あらすじ
沈璃の勇猛さを恐れ、狐朋狗友の入れ知恵で霊界へ行き、彼女の心変わりを企てた拂容。一方その頃、墟天淵にて沈璃と行止は魑魅魍魎を退治していた。行止の強大な神力に、沈璃は深く感服する。墟天淵の浄化を終え、二人が霊界へ戻ると、熱烈な歓迎を受け、行止は碧蒼王府に滞在することになった。しかし、霊尊が行止の住居について尋ねると、沈璃は結婚を承諾している手前、難色を示した。
霊界では、行止が下界の行雲に瓜二つであることから、人々は彼に畏敬の念を抱いていた。霊界に到著した拂容は、自らの評判を落とすことで沈璃に婚約を破棄させるつもりだったが、彼女に会うと心変わりし、己の能力を誇示して気を引こうとする。しかし、彼の嘘はすぐに露見し、沈璃は軽く瓷の花瓶を払いのけるようにして割ると、拂容を戒めた。この様子を見た行止は、不快感を露わにし、嫉妬の念さえ抱いた。
ネタバレ
拂容は沈璃に会ったことはなかったが、彼女が単身で蛮荒の地へ乗り込み、虎背熊腰で勇敢に妖魔を退治する噂はよく耳にしていた。自分の怠惰な性格をよく知る拂容は、鶏一匹殺すのもためらう自分が、そんな悍婦を妻に迎えるなど想像もできず、恐れていた。そこで、悪友たちの入れ知恵で、沈璃に嫌われ、結婚を諦めさせるために霊界へ戻ることにした。
一方、墟天淵では、沈璃と行止が魑魅退治を続けていた。行止は沈璃に墟天淵の隅々まで案内し、沈璃は行止の神力に驚嘆する。自分が苦労して倒す魑魅を、行止は簡単に消滅させてしまうのだ。
墟天淵の浄化を終え、二人は霊界へ戻った。凱旋する沈璃を、霊界の人々は熱烈に歓迎する。花冠を贈られ、戦甲を脱いだ沈璃は、凛々しさの中に女性らしい美しさを見せる。行止は、そんな穏やかな沈璃の姿を見て、この幸せが永遠に続けばと願う。
霊界では、行止が霊尊に数日の滞在を申し出た。霊尊は驚きながらも、霊界の粗野な風習を詫びるが、行止は気にする様子もなく、碧蒼王府への滞在を希望する。霊尊は、行止の申し出を断る理由もなく、承諾した。
その後、霊尊は沈璃と二人きりになり、彼女の考えを尋ねる。意外にも沈璃は、行止を王府に泊めることに仮対していた。しかし、霊界が神君の力による浄化を必要としている以上、政略結婚を受け入れる覚悟を決めていた。
かつて沈璃を捕らえるため人間界へ遣わされた霊尊の手下は、行止を見て驚愕した。その容姿と雰囲気は、人間界の行雲に瓜二つだったのだ。彼らは、人間界での行雲捕縛の件で行止の恨みを買わないよう、より慎重に行動する。
霊界に戻った拂容は、沈璃に嫌われるようわざと横柄な態度をとるつもりだった。しかし、沈璃を一目見て心を奪われ、前言撤回。今度は好印象を与えようと美男計を使うが、数々の男を見てきた沈璃には通じない。それでも、婚約者である拂容の王府滞在は許可した。
許可を得た拂容は、沈璃のそばをうろつき、行止に次ぐ浄化の力を持つと自慢する。その嘘は明らかで、沈璃はうるさく思い、傍らの花瓶を軽く叩くと、花瓶は粉々に砕け散った。拂容は沈璃の力を恐れ、縮み上がる。その様子を見ていた行止は、なぜか嫉妬し、拂容に早く浄化の力を使うよう促す。
拂容が去った後、行止は、普段の冷静さを失い、焦燥感に駆られる自分に戸惑う。
霊尊は沈璃を部屋に呼び、碧海倉珠を返す。それは沈璃が生まれた時に口にくわえていた霊珠で、今や立派な王となった沈璃に、護身用として返すことにしたのだ。沈璃は碧海倉珠を手に、母の温もりを感じるのだった。
第11話の感想
第11話は、沈璃と行止の絆が深まる一方で、新たな火種が生まれる波乱の展開でした。墟天淵での共闘を経て、二人の間には確かな信頼関係が築かれていることが感じられます。行止が沈璃の穏やかな笑顔に幸せを願うシーンは、彼の深い愛情が伝わってきて胸が温かくなりました。しかし、霊界に戻ると、拂容の登場によって事態は急変します。沈璃に一目惚れした拂容のコミカルな行動は、物語に笑いを添える一方で、行止の嫉妬心を煽る結果に。冷静沈著な行止が、拂容に苛立ちを露わにする様子は、彼の人間らしい一面を垣間見せてくれます。
また、沈璃の強さと優しさも印象的でした。魑魅退治で見せる勇ましい姿とは対照的に、霊尊や行止に対しては素直な感情を表現しています。特に、霊尊から碧海倉珠を受け取るシーンは、彼女の母への想いが感じられ、感動的でした。
つづく