あらすじ

第一話は、百年前に起きた災厄によって人と狐の二つの世界が分かたれたという物語の背景を描いています。乱世を鎮めるため、霊子れいしは自らを犠牲にして尸傀王しくいおうを封印し、天狐の碧川へきせんもまた命を落としました。

物語は現代に舞台を移し、主人公の祁元寶き・げんほうはある出来事をきっかけに、長玥ちょうげつが守る禁断の地へと迷い込み、長玥ちょうげつ心魂しんこんが宿る重要なアイテム「離心果りしんか」を誤って食べてしまいます。この事件が、人と狐の世界を隔てる結界を偶然にも破ってしまうのです。祁元寶き・げんほうと秘密を守るため、長玥ちょうげつは彼女の記憶を消去せざるを得なくなります。

記憶を消されても、祁元寶き・げんほうは夢の中で断片的に当時の情景を思い出します。そんな中、祁元寶き・げんほうは従兄弟と遊びに出かけた際に、彼女を挑発する蘇浅浅そせんせんと遭遇し、衝突が起こります。そして、再び長玥ちょうげつが現れ祁元寶き・げんほうを守ることになります。

ネタバレ

物語は上古時代、人間と狐が共存していた時代から始まる。百年前、災禍に見舞われた人間界を救うため、霊子れいしが自らを犠牲にした。霊子れいしを愛した天狐・碧川へきせんは、月山げつざんに身を投じ殉情。この出来事が魔気を呼び起こし、霊子れいしは自らの肉体で尸傀王しくいおうを封印し、混乱を鎮めた。以来、人間と狐は互いを遠ざけるようになった。

時は流れ、長玥ちょうげつは結界を再開するための離心果りしんかの成熟を待ち、修行に励んでいた。一方、祁元寶き・げんほうは賭場で金を勝ち、寰叔かんしゅくに連れ戻されそうになる。彼女は狐を見たと言い逃し、その場をやり過ごす。

不思議なことに、祁元寶き・げんほうは見知らぬ美しい場所に迷り込む。そこは長玥ちょうげつの隠れ家で、偶然にも成熟した離心果りしんか祁元寶き・げんほうの手に落ちてしまう。離心果りしんかを巡る争いの中、二人は偶然キスをしてしまい、人間と狐を隔てる結界が破られてしまう。

争奪戦で祁元寶き・げんほう心魂しんこんを宿した離心果りしんかを飲み込んでしまう。長玥ちょうげつ心魂しんこんを取り戻そうとするが、祁元寶き・げんほうは何が起こったのか理解できない。そこに何者かが現れ、長玥ちょうげつ祁元寶き・げんほうの記憶を消し、彼女は連れ戻される。

長玥ちょうげつは母に心魂しんこんを人間が飲み込んだことを報告。母は心盤で確認し、心魂しんこんの回収と結界の修復を急ぐよう指示する。記憶を失った祁元寶き・げんほうは、寰叔かんしゅくから今後の行動、特に寿宴での振る舞いに注意するよう忠告される。

記憶は消えても、祁元寶き・げんほうは夢の中で断片的な記憶を見る。長玥ちょうげつ心魂しんこんを探すため人間界へ、祁元寶き・げんほうは従兄弟と街へ繰り出す。街で自分の体験を語る語り部を聞き、祁元寶き・げんほうは4年前の出来事が自身の性格を変えたことに気付く。

祁元寶き・げんほうが外にいると知った蘇浅浅そせんせんは、祁元寶き・げんほうの母を非難しに現れ、口論に発展する。蘇浅浅そせんせんは謝罪を強要されるが、祁元寶き・げんほうを襲おうとした瞬間、長玥ちょうげつが現れ祁元寶き・げんほうを守る。

第1話の感想

第1話は、ファンタジー要素とロマンスの要素が絶妙に絡み合い、今後の展開に期待を抱かせる魅力的な始まりでした。まず、上古時代から始まる壮大な世界観に引き込まれました。人間と狐の共存、そして悲劇的な別れという設定は、物語に深みを与えています。霊子れいしの自己犠牲と碧川へきせんの殉情は、切なくも美しい描写で、二人の愛の深さが伝わってきました。

そして現代へと移り、活発で自由奔放な祁元寶き・げんほうと、クールで神秘的な長玥ちょうげつの出会いは、まさに運命的なものを感じさせます。偶然が重なり、離心果りしんかを巡る争奪戦の中でキスをしてしまうシーンは、コミカルながらも二人の関係性の変化を予感させる重要な場面でした。心魂しんこんをめぐる謎も、物語の核心となる要素として興味深いです。

祁元寶き・げんほうが記憶を失ってしまう展開は、今後の葛藤を生み出す伏線として効果的に機能しています。夢の中で断片的な記憶を見るシーンは、彼女の心の奥底に何かが潜んでいることを暗示しており、ミステリアスな雰囲気を醸し出しています。また、蘇浅浅そせんせんとの対立も、今後の物語における重要な要素となりそうです。

つづく