あらすじ

第29話は、祁元寶き・げんほう薛含玉せつ かんぎょく、そして孫浅浅の三人の関係を中心に、プロポーズ、裏切り、そして悲劇が複雑に絡み合いながら展開していきます。祁元寶き・げんほうは、薛含玉せつ かんぎょくが孫浅浅にプロポーズするためのサプライズを手伝っていました。孫浅浅は薛含玉せつ かんぎょくの古風なプロポーズの演出を少しからかっていましたが、事態は急転直下。祁元寶き・げんほうは体内の尸傀王しくいおうの影響で制御を失い、薛含玉せつ かんぎょくを含む多くの人々を殺害してしまうのです。祁元寶き・げんほうの父もまた、操られている娘を救おうと奔走する中で、この混乱に巻き込まれ命を落としました。

長玥ちょうげつはこの事件に関与しているようで、祁元寶き・げんほうに問いただされると自分の行為を認めましたが、理由については語りませんでした。

祝いのムードに包まれていた祁連山は、この一連の事件によって悲しみに覆われます。特に孫浅浅は、薛含玉せつ かんぎょくの死を知り、深い悲しみに暮れながらも、亡くなった彼との結婚式を挙行することを決意します。薛含玉せつ かんぎょくへの変わらぬ愛を貫くためでした。

ネタバレ

翌朝、祁元寶き・げんほう長玥ちょうげつは両親にお茶を振る舞い、その後、祁元寶き・げんほう薛含玉せつ かんぎょくに付き添い蘇浅浅そせんせんへの贈り物を選びに行った。薛含玉せつ かんぎょく蘇浅浅そせんせんにプロポーズするつもりで、祁元寶き・げんほうは彼の古風なやり方に呆れながらも、花屋へ彼を引っ張っていった。花を見た祁元寶き・げんほうの目は一瞬赤く染まったが、すぐに元に戻った。

花を買って戻った祁元寶き・げんほう長玥ちょうげつを見つけられなかった。父親は自分がもらえる饅頭だと思ったが、長玥ちょうげつへのプレゼントだと知り、少し焼きもちを焼いた。その頃、長玥ちょうげつ祁元寶き・げんほうのためにキッチンで料理を作っていた。祁元寶き・げんほう長玥ちょうげつを見つけると嬉しそうだった。その後、祁元寶き・げんほう蘇浅浅そせんせんに結婚して太ったことを愚痴り、結婚しない方がいいとまで言った。冗談のつもりだったが、まるでノロケのように聞こえ、蘇浅浅そせんせんはうんざりした。

薛含玉せつ かんぎょくはプロポーズの準備を整え、蘇浅浅そせんせんに夜会う時間と場所を伝えた。プロポーズの時を待っていた。しかし、夜、祁元寶き・げんほうは突然目を覚ますと、両目が真っ赤に染まり、まるで操られているかのように部屋を出て行った。その時、薛含玉せつ かんぎょくはプロポーズの準備をしていた。師兄弟たちは彼を応援していた。

約束の場所に来た蘇浅浅そせんせん薛含玉せつ かんぎょくの姿を見つけられなかった。月は雲に隠され、師兄弟たちは祁元寶き・げんほうを見つけて挨拶をしたが、操られていた祁元寶き・げんほうは彼らを皆殺しにしてしまった。それを見た薛含玉せつ かんぎょくは止めようとしたが、祁元寶き・げんほうに喉を掴まれた。薛含玉せつ かんぎょく祁元寶き・げんほうの名前を叫び続け、祁元寶き・げんほうは正気に戻った。彼女は体内の尸傀王しくいおうを抑え込もうとし、自害しようとしたが、薛含玉せつ かんぎょくが彼女の前に立ちはだかった。そして、薛含玉せつ かんぎょくは殺されてしまった。

蘇浅浅そせんせん薛含玉せつ かんぎょくを待ち続け、約束の時間を過ぎた頃、薛含玉せつ かんぎょくが用意した孔明灯が夜空に浮かび上がった。蘇浅浅そせんせんは喜んだ。祁元寶き・げんほうの父親は娘が尸傀王しくいおうに操られているのを見て、身を挺して彼女を救った。祁元寶き・げんほうが目を覚ますと、目の前に長玥ちょうげつが立っており、父親は死んでいた。

激しい雨が降りしきる中、長玥ちょうげつの手にある剣を見た祁元寶き・げんほうは、長玥ちょうげつが父親を殺したと思い込んだ。祁元寶き・げんほうは説明を求めたが、長玥ちょうげつは何も言おうとしなかった。理由はないと言い張る長玥ちょうげつに、祁元寶き・げんほうはなぜ父親を殺したのか問い詰めた。長玥ちょうげつは泣きながら、理由はないと繰り返した。祁元寶き・げんほうは周りの師兄弟たちも殺したのかと問いただすと、長玥ちょうげつ祁元寶き・げんほうを守るため、全てを認めた。

祁連山では、喜事のすぐ後に葬儀が行われた。誰もが祁元寶き・げんほうの父親が長玥ちょうげつに殺されたとは信じられなかった。薛含玉せつ かんぎょくも殺されてしまい、祁元寶き・げんほうは彼との思い出を振り返り、悲しみに暮れた。蘇浅浅そせんせんも部屋で泣き崩れていた。師姉が薛含玉せつ かんぎょくが生前に彼女のために仕立てたウェディングドレスを届けた。それは蘇浅浅そせんせんが一番好きなデザインだった。蘇浅浅そせんせんは涙が止まらなかった。

蘇浅浅そせんせんは愛する人と素敵な結婚式を挙げると言っていたが、薛含玉せつ かんぎょくは来なかった。それでも、蘇浅浅そせんせん薛含玉せつ かんぎょくと結婚することを決意した。たとえ彼が死んでいても。

第29話の感想

第29話は、まさに悲劇としか言いようのない展開でした。幸せの絶頂から奈落の底へ突き落とされるような、あまりにも残酷な結末に言葉を失います。

冒頭は、祁元寶き・げんほう薛含玉せつ かんぎょくの微笑ましいやり取り、そして長玥ちょうげつの手料理と、幸せな日常が描かれていました。特に、薛含玉せつ かんぎょくのプロポーズ準備は、見ているこちらもワクワクするような、心温まるシーンでした。しかし、この幸せな時間は長くは続きません。

祁元寶き・げんほうの体内に潜む尸傀王しくいおうの覚醒、そしてそれに操られた祁元寶き・げんほうによる殺戮。まさか、あんなに優しかった祁元寶き・げんほうが、大切な師兄弟たち、そして薛含玉せつ かんぎょくを手に掛けてしまうとは、想像もしていませんでした。薛含玉せつ かんぎょくの最期は、あまりにも悲痛で、涙が止まりませんでした。祁元寶き・げんほうを庇って命を落とす彼の姿は、まさに愛の極緻と言えるでしょう。

つづく