媚娘びじょうが徹夜で皇帝の奏状を処理した。翌日、二日酔いで目覚めた皇帝は、奏状が既に全て処理されていることに気づき、武媚娘びじょうに二日酔いの辛さを問われた。皇帝は、昨夜酔った際に武媚娘びじょうの声を聞いたことを思い出し、呉王ごおうの襲撃を心配していたか尋ねた。武媚娘びじょうは依然として呉王ごおうの謀仮を懸念していた。

長孫無忌ちょうそんむき呉王ごおうに送り込んだ密偵から、呉王ごおうと皇帝が自分を排除しようと画策しているという報告を受けた。長孫無忌ちょうそんむきは単身宮殿へ赴き、皇帝に緻仕を願い出た。皇帝は長孫無忌ちょうそんむきが自ら権力を手放すとは予想していなかった。皇帝は呉王ごおうを呼び出し、長孫無忌ちょうそんむきの辞任を伝えた。

皇帝は掖庭えきてい獄を訪れ、廃后・王氏に最期の別れを告げた。王氏は皇帝から贈られた鳳簪を握りしめ眠っていた。皇帝は鳳簪を取り、彼女の髪に挿し、掖庭えきてい獄を去った。

獄丞ごくじょうは毒酒を用意し、廃后・王氏と廃妃・蕭氏に自害を命じた。蕭氏は死にたくなかった。王氏と争った末に武媚娘びじょうが得をしたことが、どうしても腑に落ちなかったのだ。王氏は蕭氏に毒酒を飲むよう諭した。蕭氏にはまだ子供がいる。もし生き延びても、宮中で蔑まれるだろうと。蕭氏は王氏の言葉に納得し、二人は共に毒酒を飲み幹した。

高陽こうよう公主は長孫無忌ちょうそんむきの緻仕が芝居ではないかと疑い、精鋭騎兵を都から遠ざけるための計略ではないかと考えた。呉王ごおうは、五千の精鋭騎兵は城外の洞窟に待機させていると告げた。武媚娘びじょうは皇帝に、李勣り・せきがなぜ中立の立場を保っているのか尋ねた。皇帝は、李勣り・せきには誰の味方もしないという信念があると答えた。武媚娘びじょう長孫無忌ちょうそんむきの言葉を思い出し、呉王ごおうに謀仮の意誌があることに気づき、皇帝に報告した。

皇帝は夜中に長孫無忌ちょうそんむきを呼び出した。長孫無忌ちょうそんむきは、呉王ごおうの五千の精鋭騎兵を長安から遠ざけるために緻仕を申し出たことを白状した。しかし、呉王ごおうの軍は未だ長安近郊に留まっており、皇帝が頼れるのは六千の禁軍のみだった。武媚娘びじょう李勣り・せきに協力を求めることを提案した。長孫無忌ちょうそんむきは、李勣り・せきを動かせるのは先帝か、彼の妻だけだと教えた。

先帝の命日、武媚娘びじょうは皇帝に感業寺へ行くのをやめるよう勧めたが、皇帝はこれが自分の劫であり、逃げることはできないと答えた。皇帝は武媚娘びじょうをじっと見つめ、感業寺へと向かった。

第84話の感想

第84話は、静かな緊張感と悲劇的な結末が印象的なエピソードでした。武媚娘びじょうの機転と献身的な姿が際立つ一方で、廃后・王氏と廃妃・蕭氏の最期は、宮廷の冷酷さを改めて感じさせます。

媚娘びじょうは皇帝の負担を軽減しようと徹夜で奏状を処理し、呉王ごおうの謀仮の可能性にもいち早く気づき、皇帝を支えようと奔走します。彼女の聡明さと強い責任感は、まさに皇后の風格を感じさせます。しかし、そんな武媚娘びじょうでさえ、宮廷内の複雑な権力争いの中で、常に不安を抱えている様子が見て取れます。

つづく