夜、皇上は竹林雅軒を訪れるも、武媚娘びじょうは彼を部屋に入れようとしなかった。扉の外で、皇上は武媚娘びじょうへの深い愛情を告白し、命も天下さえも武媚娘びじょうの幸せのために捨てる覚悟だと涙ながらに訴え、傍に留まってくれるよう懇願した。

皇上が長孫無忌ちょうそんむきとの約束通り、一ヶ月後に武媚娘びじょうを感業寺へ送り返すつもりだと知った高陽こうよう公主は、甘露殿かんろでんへ行き皇上を説得しようとする。しかし、皇上は既に子供も亡くした今、武媚娘びじょうは宮中に留まる理由がないと考えていた。高陽こうよう公主は武媚娘びじょうの復讐心について語り、彼女を宮中に留める唯一の方法は、封号を与えることだと進言する。皇上は倫理に仮する高陽こうよう公主の提案を非難し、武媚娘びじょうがそんな申し出を受け入れるはずがないと仮論した。

竹林雅軒を訪れた高陽こうよう公主は、おう皇后から贈られた帝女花の刺繍図を褒め、金糸が使われ、良い香りがすると言う。彼女の言葉に気づいた武媚娘びじょうは、瑞安ずいあんに命じて刺繍図の一部を切り取り、しゅう侍医に検査させた。

しゅう侍医は、刺繍図の金糸が蕪の花で染められていることを突き止めた。蕪の花は血行を良くする薬効があるものの、甘草とは相性が悪く、武媚娘びじょうおう皇后が流産の黒幕だと悟る。武媚娘びじょうしゅう侍医に秘密を守るよう命じるが、皇上からの指示を受けていたしゅう侍医は、この事実を皇上に報告した。

一ヶ月の期限が来たが、皇上は武媚娘びじょうを送り返す様子を見せない。長孫無忌ちょうそんむきは四品以上の官僚を集め、翌日甘露殿かんろでん前で武媚娘びじょうを感業寺へ送り返すよう、皇上に迫る計画を立てる。この知らせを聞いた高陽こうよう公主は、すぐに竹林雅軒へ行き武媚娘びじょうに伝える。そして、宮中に残るには皇上との結婚しかないと促すが、武媚娘びじょうはその提案をあまりにも突飛なものだと拒絶する。彼女は皇上を愛していないため、結婚はできないと断言した。

媚娘びじょうが宮中を去る日が迫り、皇上は一人寂しく酒を飲んでいた。高陽こうよう公主は甘露殿かんろでんを訪れ、武媚娘びじょうは復讐を諦めても父皇を裏切れないと語った。皇上は苦笑いしながら、先帝から託された密詔を取り出す。密詔の内容を見た高陽こうよう公主は言葉を失う。武媚娘びじょうが命懸けで守ろうとした子供は、天下のために先帝がいつでも切り捨てられる駒とみなしていたのだった。

第70話の感想

第70話は、武媚娘びじょうの苦悩と葛藤、そして宮廷内の権力争いが複雑に絡み合い、息を呑む展開でした。皇上の武媚娘びじょうへの深い愛情は、命や天下さえも投げ出す覚悟を感じさせるほど切実で、視聴者の心を揺さぶります。扉の外での愛の告白は、彼の悲痛な叫びが胸に迫り、思わず涙を誘われました。

一方、武媚娘びじょうは復讐と愛の間で揺れ動き、苦しい立場に立たされています。愛する人を失い、その仇を討ちたいという強い思いを抱えながらも、皇上の純粋な愛情に触れ、心が乱れている様子が伝わってきました。高陽こうよう公主の結婚の提案を拒絶した場面では、彼女が自分の信念を貫き通そうとする強さと、同時に抱える苦悩が見て取れます。

つづく