あらすじ
第二十九話は、沈璃を守るために行止が真の姿を現し、彼女の五感を回復させる薬草を求めて雪山へ向かう決意をする場面から始まります。苻生が差し向けた追っ手を容易く撃退する行止ですが、沈璃を守りきれなかったことを悔やみます。そんな中、拂容が金娘子と雪山の妖士が求める薬草を持っているという情報をもたらします。沈璃を救うため、行止は彼女を連れて雪山へ向かうことにします。
道中、沈璃は行止の年齢に触れてしまい、彼を不機嫌にさせてしまいますが、すぐに謝罪し、誤解は解けます。大雪山に到著した二人は、金蛇の妖を見つけ、彼女が沈璃の治療に必要な薬草を持っていることを確認します。金蛇の妖は沈璃に男を紹介しようとしますが、行止に製止されます。行止は蛇の妖に仙界の星を与えることを約束し、薬草との交換を提案します。
ネタバレ
苻生の追っ手は止水術を使い、沈璃を脅かそうとしました。しかし、相手は三界唯一の上古天神。沈璃は軽く手を振るだけで、追っ手の一人を氷漬けにしてしまいます。行止は自ら名乗り、数日後には苻生と直接対決すると伝えました。
追っ手は恐怖に慄きながら逃げ去ります。行止の正体が沈璃に完全に露見しますが、彼は微笑みながら、沈璃が既に気づいていたのではないかと推測します。沈璃は行止の助けに感謝しますが、行止は満足していません。追っ手を倒したとはいえ、沈璃が最も危険な時に傍で守ることができなかったからです。力を失った今なお、自責の念に駆られています。
そこに拂容が現れます。二人の会話を聞いて、変装する必要もないと判断した拂容は、入手したばかりの情報を行止に伝えます。二つの貴重な薬材を持っているのは、金娘子と雪山の妖士のようです。沈璃の五感を早く回復させるため、行止は数日後に沈璃と共に雪山へ向かうことを決めます。
一方、重傷を負った苻生は、日々修行に励んでいました。より早く法力を高めるため、大雪山にある霊珠で内丹を修復しようと企みます。
雪深い大雪山を進む沈璃と行止。道中、行止は金娘子が莫大な財宝を持つ上古の金蛇の妖怪であることを沈璃に説明します。沈璃が何気なくその年齢の長さに驚くと、行止は沈璃が自分の年齢を気にしているのだと勘違いしてしまいます。沈璃は失言に気づき、謝罪して行止の機嫌を直します。
ついに金娘子を見つけます。沈璃は男装に口髭を生やし、「奴家」と自称する金娘子の性別が判別できない様子に戸惑います。さらに、自分の考えていることが金娘子に全て見透かされていることに気づきます。沈璃は行止に、この蛇の妖怪は狐媚の妖術を使えるのかと尋ねますが、行止は落ち著いて、自分は金娘子に惑わされることはないと答えます。
金娘子は沈璃の脈を取り、すぐに体内の霊力が元氣と衝突していることを見抜きます。おそらく最初は法器だった霊力が、高温で焼かれ沈璃の血脈に溶け込んだことが原因だと指摘します。金娘子の診断は完璧で、しかも彼女の元には沈璃の五感を治す薬材がありました。
抜け目のない金娘子は、沈璃に素敵な男性を紹介しようと持ちかけます。行止はそれを製止し、仙界の星を金娘子に贈ると申し出ます。星があれば、大雪山の寒さと陰気さが和らぐでしょう。沈璃は感動しますが、仙界の七星を一つ摘み取れば、仙界が行止に不満を抱くのではないかと心配します。
行止は金娘子に沈璃の五感を一刻も早く回復させるよう促します。本来は一日かけて準備するところでしたが、行止は金娘子に隙を与えず、その夜に薬材を渡し沈璃を治療させます。治療場所は非常に人裏離れたで、金娘子は行止が男性であるため中に入るべきではないと念を押します。洞窟の外で見守るように指示しますが、行止は治療中に沈璃に他の男の話などをするなと釘を刺します。
第29話の感想
第29話は、行止と沈璃の関係性が深まる一方で、新たな困難も予感させる展開でした。苻生との対決が避けられない状況の中、沈璃の五感の回復が急務となります。行止は沈璃を守るため、そして彼女の苦しみを少しでも早く取り除くため、奔走します。その姿からは、沈璃への深い愛情と責任感が感じられます。
特に印象的だったのは、雪山での二人のやりとりです。金娘子の年齢に言及した沈璃の失言に、行止が拗ねてしまう場面は、彼の可愛らしさと人間味を感じさせました。沈璃もすぐに謝罪し、行止を宥める様子は、二人の信頼関係の深さを物語っています。
また、金娘子の登場は、物語に新たな謎と緊張感をもたらしました。彼女の妖艶な雰囲気と、全てを見透かすような能力は、行止と沈璃にとって大きな脅威となる可能性を秘めています。行止が仙界の星を差し出すという大胆な行動も、金娘子の底知れぬ力への警戒心の表れと言えるでしょう。
つづく