掖庭獄を出た武媚娘は高陽公主に出くわす。高陽公主は慌てて、廃后となった王氏が安定期の事件について何か話したか尋ねる。武媚娘は、王氏が自分への憎しみで何も話さなかったと首を横に振る。すると高陽公主は、王氏が金蚕糸に蕪の花の毒を染み込ませて武媚娘を流産させたことを口にする。武媚娘は驚く。蕪の花の話は高陽公主には話していなかったからだ。
一方、李義府と房遺愛は酒を酌み交わしていた。房遺愛は、高陽公主が男遊びにうつつを抜かし、自分のことを見てくれないと嘆く。武媚娘は瑞安に金蚕糸に触れた者を密かに調べさせる。陳貴人と高陽公主の二人だった。武媚娘は王皇后との争いに気を取られ、真犯人を見落としていたことに気付く。
皇上は呉王と二人きりで酒を飲む。呉王は、五千の精鋭騎兵を城外に配置し、先帝の忌日を利用して長孫無忌を牽製し、朝廷から退かせる計画を明かす。皇上は、謀仮の意図もなく大唐に尽くしてきた長孫無忌を退かせることに躊躇する。しかし、長孫無忌の強大な権力に押さえつけられ、自分の意見が通らない現状にも苛立っていた。呉王は考え直す猶予を与え、皇上は熟考の末、長孫無忌を退ける決意を固める。そして、羽林衛将軍の職を解く勅書を呉王に渡し、感業寺で使うよう指示する。
瑞安は武媚娘に、皇上が全ての宦官と宮女を下がらせ、呉王と長時間酒を飲んでいたと報告する。武媚娘は不安になり、急いで甘露殿へ向かう。皇上は酒の席で再び頭痛を起こすが、呉王の製止を振り切り、武媚娘が奏状の処理を手伝ってくれるから大丈夫だと答える。
武媚娘は醒酒湯を持って甘露殿に到著するが、皇上は既に酔いつぶれて眠っていた。彼女は侍女たちに皇上の介抱をさせる。呉王は武媚娘に、自分が皇上を闇殺しようとしているのではないかと疑っているのかと尋ねる。武媚娘は、呉王には確かに動機があると率直に答える。そして、一年前、呉王が大量の刀剣や甲冑を購入した理由を問いただす。呉王は、本当の購入者は皇上であり、長孫無忌を抑えるための影の兵士を訓練するために買ったのだと明かす。
第83話の感想
第83話は、水面下で様々な陰謀が渦巻く、緊迫感あふれる展開でした。特に、高陽公主の不用意な発言から、武媚娘が真犯人に近づいていく過程は、見ていてハラハラさせられました。これまで王皇后との争いに集中していた武媚娘が、真の敵に気づき始めるという重要な転換点と言えるでしょう。
また、呉王と皇上の密談も不穏な空気を漂わせています。長孫無忌を排除しようとする皇上の決断は、大唐の将来を左右する大きな賭けです。長孫無忌への情と、自らの権力確立への野心の狭間で揺れる皇上の苦悩が伝わってきました。呉王が皇上に忠誠を誓っているのか、それとも別の思惑があるのか、彼の真意もまだ分かりません。
つづく