あらすじ
第二十四話は、行止が東海で沈璃を探し回るも、赤い衣の切れ端しか見つからず、悲しみに暮れる様子を描いています。二人のこれまでの日々を思い返し、行止は天命に逆らい、自らの修為を犠牲にしてでも沈璃を救い出すことを決意します。そして、彼女の霊力の痕跡を探すため、東海を万裏に渡って凍らせてしまうほどでした。
東海の龍王は天界に訴え、傷ついた行止を見つけた拂容は、彼を天界に連れ帰り治療を施します。天尊の言葉に違和感を覚えた拂容は、沈璃の犠牲があまりにもむごすぎると感じます。幽蘭は、人間界で沈璃の選択に影響を与えられなかったことを拂容が悔やんでいるのを聞き、好奇心から拂容を気絶させ、洗髓池を使って彼女の記憶を覗き見ます。そして、二人のすれ違いを惜しみます。
ネタバレ
東海を隅々まで探し回った行止だったが、沈璃の姿は見つからず、ただ赤い衣の切れ端だけが目に留まった。沈璃に何かあったのは確実で、行止の心は切り裂かれるようだった。かつて二人が共に過ごした日々、三界の安寧と責任を背負う己の立場ゆえに、行止は必死に自分の感情を抑え込んでいた。しかし、本当に彼女を失って初めて、その悲しみの深さを思い知る。愛する者一人さえ守れない自分が、どうして天下を顧みることができるだろうか。過去の様々な情景が、走馬灯のように彼の脳裏を駆け巡った。
天界で、沈璃が「行止に出会ってからというもの、戦で怪我ばかりしている。もしもの時は、貴方に祟ってやる」と笑いながら言ったことを思い出した。その時、行止は彼女の目を見て「その時が来たら、私の命で償おう」と約束したのだ。そして今、その言葉が現実のものとなってしまった。行止は天命に逆らい、畢生の修為を犠牲にしてでも、霊力の仮動に苦しめられようとも、碧蒼王を必ず取り戻すと誓った。
行止は万裏に渡る東海を凍らせ、彼女の霊力の欠片だけでも見つけようと躍起になった。一方、東海の龍王は天界に駆け込み、身の潔白を訴えた。天尊は行止が沈璃のためにしたことだと知り、彼を宥め、落ち著くように諭した。
行止が東海を凍らせたという知らせを聞いた拂容は、すぐさま彼の元へ向かった。そして、血まみれになった行止の姿を見て驚愕する。いつも冷静沈著な彼からは想像もつかないほど、今回は本気で心を乱していたのだ。行止自身も、霊力の仮動の苦しみを初めて味わい、その狼狽ぶりに驚いていた。普段は三界の広大さを意識することはなかったが、今、この東海でさえ、探し求める人を見つけることができない。少し正気を取り戻した行止は、東海の氷を解いた。
拂容は意識を失った行止を天界に連れ帰った。今や行止は天界で唯一の上古天神であり、彼に何かあれば天界の存続に関わる。天尊は行止が無事にこの試練を乗り越え、心穏やかに回復することを祈った。天尊の言葉を聞いた拂容は、沈璃が霊界の安寧のために犠牲になったことを思い、胸が締め付けられる思いだった。そんな中、幽蘭は、拂容が人間界で沈璃をもっと口説いておけばよかった、そうすれば行止に取られることもなかったのにと呟くのを偶然耳にする。幽蘭の好奇心は掻き立てられ、霊界での出来事を詳しく話してくれるよう拂容に迫ったが、拂容は口を噤み、全てを胸にしまっておくと誓った。
焦れた幽蘭は、石で拂容を気絶させ、洗髓池に投げ込んだ。洗髓池の力で彼の記憶を覗き見ると、沈璃と行止のすれ違いに、思わずため息をついた。互いに想い合っていながら、素直になれない二人の姿がそこにあったのだ。
天尊は幽蘭に、天界の霊石の半分を霊界に慰謝料として送るよう命じた。霊界の人々は幽蘭を取り囲み、沈璃の死の償いを求めた。彼らは代々天界の法器を守ってきたことに誇りを持っており、碧蒼王の死を受け入れることはできない。霊石などどうでもよかった。
霊尊は外の様子を聞き、部下に霊界の人々をなだめるよう指示した。今は大きな損失を被っており、霊石が必要な時なのだ。感情的になってはいけない。侍従たちを下がらせると、霊尊は幼い頃から見守ってきた沈璃を思い、涙が溢れ出た。師弟の関係とはいえ、母娘のような強い絆で結ばれていたのだ。
第24話の感想
第24話は、行止の沈璃への深い愛情と、彼女の死を受け入れられない苦悩が鮮烈に描かれたエピソードでした。沈璃を失った行止の悲しみは、東海を凍らせるほどの激しい力となり、彼の冷静沈著な仮面を打ち砕きます。これまで三界の責任を優先し、感情を抑えてきた行止が、初めて本気の愛に気づき、その喪失に打ちひしがれる姿は、胸を締め付けられるものがありました。
特に印象的だったのは、行止が沈璃との過去の会話を思い出すシーンです。沈璃の死を予感させるような彼女の言葉と、それを真剣に受け止め、命を懸けて償うと約束する行止。このシーンは、二人の間にどれほど強い絆があったのかを改めて感じさせ、行止の悲しみをより深く理解させてくれます。
また、拂容の沈璃への複雑な感情も描かれています。沈璃の死を悼む一方で、彼女を自分のものにできなかったことを悔やむ姿は、人間らしい弱さを感じさせます。幽蘭の好奇心旺盛な行動も、物語に新たな展開をもたらし、今後の展開への期待を高めます。
つづく