皇帝が突然めまいを起こし、高陽公主に支えられながら就寝。皇帝は彼女に密詔を必ず焼くように命じた。高陽公主は炭火で密詔を少しだけ焼いた後、それを手に竹林雅軒へ向かった。そこで武媚娘は泣き伏していた。高陽公主は、武媚娘が苦心して築き上げた愛は、父の眼中では何の価値もないと嘲笑った。そして密詔を見せ、動揺する武媚娘はそれが偽物だと自分に言い聞かせようとした。
高陽公主は、感業寺の前の花火や甘露殿での影絵芝居は全て、父が武媚娘を喜ばせるために行ったことで、父は彼女を本気で想ってなどいない、真に武媚娘を愛しているのは今の天子李治だと告げた。そして今夜すぐに甘露殿へ行き、皇帝から位を授かるように促し、そうすれば宮中に残れると唆した。
高陽公主の言葉に後押しされ、武媚娘は甘露殿へ走った。皇帝もまさか最後の夜に彼女が来るとは思っておらず、武媚娘は皇帝の寝所に入った。翌日、長孫無忌をはじめとする大臣たちと、王皇后に率いられた後宮の妃たちが甘露殿の外に集まった。皇帝は武媚娘の手を取り、彼女を昭儀に封じると宣言した。
長孫無忌は、今日は武媚娘を感業寺へ送り返す日だと仮論した。皇帝は異議のあるものは太極殿で述べるように命じた。王皇后は後宮の用件を奏上したいと申し出たが、皇帝はそれは家事であり、朝議の後で話せばよいと退けた。長孫無忌は長安令の裴大人に朝議で諫言するように指示し、皇帝が武媚娘を昭儀に封じるのを撤回しない場合は、裴大人に死をもって抗議させるつもりだった。
太極殿にて、皇帝は大臣たちに意見を求めた。裴大人は真っ先に進み出て、武媚娘を感業寺へ送り返すよう懇願し、激しく頭を打ち付けた。皇帝が同意しなければ、太極殿で血を流して忠誠を示すとまで言った。李義府は昭儀を立てるのは些細なことで、朝議で議論するほどのことではないと主張した。裴大人はなおも頭を打ち続け、皇帝が止めさせようとしても聞かなかった。
そこで呉王が、なぜ裴大人は貞観年間に父の面前で諫言した時は穏やかだったのに、今になってこのように強硬なのか、なぜ二人の皇帝に態度が違うのかと問いただした。裴大人は国家のことを思ってのことだと訴えたが、皇帝は彼を殿外に引きずり出し、辺境へ左遷した。
第71話の感想
第71話は、武媚娘が昭儀の地位を得るまでの緊迫した展開と、様々な人物の思惑が交錯する見応えのあるエピソードでした。高陽公主の策略、武媚娘の決断、皇帝の揺るぎない愛情、そして長孫無忌ら仮対派の抵抗など、それぞれのキャラクターの個性が際立ち、物語に深みを与えています。
特に印象的なのは、高陽公主の複雑な心情です。彼女は武媚娘を嘲笑いながらも、密詔を見せることで彼女に皇帝の真意を伝え、宮中に残る道を示唆しています。これは、武媚娘への嫉妬や敵意だけでなく、ある種の共感や友情も感じさせる微妙な描写です。高陽公主自身の境遇や、彼女が抱える孤独も、この行動の背景にあるのかもしれません。
つづく