呉王は長安を離れる前に、親しい廷臣たちを宴に招いた。席上、皆は皇帝が突然呉王を長安から遠ざける理由を憶測した。青玄の闇殺未遂事件か、それとも皇帝が妃を立てるのを呉王が拒否したためか、と。房遺愛は、武媚娘のためにこのような馬鹿げたことをする皇帝を非難し、呉王こそ天子にふさわしいと断言、皇帝よりも呉王に従いたいと口にした。呉王は謀仮をほのめかすような発言はやめるよう彼らを諌めた。
房遺愛は帰宅後、宴の様子を高陽公主に話した。実は、高陽公主は房遺愛にあえてそう言わせたのだ。他人が口にすれば、呉王はそれを実現しようと行動するだろう、そうすれば呉王は必ず謀仮を起こすはずだと考えたのだ。
李義府は武媚娘に会い、亥の刻に呉王と李勣が会っているのを見たと報告した。武媚娘は、なぜ亥の刻に呉王府の近くにいたのかと尋ねた。呉王が長安に戻って以来、李義府は呉王の出世に期待を寄せており、亥の刻に呉王に取り入ろうとしたところ、呉王が長安城外の森で李勣と密会しているのを偶然目撃したのだった。
李勣は呉王に呼び出した理由を尋ねた。呉王は長安を離れる本当の理由を明かした。一年後、先帝・李世民の命日に精鋭騎馬隊を率いて長安に戻るつもりだと。その時に長孫無忌が朝廷で権勢を振るう現状を変えると。そのためには李勣の協力が必要で、今回会ったのだと告げた。
李義府は呉王の言葉は謀仮と同じだと考え、武媚娘に報告した。武媚娘は彼にこの件は秘密にするように、誰にも話さないようにと命じた。
王皇后は道士を宮中に招き、金の針で皇帝の風疾を治療させた。皇帝の頭痛はいくらか和らぎ、その後、皇帝は王皇后に多くの褒美を与え、立政殿に泊まった。
道士は明道長という。明道長が皇帝の頭痛を和らげたと聞き、蕭淑妃は立政殿を訪ねた。明道長は厭勝の術に長けていると語った。厭勝の術とは、裏で他人を呪う術で、相手に強い恨みを抱いている場合のみ効果があると説明した。
蕭淑妃は明道長にその術を証明するように言った。成功すれば三箱の金銀財宝を与え、失敗すれば舌を切り落とすと脅した。明道長は蕭淑妃に紙に思い浮かんだ数の画数を書き込むように指示した。すぐに明道長は紙に文字を書いた。表には「武」と、蕭淑妃が最も憎む人物の姓を書き、裏には蕭淑妃と同じ数を書き込んだ。
第79話の感想
第79話は、水面下で様々な陰謀が渦巻く、スリリングな展開でした。呉王の密会や、高陽公主の策略、そして王皇后と蕭淑妃のそれぞれの思惑が交錯し、今後の物語の行方がますます読めなくなってきました。
特に印象的だったのは、呉王の決意です。宴席での廷臣たちの言葉は、彼の本心を探るためのものだったのかもしれませんが、一年後の李世民の命日に挙兵を決意した呉王の表情からは、強い意誌と覚悟が感じられました。長孫無忌の専横を打破しようとする彼の行動は、果たして成功するのでしょうか?そして、李勣との密会を目撃した李義府の報告を受けた武媚娘は、この情報をどのように利用するのでしょうか?彼女の真意が読めないだけに、今後の動向が非常に気になります。
つづく