あらすじ
第二十六話は、沈璃が苻生から残酷な拷問を受ける場面と、その後の救出劇、そして回復までの過程を描いています。苻生は沈璃を拷問する最中、微かに彼女の霊力を感じ取りますが、墨方に阻まれ逃亡します。沈璃は三皇子に北海侵攻の報を仙界に伝えるよう促しますが、恐怖に怯えた三皇子は動けずにいました。その後、正気を取り戻した墨方は沈璃を救出し、人里離れた場所に匿います。捜索を避けるため、墨方は一時的にその場を離れなければなりませんでした。沈璃の血の匂いを嗅ぎつけた行止は、彼女を見つけ出し、治療のために連れ帰ります。意識朦朧とする中、沈璃は行止を墨方と勘違いし、敵意を露わにします。目を覚ました沈璃は嗅覚だけがわずかに戻っており、行止を漁師だと勘違いしますが、行止は献身的に彼女を看病します。徐々に体力が回復していくにつれ、沈璃は「漁師」に体内の玄鉄釘を抜いてくれるよう頼みます。行止は仙術を用いて彼女の苦痛を和らげながら釘を抜きます。そしてついに、沈璃は視力を取り戻し、目の前にいるのが行止だと気づき、心からの感謝の念で胸がいっぱいになります。
ネタバレ
苻生は沈璃に容赦なく、関節の一つ一つに釘を打ち込んでいった。三皇子は恐怖に震えるも、沈璃は歯を食いしばり、声を発しなかった。苻生がニヤリと笑うと、微かに霊力が湧き上がり、墨方は必死に苻生を抑え込み、更なる拷問を止めさせると、慌てて逃げ去った。
苻生が去ると、沈璃は三皇子に北海侵攻の報を仙界に伝えるよう促すが、三皇子は苻生に捕まり同じ目に遭うことを恐れ、尻込みする。自分は沈璃ほど勇敢ではないと言い訳し、母は寵愛されていない妃であり、北海にも頼れる者はないと訴えた。
意識を取り戻した墨方は、苻生が憑依していない隙に沈璃を救い出し、脱出の機会を窺っていた三皇子も共に逃げ出した。墨方は沈璃を人裏離れた渓穀に運び、空に残る妖気を察知すると、沈璃を抱きかかえ、釘を抜こうとする。だが、沈璃は苦しみもがき、墨方は釘を抜くのをためらった。苻生に見つからないよう、墨方は沈璃に跪き、これまでの非道を詫びた。沈璃は墨方の声を聞き、ぼんやりと彼の姿を見た。共に戦い、生死を共にした友が自分を救っているという喜びと、霊族を裏切り多くの将軍の命を奪った墨方への憎しみが、彼女の胸を締め付けた。
墨方は苻生の手先を欺くため、沈璃を安全な場所に隠し、自身は囮となった。程なく、沈璃の傷口から流れ出た血が東海に届き、行止はその匂いを嗅ぎつけた。絶食して命を絶とうとしていた行止だったが、沈璃の生気を感知し、その方向へと向かった。岩の上に倒れ、血まみれになりながらも微かに息のある沈璃を見つけ、行止は感極まって涙を流し、沈璃に命を救われたことを呟いた。
気を失った沈璃を運ぶ途中、沈璃は何も見えず、聞こえず、自分を抱きかかえているのが墨方だと勘違いし、二度と近寄らないよう、戦場で会えば容赦しないと告げた。行止は沈璃が誰かと自分を間違えていること、そして彼女の苦しみに気づき、沈璃を刺激しないよう何も言わず、ただ優しく抱きしめ、慰めた。
再び意識を取り戻した沈璃は、かすかに相手の体から潮の香りがすることを感じ、漁師だと考えた。行止は沈璃が嗅覚しか頼れないことを理解し、彼女の言うことは全て聞き入れ、世話を焼いた。毎日三食、自ら食事を作り、献身的に看病した。
体調が少し回復した沈璃は、「漁師」に体から玄鉄の釘を抜いてくれるよう頼んだ。血まみれの姿を見せないよう、早く抜いて構わない、自分のことは気にしないでとまで言った。数十本の玄鉄を体から抜くのは容易ではなく、行止は仙術で沈璃の心脈を安定させながら、一本ずつ慎重に抜いていった。玄鉄が抜かれる度に血が噴き出し、沈璃は体を震わせた。行止は沈璃を抱きしめ、落ち著くのを待ってから次の玄鉄を抜いた。沈璃は自分が死にかけているのか、痛みを感じないどころか、相手が行止のように感じられた。
長く辛い一夜が明け、朝が来た。沈璃は体力が回復し、視力も戻った。窓の外の音に気づき、目を向けると、そこには行止の姿があった。沈璃は微笑み、この数日、「漁師」が優しくしてくれた理由がわかった。彼こそが行止だったのだ。
第26話の感想
第26話は、沈璃の壮絶な苦しみと、行止の深い愛情が胸を打つエピソードでした。苻生による拷問シーンは目を覆いたくなるほど残酷で、沈璃の強靭な精神力と肉体的な苦痛がひしひしと伝わってきました。声を発さずに耐え忍ぶ姿は、彼女の誇り高さと芯の強さを改めて感じさせます。
一方、墨方の葛藤も印象的でした。苻生を抑え込み、沈璃を救い出す場面からは、彼の中に残る善良さや沈璃への友情が垣間見えます。しかし、過去の裏切りは消えることはなく、沈璃との間には深い溝ができてしまっています。二人の今後の関係がどうなっていくのか、非常に気になるところです。
つづく