長孫無忌ちょうそんむき呉王ごおうを長安から遠ざけようとしましたが、皇帝は時間を置いて考えたいと却下しました。皇帝は呉王ごおうと会い、帰京したら昇進させると約束していましたが、長孫無忌ちょうそんむきに阻まれていました。朝廷は長孫無忌ちょうそんむきたちに掌握されており、皇帝の行動は常に彼らの同意が必要です。呉王ごおうは皇帝の苦境を理解し、必要であれば長安を離れると申し出ました。

皇帝は真に支えてくれる人材を求めており、呉王ごおうを側に置きたいと考えていました。最終的に、皇子たちの武術指南役として宮中に残すことにしました。

皇帝は武媚娘びじょうを竹林雅軒に安置しました。寵愛を受ける武媚娘びじょうの帰宮に、贈り物をする者が後を絶ちません。瑞安ずいあんは贈り物の整理を手伝いながら、久しぶりに武媚娘びじょうと話をしました。李義府り・ぎふは金色の鉢を贈り、「武媚娘びじょうについて金飯碗を守れ」という意味を込めましたが、武媚娘びじょうは深宮に留まり続けるつもりはありませんでした。

瑞安ずいあんは宮中の現状を武媚娘びじょうに伝えました。皇后は家柄が良く、蕭淑妃しょう・しゅくひはわがまま放題で、二人は後宮で争いを繰り広げています。皇后は良識のある人物ですが、蕭淑妃しょう・しゅくひは出産後、さらに手に負えなくなっています。瑞安ずいあんは武媚娘びじょう蕭淑妃しょう・しゅくひに気を付けるよう忠告しました。

蕭淑妃しょう・しゅくひは竹林雅軒にスパイを送り込み、武媚娘びじょうと皇后の行動を監視させました。武媚娘びじょうが皇帝に深く愛されていることを知っている蕭淑妃しょう・しゅくひは、その夜、自ら贈り物を持って武媚娘びじょうを訪ねました。皇后もこの知らせを聞きつけ、武媚娘びじょうのもとへやって来ました。

皇后は二人に対し、自分の地位を誇示し、武媚娘びじょうに太妃としての身分をわきまえるよう釘を刺しました。武媚娘びじょうは皇后が後宮の主であることを理解し、慎むと答えました。

その時、皇帝が武媚娘びじょう甘露殿かんろでんに呼びました。皇后と蕭淑妃しょう・しゅくひは仕方なく立ち去りました。甘露殿かんろでんに著いた武媚娘びじょうは、皇帝と高陽こうよう公主が、大朝会で武媚娘びじょうの称号を得た時の活躍を描いた影絵芝居を演じているのを見ました。

第64話の感想

第64話は、宮廷内の権力争いと複雑な人間関係が描かれた、非常に緊迫感のあるエピソードでした。皇帝は長孫無忌ちょうそんむきの圧力を受けながらも、呉王ごおうを信頼し、重要な役割を与えようとします。この皇帝の苦悩と呉王ごおうの忠誠心は、物語に深みを与えています。

一方、後宮では、武媚娘びじょう、皇后、蕭淑妃しょう・しゅくひの三人の女性がそれぞれの思惑を胸に、静かな戦いを繰り広げています。武媚娘びじょうは皇帝の寵愛を受けながらも、深宮での生活に安住するつもりはなく、その表情にはどこか影を感じさせます。皇后は威厳を保ちつつも、武媚娘びじょうの存在を警戒し、蕭淑妃しょう・しゅくひは激しい嫉妬心を燃やしています。三人の女性たちの微妙な駆け引きは、今後の展開を予感させ、目が離せません。

つづく