立政殿に呼ばれた李忠り・ちゅうは、おう皇后のもてなしに驚き、用意された菓子や果物を夢中で口に運んだ。山盛りの果物を抱えながら、皇后に「もっとゆっくり食べなさい」と声をかけられる。こんな待遇は初めてだった。皇后は李忠り・ちゅうに、気に入ったらここに住んでもいいと言う。

しかし李忠り・ちゅうは、手にした果物を母・劉侍女りゅうじじょに持って帰りたいと皇后に尋ねた。許可を得て帰った李忠り・ちゅうは、心配する母におう皇后との出来事を話した。劉侍女りゅうじじょは、皇后たちとはあまり関わらないようにと忠告する。

翌日、皇后から遣いを受けた宮女が、李忠り・ちゅうの養子縁組について劉侍女りゅうじじょに持ちかけた。李忠り・ちゅうは何よりも大切な息子。皇命には逆らえないと知りつつも、劉侍女りゅうじじょは息子を手放したくなかった。宮女は、皇後の命令は一度きりだと結果を示唆するも、劉侍女りゅうじじょはきっぱりと拒絶した。

媚娘びじょうは、おう皇后が李忠り・ちゅうを養子にしようとしていることを劉侍女りゅうじじょから聞いた。劉侍女りゅうじじょは拒否したが、皇后は諦めないだろう。武媚娘びじょうは、皇后が地位を守るために人殺し、子盗りの罪を犯すのを待ってから、皇上に訴えようと考えた。しかし、そうなれば劉侍女りゅうじじょ李忠り・ちゅうは傷つくことになる。

媚娘びじょうの計画を知った呉王ごおうは驚愕した。復讐のために、優しい武媚娘びじょうがここまで残酷になるとは思わなかったのだ。呉王ごおうは、頼まれたことはやったが、これ以上後宮の争いに巻き込まれたくないと告げた。

呉王ごおうは自ら皇子師の職を辞したいと皇上に申し出た。政務が多忙で、皇子たちに剣術を教える時間が取れないというのが理由だった。皇上は瞭承し、呉王ごおうと剣を交えた。上達した皇上だったが、やはり呉王ごおうには敵わない。呉王ごおうは、剣が手に合わないなら早く変えるようにと助言するが、皇上は剣は宝物で、自分の腕が悪いだけだと譲らない。そして、武媚娘びじょうの最後を看取るのは父でも兄の呉王ごおうでもなく、自分だと断言した。

第73話の感想

第73話は、静かな水面下で大きな波がうねり始めるような、不穏な空気を感じる回でした。おう皇后による李忠り・ちゅうへの過剰なまでの親切、そして唐突な養子縁組の申し出。その裏には、武媚娘びじょうを失脚させようと画策する彼女の desperate な思惑が透けて見えます。純粋な李忠り・ちゅうにとって、おう皇后の振る舞いは温かいものに映ったかもしれませんが、視聴者にはそれが策略であることが明白で、だからこそ不安感を掻き立てられます。

劉侍女りゅうじじょの母としての強さも印象的でした。皇命であろうと、愛する息子を守るため断固として拒否する姿は、胸を打つものがあります。権力争いの中にあっても、揺るがない母愛の尊さを改めて感じさせられました。

つづく