高陽こうよう公主は早朝から雉奴ちぬを呼び出し、武媚娘びじょうと皇帝の面会を願い出る。雉奴ちぬは皇帝にこの事を伝えるも、皇帝は拒否する。

その後、雉奴ちぬがまだ御書房にいる間に、皇帝が突然倒れる。雉奴ちぬは急ぎ侍医を呼ぶ。房玄齡ぼうげんれいは武媚娘びじょう李義府り・ぎふの密会を知り、彼女の皇帝への深い愛情に感心するも、面会は諦めるよう忠告する。その時、皇帝の倒れた知らせが届き、房玄齡ぼうげんれいは急いで宮中へ。傍らの武媚娘びじょうも心配する。

皇帝の倒れた原因は、北伐での矢傷の後遺症と、西域から献上された長春丹の副作用だった。長春丹は最初は爽快感を与えるが、実は精気を消耗させるものだった。

大臣たちが偏殿で謝侍医の治療を待つ中、皇帝はやっと意識を取り戻す。長孫無忌ちょうそんむき房玄齡ぼうげんれいを呼びに行くと、彼は既に息絶えていた。

夜、高陽こうよう公主は武媚娘びじょう甘露殿かんろでんへ連れて行く。武媚娘びじょうは涙ながらに皇帝への愛を訴え、皇帝は幻かと疑うほどだった。

高陽こうよう公主は辯機べんきとの駆け落ちを計画し、武媚娘びじょうは止めようとするが、彼女の決意は固く、武媚娘びじょうは手助けを約束する。長孫無忌ちょうそんむきの密偵は、武媚娘びじょう李義府り・ぎふの密通、そして高陽こうよう公主と辯機べんきの駆け落ちの手助けを報告する。長孫無忌ちょうそんむきは、二人が長安を出たら捕らえるよう命じる。

翌日、武媚娘びじょう高陽こうよう公主と辯機べんきの逃亡を手助けする最中、衛兵に捕まり宮中に連れ戻される。皇帝は高陽こうよう公主を僧侶との密会で責め、彼女は傀儡のような人生はもう嫌だと、自分の愛を追求する事に間違いはないと仮論する。皇帝は彼女を恥知らずと叱責する。

高陽こうよう公主は辯機べんきの命乞いをし、皇帝は彼女を内室監から房府へ戻す事を許可するが、辯機べんきは死罪となる。

第58話の感想

第58話は、様々な登場人物の思惑が交錯し、息もつかせぬ展開でした。特に印象的なのは、愛する皇帝のために奔走する武媚娘びじょうの姿です。李義府り・ぎふとの密会や、高陽こうよう公主の駆け落ちの手助けなど、危険を顧みない行動は、彼女の深い愛情と強い意誌を示しています。皇帝への愛を涙ながらに訴えるシーンは、切なくも力強いものがありました。

一方、高陽こうよう公主は、愛のために全てを捨てる覚悟を見せます。辯機べんきとの許されぬ恋に突き進む姿は、身分や立場に縛られない自由への渇望を感じさせます。しかし、その代償はあまりにも大きく、悲劇的な結末を迎えることになります。

つづく