い、剣を抜いて殺そうとしますが、武媚娘が止めに入ります。辯機が殺されれば、高陽公主は一生恨むだろうと。
一方、房府では長孫無忌と房玄齡が碁を打っていました。しかし、長孫無忌の心は碁盤にはありません。一年以上経っても、武媚娘を殺す機会を窺っています。武媚娘は再び宮中に戻る機会を伺っていると確信し、大唐の未来のためには彼女を排除する必要があると考えています。
長孫無忌は房玄齡に協力を求め、武媚娘を事故に見せかけて殺そうとしますが、房玄齡は武媚娘を侍女として房府で一生を終えさせると告げ、闇殺には加担しません。長孫無忌は房玄齡の協力を得られないと見るや、蕭瑀を使って房玄齡を弾劾しようと画策します。
武媚娘は高陽公主に、出家人の辯機とは一緒になることはできないと諭しますが、高陽公主は自分の愛を貫き通すつもりで、夫である房遺愛とは互いに幹渉しない約束を交わしていると明かします。
武媚娘は密かに李義府と会い、長孫無忌の不正の証拠を掴むよう指示します。それが長孫無忌を失脚させる唯一の手段だと考えています。李義府は寒門出身の官僚たちを集め、鴻臚寺少卿の弾劾を計画します。鴻臚寺少卿は長孫無忌の息のかかった人物であり、長孫無忌の不正は周知の事実でしたが、誰も彼に逆らう勇気はありませんでした。しかし、長孫無忌を排除しなければ、寒門出身者には出世の道は永遠に閉ざされたままです。
一部の官僚は、なぜ武媚娘の指示に従うのかと李義府に疑問を投げかけますが、李義府は武媚娘に協力することは彼らにとって一生に一度の大きな賭けであり、必ず成功すると断言します。蕭瑀は房玄齡を結党営私のかどで密告しますが、翌日、逆に皇帝から房玄齡を陥れようとしたとして叱責され、故郷へ左遷されてしまいます。
退朝前、李義府が上奏しようとしたところ、長孫無忌に先を越されます。長孫無忌は自ら鴻臚寺少卿の不正を皇帝に報告します。皇帝は身内をかばわない長孫無忌の行動を称賛し、事件の調査を命じます。結果的に自分の息のかかった人物を排除することになった長孫無忌は、長孫衝に他の親信たちの不安を抑えるよう指示します。
第57話の感想
第57話は、静かな水面下で激しい権力闘争が繰り広げられる、スリリングな展開でした。武媚娘は宮中を離れていても、その影響力は健在で、李義府を操りながら長孫無忌の失脚を企む姿は、まさに「策士」といった印象です。一見不利な状況ながらも、冷静に状況を分析し、著実に駒を進めていく彼女の知略には感嘆させられます。
対する長孫無忌は、武媚娘への警戒心を解くことなく、常に排除しようと画策しています。しかし、今回は武媚娘の巧妙な罠にはまり、自ら配下を切る羽目になるという皮肉な結果に。権力闘争において、一歩間違えば自らが窮地に陥るという危険性を改めて感じさせられました。
つづく