あらすじ
遠い昔、天界に碧蒼王・沈璃という美しい仙女がいました。彼女は霊尊の決めた結婚から逃れるため、天界の掟を破り、追っ手を振り切って人間界へと落ちてきました。傷を負い、気を失っていた彼女は、なんと山鳥と間違えられ、市場で売られてしまう始末。
そんな沈璃を偶然見つけたのが、行雲という名の青年でした。彼は沈璃を買い取り、家に連れ帰りましたが、当初は彼女に冷たく接していました。しかし、美味しい料理を作る行雲の手腕に、沈璃は次第に心を掴まれていきます。幾度か脱走を試みるも失敗し、彼女は仕方なく行雲の家に留まることにしました。
天界での力も失い、慣れない人間界の生活に戸惑いながらも、沈璃は少しずつ馴染んでいきます。行雲との間にも、不思議な絆が芽生え始めていました。行雲は沈璃を丁寧に介抱するだけでなく、月光に驚かぬよう気を配ったり、雨の中を傘を差し抱きかかえたりと、彼女を優しく守りました。その振る舞いからは、沈璃への特別な想いが感じられました。
ネタバレ
太古の昔、ある夕暮れ時、雷鳴轟き、天界の碧蒼王・沈璃は結婚から逃れるため、霊尊に逆らい天界から脱走した。多くの天兵に追われ、追い詰められた沈璃は天界に穴を開け、そこから飛び出した。墨方は沈璃が窮地に陥っているのを見て、自ら傷を負いながらも彼女を安全に逃がした。後から来た天兵たちは、墨方が沈璃を殺したと勘違いし、彼女はもはやこれまでだと思った。
人間界、青盛城。天兵たちは沈璃の落下地点を突き止め、追跡を続けた。傷を負い霊力を失った沈璃は、まるで落ちぶれた鳳凰のようだった。案の定、間もなく粗野な農夫に捕まり、尻尾の毛が焼けた山鳥として売られてしまった。
深夜、行雲は書斎で絵を描いていたが、突然の轟音に驚いた。晴天の霹靂、これは異変の前兆かと思いつつ、再び筆を執った。翌朝、行雲は外出すると、市場で竹籠に入れられて売られている沈璃を見つけた。いくばかの銀子を払い、彼女を家に連れ帰った。
人間界に降り立った沈璃は、霊力を失っただけでなく、鳳凰であるにもかかわらず山鳥と間違えられて売られていた。行雲の家に連れてこられた彼女は、まず池で体を洗わされ、次に餌を与えられた。行雲の手作り菓子が美味しかったので、沈璃は渋々ながらも平らげた。暇つぶしに、行雲が静かに絵を描いているのを見て、少しばかり良い男だなと思った矢先、彼が「身を売る」と言い出したのを聞き、残っていたわずかな好意も一気に消え失せた。
行雲は沈璃を「コッコ」と呼び、外出する際に家を守れと言い残した。沈璃は逃げ出そうとしたが、家に「泥棒」が入ってきた。好奇心に駆られた沈璃が様子を見ようとしたところ、田螺姑娘に見つかり、スープにされそうになった。手足を縛られ、まさに絶体絶命のその時、行雲が戻ってきた!九死に一生を得た沈璃は、行雲が田螺姑娘に二度と来るなと告げ、手にしていた布巾を贈り物として渡すのを見た。田螺姑娘を追い払った行雲を見て、沈璃は彼を無粋でつまらない男だと判断した。
三十六計逃げるに如かず。未練はない。沈璃は家出を決行しようとしたが、何度羽ばたいても飛べなかった。行雲は出来上がった料理を運んでくると、逃げようとしている沈璃を見つけ、「ご飯だよ」と声をかけた。空腹に耐えかねた沈璃は、料理の誘惑に負け、美味しそうに食べ始めた。
小さな庭で満腹になった沈璃は、行雲の傍らで日出と日没を眺めた。夜になると、彼女は穏やかに眠りについた。どれくらい時間が経っただろうか。行雲は筆を置き、庭に出ると、月明かりの下で安らかに眠る沈璃の姿を見た。なんと純粋な女性だろうと思い、彼女の目に月の光がずっと当たっているのを見て、邪魔にならないようにと、近くの石を軽く叩いた。すると、月の光は近くの建物の影に隠れた。
重傷を負った沈璃は再び家出を試みたが、今回はそううまくはいかなかった。またしても奇妙なキジと間違えられ、捕まえられそうになり、危うく鍋の具になるところだった。悪人の手から逃れた沈璃は、土砂降りの雨に打たれ、びしょ濡れになった。天界に戻っても結婚を迫られることを考えると、沈璃はひどく落ち込んだ。その時、行雲が傘を差してゆっくりと近づいてきた。傘の半分を沈璃に差し掛け、このハンサムな書生は再び彼女を家に連れ帰った。
第1話の感想
『与鳳行』第1話は、まさに波乱万丈の幕開けでした。天界の王女・沈璃が結婚から逃れるため、天界を脱出し人間界へと落ちていく怒涛の展開。冒頭から、彼女の自由奔放な性格と、窮地に立たされても決して諦めない強い意誌が印象的でした。
特に、墨方が身を挺して沈璃を逃がすシーンは、二人の関係性への興味をかき立てられます。墨方の真意は一体何なのか、今後の展開で明らかになるのが楽しみです。
人間界に落ちた沈璃は、傷つき霊力を失い、鳳凰の姿から一転、山鳥同然の扱いを受けるというコミカルな状況に。高貴な身分から転落した彼女の戸惑いと、それでも持ち前のプライドを垣間見せる姿は、どこか憎めない可愛らしさを感じさせます。
そんな沈璃と、偶然出会った行雲との奇妙な共同生活が始まります。行雲は沈璃を「コッコ」と呼び、まるでペットのように扱う一方で、彼女を危険から守ったり、食事を与えたりと優しく接する場面も。二人のぎこちない距離感と、少しずつ変化していく関係性が、今後の物語の鍵を握っているように感じます。
つづく