李弘の死後、皇帝は毎日木彫りの人形を作って李弘を偲び、武媚娘が政務を代行していた。朝議で太子師の郭瑜が突如武媚娘を弾劾し、権力への執著を非難、太極殿からの追放を要求した。激怒した武媚娘は郭瑜をその場で処刑した。
この一件を聞いた皇帝は武媚娘に理由を問いただすが、武媚娘は郭瑜の罪は当然の報いだと主張し、もし郭瑜の人物を見抜けていれば李弘の師にはしなかったと悔やんだ。朝廷の安定のため、皇帝は李賢を新たな太子に指名した。
太子李賢は毎日学者たちと文書館で史書の編纂に励んでいた。武媚娘の命を受けた宦官が「孝子伝」を献上するが、李賢は自分が孝子ではないと諷刺されていると思い込み激怒する。実際には、この「孝子伝」は皇帝が選び、武媚娘に届けさせたものだった。
皇帝は独孤に李弘毒殺事件の調査を命じる。独孤は宮女の馨児が関わっていることを報告するが、事件当夜に馨児は宮中から逃亡し、大理寺が見つけた時には既に死体となっていた。馨児は普段から一人で行動することが多かったが、死の直前に接触が多かったのは武媚娘の側近宦官の瑞安だった。独孤は武媚娘への影響を懸念し、皇帝に調査続行の是非を問うが、皇帝は調査中止を命じる。
武媚娘が李弘毒殺の犯人かもしれないという疑念が頭をよぎり、皇帝は動揺し、持病の頭痛が再発する。賀蘭敏月は駆け寄り、人工呼吸で皇帝を介抱した。
明道長は街中で刺客に襲われるが、狄仁傑から事前に渡されていた防具のおかげで一命を取り留める。宮中で武媚娘にこの一件を報告し、二人しか知らない名前「孫無生」を忘れるなと告げる。
その後、再び追手に追われた明道長は李賢と側近の趙道生が乗る馬車に逃げ込む。下車しようとしたところを趙道生に縄で首を絞められ、太子に防具を剝がされ、胸を刺されてしまう。息絶える間際に明道長は「孫無生」の名を呟き、太子はその人物の正体を訝しむ。
第93話の感想
第93話は、息もつかせぬ展開で、先の読めないサスペンスフルな物語が繰り広げられました。李弘の死後、権力を掌握していく武媚娘の冷酷さと、その権力に翻弄される周囲の人々の苦悩が鮮明に描かれています。
特に印象的なのは、郭瑜の処刑シーンです。武媚娘の容赦ない判断は、彼女の揺るぎない権力への執著と冷酷さを改めて示すものとなりました。一方で、皇帝は悲しみに暮れながらも、朝廷の安定を図ろうと李賢を太子に指名します。しかし、その李賢もまた、武媚娘の影に怯え、疑心闇鬼に陥っていく様子が見て取れます。
つづく