あらすじ
第二十八話は、行止が漁師になってからの暮らしぶりを描いています。毎日海に出て魚を捕り、沈璃を細やかに気にかけ、海辺の生活にもすっかり馴染んでいました。沈璃は時折視力を失いますが、その代わりに嗅覚が鋭くなり、行止の体から魚や海産物の匂いが混じって漂ってくることに気づきます。それは、行止が人間界の生活に溶け込んでいる証でした。
一方、幽蘭は行止が怪我をしたと知り、彼の回復を助けるために薬を精製しようと懸命に努力します。そんな中、沈璃は偶然行止の肩にある大きな傷跡を見つけ、胸を痛めます。東海龍王は行止が漁をしていると聞きつけ、彼の網に宝物をこっそり入れますが、行止はただ呆れるばかりです。
ネタバレ
穏やかな日々が続いていました。行止は漁師として海に出て漁をし、家に帰ると沈璃のために魚を焼き、骨を取り除いて食べさせてあげていました。
沈璃は時々視力を失うことがあり、その代わりに嗅覚が鋭くなっていました。初めて行止の匂いを嗅いだ時は海の香りでしたが、今は魚や海の幸の匂いが混じっていることに気づきます。行止は本当に漁師として暮らし、仙界の記憶を持ちながらも、人間の生活を真面目に送っているのだと実感します。沈璃はそんな行止を愛おしく思っていました。
幽蘭は行止も重傷を負っていることを知り、薬作りに励みます。完成した薬符はすぐに拂容を通して行止に届けられました。沈璃は部屋で拂容の声を聞き、わざと目が見えないふりをします。拂容が行止に薬を塗っている時、彼の肩に大きな傷があるのを見て、胸が痛みます。普段、何の気なしに行止の世話を受けていましたが、彼もまた重傷を負っていたのです。
小庭で穏やかな日々を過ごす中、沈璃の怪我は順調に回復していました。暇になった沈璃は、行止がどんな魚を釣ってくるのか興味を持ち、海辺で彼の帰りを待つことにしました。
東海龍王は、行止がまた網を張って漁をしていると聞き、最初は部下に上等な魚を放つように指示します。その後、提案を受けて網の中の魚を様々な宝にすり替えました。行止は引き上げた網にまた宝が入っているのを見て、呆れた表情を浮かべます。沈璃はこっそりと笑います。明らかに龍王の仕業だと分かっていました。行止は沈璃に好きな宝を選ばせ、その中の真珠をいくつか使って市場で魚を買おうとします。
ところが、市場で村長の息子である王宝というならず者に遭遇してしまいます。王宝は最初、行止が持っていた真珠に目をつけ、次に輝くばかりに美しい沈璃を見て、心を奪われ、邪な考えを抱きます。行止は軽く袖を振り、王宝の片目をパンダ目にしてしまいます。
夜、王宝は二人の手下と共に復讐のために行止を襲撃しようと企みます。塀を乗り越えた後、自分たちが愚かだったことに気づきます。相手は霊界の碧蒼王と仙界の上古天神。数人の人間では到底敵う相手ではありません。案の定、またしても酷い目に遭ってしまいます。
沈璃は苻生の玄鉄に囚われてから、恐ろしい夢を見るようになりました。底知れぬ海に沈み続け、五行が欠け、嗅覚も触覚もなく、周囲は無限の闇と恐怖に満ちている夢です。行止は何度も沈璃が悪夢に苦しむのを見て、すぐに拂容に血七子と五彩熔火岩を探させるように指示します。これらの上古の薬材は沈璃の回復を早めることができるからです。
苻生は沈璃の価顔絵を持った多くの手下を放って捜索させていました。たまたま王宝が価顔絵を見て沈璃の居場所を明かしてしまい、沈璃の行方が露呈してしまいます。
第28話の感想
第28話では、行止と沈璃の穏やかな日常と、迫り来る危機の兆しが描かれており、その対比が印象的でした。特に、行止が漁師として生活する姿は、これまでの神としての威厳ある姿とは異なる魅力を感じさせます。沈璃のために魚を焼き、骨を取り除くといった細やかな愛情表現からは、二人の深い絆が伝わってきました。
沈璃の嗅覚が鋭くなったという設定は、彼女の視力の不安定さと共に、今後の展開への伏線となっているように感じます。また、行止の肩の傷や沈璃の悪夢は、彼らが抱える過去や苦悩を改めて想起させ、物語に深みを与えています。
東海龍王の茶目っ気のある行動は、緊張感漂う物語の中で、良い息抜きとなっています。行止が宝を魚に換えようとするあたりは、彼の真面目さと優しさが垣間見え、微笑ましいシーンでした。
つづく