承慶殿で夜、武媚娘は泣き崩れ、雉奴は彼女を抱きしめ慰めた。宦官が徐慧に食事を届けると、徐慧は外の泣き声の理由を尋ねた。宦官は皇帝の崩御を告げ、冷宮に幽閉されていた徐慧は、その時初めて皇帝の死を知った。
徐慧は武媚娘と会い、かつての行いは全て皇帝への深い愛ゆえだったと告白した。幼い頃から皇帝の詩に心を奪われ、プライドの高い彼女は友達を作らなかったが、武媚娘だけは例外だった。皇帝の崩御を受け、徐慧は武媚娘に許しを乞い、もう一度親友に戻りたいと願った。
武媚娘は玉の腕輪の所在を問うと、徐慧は壊してしまったと白状した。武媚娘は、二人の友情は壊れた腕輪のように元には戻らないと言い、徐慧への憎しみはかつての友情と同じくらい強いと告げた。彼女は徐慧を許さず、二度と会うことはないと誓った。武媚娘が去った後、徐慧は彼女の後ろ姿を見つめながら、許しを請うたのではなく、ただ最後に一目会いたかっただけだと涙ながらに呟いた。
その夜、瑞安は武媚娘に、徐慧が錦楽宮で自害したことを伝えた。徐慧は武媚娘に手紙と修復した腕輪を遺した。手紙の中で、徐慧は雉奴に昭陵の皇帝の傍らに埋葬してくれるよう頼み、武媚娘から贈られた玉の腕輪を修復していた。武媚娘は腕輪と手紙を抱きしめ、号泣した。
武媚娘は感業寺に入り尼僧となり、皇帝に即位した雉奴は瑞安を側近に残した。雉奴は感業寺に押し入り、武媚娘に会おうとしたが、彼女は自分は明空という名の尼僧であり、武媚娘ではないと告げた。紅塵を見切った武媚娘の目に、雉奴は胸を締め付けられた。
一方、安州に赴任した呉王は、毎日釣りばかりしていた。青玄は、なぜ安州の政務を顧みず、湖畔で酒を飲み釣りをしているのかと尋ねた。呉王は自暴自棄になり、安州には他の役人がいるし、皇帝の雉奴は熱心に政務を執っているので、自分が心配する必要はないと答えた。青玄は呉王に油断しないよう忠告した。先帝の崩御後すぐに安州へ左遷されたことを考えると、長孫無忌には警戒すべきだと進言した。呉王は雉奴の人格を信じ、兄弟である自分に危害を加えることはないと考えていたが、長孫無忌には確かに用心が必要だと感じた。
第60話の感想
第60話は、様々な感情が渦巻く、非常に重厚なエピソードでした。徐慧の最期は、見ていて胸が締め付けられる思いでした。皇帝への一途な愛ゆえに、武媚娘との友情を壊してしまった彼女の後悔と、最期に武媚娘に許しを請うのではなく、ただ一目会いたいと願う姿は、彼女の悲劇的な人生を象徴しているようでした。プライドの高い彼女が、唯一心を許した武媚娘への友情をこれほどまでに大切に思っていたことが、彼女の最期の言葉から痛いほど伝わってきました。
武媚娘の、徐慧への複雑な感情も印象的でした。友情を裏切られた憎しみと、かつての親友を失った悲しみが入り混じり、彼女が腕輪を抱きしめ涙するシーンは、視聴者の涙を誘いました。徐慧を許すことができないながらも、彼女の死を悼む気持ちは確かにあったのではないでしょうか。
つづく