あらすじ
第四十四話は、行方不明となった聖上の捜索を中心に展開します。皇太子は李必に協力を求め、李必は龍虎軍に常服に着替え潜行での捜索を指示し、東市の暗渠から探索を開始させました。この動きを察知した林九郎は、郭守一を買収し時間稼ぎをさせ、皇太子が聖上を発見し、自分たちの皇太子陥害計画が破綻するのを阻止しようとします。
一方、戸部の書記官である祝慈は、負傷した聖上を助け出しますが、その身分には気づきません。祝慈一家との交流の中で、聖上は民衆の苦しみを目の当たりにし、深く心を打たれ、民生の改善を約束します。しかし、六品官が刺客を送り込んできた際、聖上は自衛のため身に付けていた爆薬を起爆させ、皇太子は逆賊の汚名を着せられてしまいます。
窮地に陥った聖上を、張小敬と龍波が救出しますが、林九郎は皇太子の誅殺を命じ、李必は皇太子を守るため、一時的に身を隠すよう手配します。この一連の出来事は、朝廷内の激しい権力闘争と、皇帝が直面した民衆の真実に衝撃を受け、反省する姿を描いています。
ネタバレ
李必は太子に謁見し、行方不明の聖上捜索への協力を求められました。太子は聖上の安否を気遣い、李必に地図を渡します。李必は寒さから聖上が遠くへは行っていないと分析し、興慶宮、東市、平康坊周辺を龍虎軍に常服で捜索させるよう進言しました。捜索は東市の暗渠から開始されます。
林九郎は太子が平康坊に兵を送ったことを知り、王鉷と共に焦燥感を募らせます。聖上を見つけられれば、太子謀仮の罪状が崩れてしまうからです。林九郎は龍虎軍の郭守一に上元節の贈り物と称して賄賂を送り、捜索の遅延工作を指示します。郭守一は渋々承諾します。
戸部の書記官である祝慈は家族と共に貧民に救援物資を配っている途中、息子・祝玄が道端に倒れている怪我をした老人を見つけます。実はこの老人は六品官に暴行された聖上でした。祝慈は老人に事情を聞かずに自宅へ連れて帰り治療します。聖上は当初警戒していましたが、徐々に心を開いていきます。自分が庶民に助けられたとは夢にも思っていません。
張小敬と檀碁も平康坊で聖上と龍波の黒幕を探しています。郭守一率いる龍虎軍は捜索中、太子親軍を名乗る一隊と遭遇し、共に捜索を進めるよう指示を出します。白い服を著た老人に注意するよう伝えますが、身元の確認は慎重に行うよう命じます。
祝慈の家では、村人たちが聖上をもてなします。聖上は孤児問題や花萼相輝楼の実態など、民衆の苦しみを目の当たりにします。祝玄と天文儀器について語り合い、彼に教育の機会を与えることを約束します。祝慈には民生改善への決意を伝え、彼と息子を正四品戸部侍郎に昇進させることを決めます。
しかし、聖上を襲った六品官は自分の失態に気付き、刺客を送り込みます。祝慈が朝政の問題点を指摘した後、刺客たちは聖上の前に立ちはだかります。間一髪、張小敬が現れ聖上を救出、檀碁は六品官のもとへ向かいます。太子親軍を名乗る一味が聖上を殺そうとした瞬間、聖上は護身用の爆弾で応戦します。最終的に張小敬たちに守られ、安全な場所へ避難します。
事件後、林九郎は偽造した証拠で太子謀仮の罪を著せ、甘守誠に太子殺害を命じます。郭利仕は太子に危険を知らせ、李必は太子に身を隠すよう指示し、逃亡の手配をします。
第44話の感想
第44話は、聖上の逃亡劇とそれを取り巻く様々な思惑が交錯する緊迫感溢れる展開でした。特に印象的だったのは、聖上が市井の人々と触れ合う中で民の真の苦しみを知り、自らの無知を痛感する場面です。これまで高い楼閣から民を見下ろしていた聖上が、祝慈一家との交流を通して初めて民の生活の実態を理解する様子は、彼の内面の変化を鮮やかに描き出していました。
同時に、林九郎の狡猾さも際立っていました。聖上捜索の妨害工作や、偽造証拠による太子陥れなど、彼の冷酷なまでの権力への執著が見て取れます。太子を追い詰める一方で、聖上の生死を軽視するその姿は、真に国を思う者とは一体誰なのかを問いかけているようでした。
つづく