媚娘びじょうは影絵芝居を見て感動の涙を流しました。皇帝は、武媚娘びじょうが宮廷に入った後、先帝が二人の物語を自分に話し、影絵芝居にさせたのだと語りました。先帝の優しさを思い出し、武媚娘びじょうは感激して駆け出します。高陽こうよう公主は皇帝に何故嘘をついたのか問いただしますが、皇帝は武媚娘びじょうに先帝との美しい思い出を残して欲しかっただけだと答えます。

夜更けに承慶殿しょうけいでんを訪れた武媚娘びじょうは、文徳ぶんとく皇后の仮面を見ながら、初めて宮廷に入った頃、仮面を盗んで先帝のために蘭陵王らんりょうおう入陣曲を舞ったことなどを思い出します。以前は毎日承慶殿しょうけいでんで灯を灯し、先帝に会えることを願っていた武媚娘びじょう。そこに皇帝が現れ、彼女を慰めます。

房遺愛ぼういあい柴令武さいれいぶ呉王ごおうの屋敷を訪ねます。呉王ごおうは二人に迷惑をかけたくないと思い、帰るように勧めますが、房遺愛ぼういあいは自分たちも老臣に恨まれているので状況は呉王ごおうと変わらないと言い、兄弟たちは酒を酌み交わしながら語り合います。

皇帝は武媚娘びじょうに宮廷に残って自分を支え、助言してほしいと頼みます。二人は現状を打開するには寒門出身者を利用するのが最善策だと考えます。官僚貴族が政界を長く支配し、寒門出身者は常に冷遇されているため、彼らをうまく利用すれば長孫無忌ちょうそんむきを倒す機会になると考えます。

皇帝は李義府り・ぎふを呼び出します。李義府り・ぎふは評判が悪く、周りの大臣からは小人と評されていますが、彼は自分が小人であることを認め、「忠実な小人の方が、扱いにくい君子より良い」と述べます。出世のために皇帝に忠誠を誓い、先帝の時代に長孫無忌ちょうそんむきと対立したため、皇帝側に付かなければ二度と出世できないと訴えます。

皇帝は李義府り・ぎふに半月以内に重臣の確固たる罪の証拠を集めるよう命じます。その重臣は清廉潔白で有名ですが、李義府り・ぎふは長年官界にいる以上、完全にクリーンであるはずがないと考えます。皇帝は武媚娘びじょうに御書房にある全ての奏疎の写しを送ります。武媚娘びじょうは皇帝のために情勢分析をし、ほとんど休む暇がありません。

皇帝は李勣り・せきを長安に呼び戻します。その日の朝議で、李義府り・ぎふ褚遂良ちょすいりょうが権力を乱用して民衆の土地を買い占めたと弾劾します。褚遂良ちょすいりょうは罪を認め、皇帝は彼の官職を剝奪し刺史に左遷します。一方、諫言した李義府り・ぎふは昇進します。

続いて魯世寧ろせいねいという下級官吏が太尉長孫無忌ちょうそんむきを弾劾しようとしますが、皇帝は何も言わせずに魯世寧ろせいねいを即刻処刑するよう命じます。

第65話の感想

第65話は、権力闘争の激化と登場人物たちの複雑な感情が交錯する、見応えのあるエピソードでした。武媚娘びじょうと皇帝の関係性、そして皇帝の巧妙な戦略が物語の中心となっています。

まず印象的なのは、皇帝が武媚娘びじょうに対して見せる優しさです。皮影戯のエピソードは、彼が武媚娘びじょうの心を掴むために計算されたものだったとしても、彼女の心を慰めたいという気持ちは本物だったように感じられます。先帝への想いを共有することで、二人の絆はより深まっていると言えるでしょう。

つづく