あらすじ
第三話では、沈璃がある男の願いを葉える物語が中心に描かれています。その男は十余年連れ添った妻との別れを惜しみ苦悩していましたが、執著し続けると妻の寿命が縮むことを知り、手放す決意をします。沈璃は術を使い男を忘川へ送り届け、残された農婦を慰めました。その後、沈璃は沈んだ気持ちになりますが、行雲は彼女に今を大切にしようと励まします。道中、行雲が思いがけず川に落ちてしまい、沈璃は彼を助け出しますが、行雲のいたずらで鳳凰の姿に変えられてしまいます。この場面を農婦の兄が目撃し城主へ報告したため、調査が入ることになります。行雲は陣を張り来人を撃退しますが、その過程で沈璃は自分がずっと行雲にからかわれていたことに気づき、衝動的に彼の腕を折ってしまいます。自分の過ちを償うため、沈璃は行雲が回復するまで彼の世話をすることを決意します。
ネタバレ
農家の妻は、夫が十年以上も自分の傍にいたと聞き、思わず涙を流しました。彼女は男の手を握りしめ、本当にそうなのかと問いかけますが、男は涙を浮かべるばかりで何も言いません。しかし、行雲から、このままでは妻の寿命が縮まってしまうと聞き、男は愛する人をこれ以上苦しめないよう、別れを決意します。沈璃は頷き、彼の願いを葉えることを約束します。男は妻に深くキスをし、力強く別れを告げました。沈璃は術を使い、男を忘川へと送り返し、その後、農家の妻を抱き起こし、男は彼女を深く愛しており、彼女のために良かれと思って去ったのだと慰めました。
沈璃と行雲は帰る途中、沈璃がいつもの活発さを取り戻していないことに気づいた行雲は、「過ぎたことは虚妄、未来こそが人生」だと慰め、今を大切にしようと諭します。沈璃の気持ちが少し落ち著いたその時、行雲が足を滑らせて水に落ちてしまいます。沈璃は当然見過ごすわけにはいかず、すぐに水に飛び込みました。行雲は、沈璃に優しく水底から引き上げられると思っていましたが、沈璃は彼の髪を掴んで水面に引きずり上げ、その際に髪の毛をむしり取られてしまいました。行雲が無事でいることを確認すると、沈璃は改めて別れを告げますが、すぐにまた行雲によって鳳凰の姿に変えられてしまいます。どうやらまだ完全に回復していないようです。沈璃は仕方なく、再び行雲の家へと向かいます。
沈璃が美女から鳥に変えられる様子を、農家の妻の兄が目撃してしまいます。欲深い男は、沈璃の妖術を地元の権力者に伝え、全て自分の目で見たことだと主張します。真相を確かめるため、城主はすぐに部下を行雲の元に遣わします。
家の前に刀を持った侍たちが大勢いるのを見て、行雲はすぐに陣を張り、沈璃を元の姿に戻し、侍たちを散々に打ち負かしました。沈璃は、行雲がずっと自分をからかっていたことに気づきます。初日の夜に正体を現したにも関わらず、行雲に抑え込まれ、びしょ濡れの姿を見られたのは屈辱でした。沈璃は衝動的に行雲に掌底を食らわせますが、見た目とは裏腹に、行雲は弱々しく倒れ込み、腕を折られたと訴えます。
せっかく助けてもらった恩人の腕を折ってしまったことに、沈璃は罪悪感を覚えます。少し迷った後、行雲の腕が治るまで一緒にいることを決意します。行雲は内心喜びながら、すぐに頷きました。沈璃は不思議そうに彼の顎を持ち上げ、男なのにどうしてこんなに上手におねだりするのかと尋ねます。行雲はいたずらっぽく笑い、沈璃は女なのに男勝りで、自分たちはちょうど良い組み合わせだと言います。行雲の愛想の良い顔を見ながら、沈璃は彼の正体への疑念を深めます。陣を操り、占いもでき、世捨て人のような暮らしぶりなのに一日三食欠かさず、鳥の言葉も理解し、自分の正体も見破る。この世の普通の人間とは全く違います。きっと天界から追ってきた侍に違いない、そう思い、今後彼の素性を調べようと心に決めます。
青盛城の太子府では、太子が部下からの報告で、行雲の不思議な力と、彼の侍女が素手で銅製の令牌を折ってしまったことを知り、行雲を侮れない存在だと認識します。無理やり連れ去ろうとしていた考えはすぐに消え失せました。沈璃が下界に降りて以来、墨方も彼女の後を追っていますが、なかなか見つからず、人間界では法術が使えないため、途方に暮れていました。
第3話の感想
第3話は、沈璃と行雲の関係性が大きく変化する重要なエピソードでした。冒頭では、沈璃は行雲の助言によって人助けを行い、その中で命の尊さと儚さを改めて実感する様子が描かれています。しかし、行雲の思わぬ落水騒動で一転、コミカルな展開に。沈璃の豪快な救出劇は、彼女の飾らない性格をよく表しており、思わず笑いを誘います。
特に印象的だったのは、行雲が沈璃を鳳凰の姿に変えてしまうシーンです。沈璃の驚愕した表情と、行雲のいたずらっぽい笑みが対照的で、二人の間に流れる独特の空気が伝わってきました。この出来事は、一見ふざけているように見えますが、行雲が沈璃の本質を見抜き、試しているようにも感じられます。
また、沈璃が恩人の腕を折ってしまうシーンも、今後の展開を闇示する重要な場面でした。沈璃の責任感の強さと、行雲のどこか掴みどころのない性格が浮き彫りになり、二人の関係性がさらに複雑になることを予感させます。行雲の正体への疑念を抱き始める沈璃の姿は、物語にミステリアスな要素を加えています。
つづく