あらすじ
第39話は、沈璃と行止が蛇の精の結婚式に招待される場面から始まります。かつて沈璃が魑魅の毒に侵された際、この蛇の精が解毒の手助けをしてくれた恩がありました。今、彼女は人間の慕子淳への想いに悩んでおり、二人に相談を持ち掛けたのです。行止は、他の相手に想いを寄せるふりをして慕子淳の本心を探るよう提案します。この計略は見事に成功し、慕子淳は真の愛情を露わにしました。そして、蛇の精が遭難したという偽の情報に、彼は身を挺して彼女を救い出し、深い愛情を証明したのです。結婚式では、蛇の精が行止に古代の玉佩を贈り、彼の健康回復を助けます。物語は、沈璃と行止が自分たちの結婚式やもうすぐ生まれてくる子供について語り合う温かい場面で幕を閉じ、波乱万丈の末に幸せを掴んだ二人の美しい結末を描いています。二人の物語は、こうして円満な終止符を打ったのです。
ネタバレ
ある日、沈璃と行止が庭で語り合っていると、蛇の妖怪の女性が結婚式の招待状を持って訪ねてきた。彼女は天外天の星を持ってきてほしいと頼む。
沈璃は驚いた。以前、魑魅の毒を解いてもらったこの女性は、結婚などしそうにない自由奔放な印象だったからだ。それに、天外天は封鎖されていて星など手に入らないと心配する。行止は鷹揚に、適当な石で済ませればいいと言う。どうせ誰も天外天の星など見たことがないのだから。
蛇の女性が選んだ相手は、慕子淳という仙術を身につけた人間だった。以前、苻生との争いで偶然彼に助けられ、一目惚れしたのだという。彼女は慕子淳を屋敷に連れて行き、二十年以上も大切に世話をした。しかし、慕子淳は彼女に全く気がない様子だった。蛇の女性は沈璃と行止に悩みを打ち明ける。二十年以上も想いを伝え続けても伝わらないなんて、自分の魅力を疑ってしまう、と。行止は、男は奥手なことが多い、慕子淳もきっと好意を持っているが表現が下手なだけだろう、そうでなければ結婚を承諾するはずがない、と慰める。確信が持てない蛇の女性に、行止は試しに慕子淳に与えてきたものを全て取り上げてみてはどうかと提案する。もしかしたら本心を表すかもしれない、と。
行止は当初、蛇の女性に他の男に心を移したように見せかけて慕子淳を試すよう仕向けたが、沈璃は行止に芝居をさせるのは嫌だと、自ら行止の姿に変身して慕子淳の前で親密な様子を見せつけることにした。最近、蛇の女性が訪ねてこなくなり、優しく接してくれなくなったことに気づいていた慕子淳は、彼女が他の男と親密にしているのを見て嫉妬する。しかし、口では認めようとせず、蛇の女性を罵って立ち去ってしまう。
慕子淳の気持ちを確かめたい蛇の女性は、本心を確かめる手伝いをしてくれたら、行止に厚く礼をすると言う。報酬を約束された行止は、沈璃と共に計画を加速させることにした。少しの刺激では効果がないと判断し、さらに仕掛けることに。
今度は、行止と沈璃はわざと慕子淳の見える場所で親密な様子を見せつけた。蛇の女性が他の男と二股をかけていると勘違いした慕子淳は激怒し、行止に矢を放とうとする。間一髪でかわした行止は、慕子淳の気持ちを確認し、次の計画を実行に移す。碧蒼王に蛇の女性を気絶させ、彼女を殺したと偽装させたのだ。
山から追放されていた慕子淳はこの話を聞きつけ、すぐに駆け戻り、全力を尽くして蛇の女性を救い出す。彼女に怪我がないことを確認すると、安堵のあまり涙を流した。ついに慕子淳の気持ちを知った蛇の女性は、予定通り結婚式を挙げる。感謝の印として、彼女は約束通り古代の玉佩を行止に贈った。玉佩のおかげで行止の体調は回復し、以前の力を取り戻していく。
沈璃は蛇の女性の結婚式に招待され、式を見届ける。その後、行止は沈璃にもこんな結婚式を挙げたいかと尋ねる。以前は結婚式を面倒だと思っていた行止だが、愛する人を皆に知らしめるのも悪くないと思い始めていた。沈璃は感動し、行止の目を見つめながら、お腹が大きくなる前に早く式を挙げなければ、と笑顔で答える。行止は驚きと喜びで涙を流す。数々の困難を乗り越え、ついに実を結んだのだ。これまでの苦労も、今では良い思い出に変わった。
第39話の感想
『与鳳行』最終話となる第39話は、沈璃と行止のこれまでの波乱万丈な道のりを締めくくる、感動的なエピソードでした。特に、蛇の妖怪の女性の恋物語を介して、慕子淳の秘めた想いが明らかになる展開は、心温まるものがありました。一見するとコミカルな試練の数々ですが、そこには真摯な愛情と深い信頼関係が描かれており、読者の共感を誘います。
行止が沈璃に結婚式を提案するシーンは、二人の絆の強さを改めて感じさせ、胸が締め付けられるようでした。困難を乗り越え、結ばれた二人の幸せな未来を予感させる、希望に満ちたラストシーンは、まさに「苦尽甘来」という言葉がぴったりです。また、沈璃の妊娠というサプライズも、喜びを倍増させる演出として効果的でした。
蛇の妖怪の女性と慕子淳の恋物語は、沈璃と行止の物語をさらに引き立てる役割を果たしています。一見すると脇役のロマンスですが、本編のテーマである「愛」を深く掘り下げ、物語全体の奥行きを増しています。行止が蛇の妖怪の女性に助言するシーンからは、彼の知性と洞察力の深さが改めて感じられ、魅力的なキャラクターとして描かれています。