あらすじ
第十話では、李蓉と裴文宣の大婚の夜における会話と行動が描かれ、かつて夫婦だった二人が今や盟友としての関係へと変化していく様子が描かれています。李蓉は裴文宣に対し、蘇容卿への想いと不安を吐露し、秦真真の入宮を阻止したい考えを明かしますが、裴文宣は彼女の提案をやんわりと断ります。
一方、李蓉は上官雅が賭博場「聚財館」にいるのを偶然見かけ、彼女とじっくりと話し合います。そこで、上官雅が家のために犠牲になろうとする覚悟と、これまでの皇后たちとは異なる奔放で自由な気質を持っていることを知ります。
また、皇帝が粛王を利用して士族を支援し、李川に対抗しようとしていること、皇后が李川と上官雅の縁談を画策しているといった政治的な駆け引きも描かれています。李蓉はこれらの出来事の裏に隠された権力闘争、そして弟の李川がその影響で性格が変わってしまったことに気づき、今後の政局の行方を案じます。
裴文宣は李蓉と碁を打ちながら彼女の話を聞き、雲燕公主の運命に触れ、李川が北伐統一を目指す真の動機、つまり李蓉が同じような悲劇に見舞われるのを避けたいという思いがあることをそれとなく示唆します。
ネタバレ
一日の務めを終えた李蓉は、早速寝台に横になった。適当な休息場所のない裴文宣は、眉を寄せながら座っていたが、李蓉に一緒に寝るよう促され、最初は遠慮したものの、現状を鑑みて応じた。
寝台に入る前に、李蓉は裴文宣に蘇容卿を迎えに遣わした理由を尋ねた。裴文宣は、以前蘇容卿に会った際に、彼が李蓉に想いを寄せていると感じたこと、そして李蓉も蘇容卿に好意を抱いていることを知っていたと明かした。李蓉は、蘇容卿が以前のように権力や家門の利益を優先するのではないかと懸念していたが、裴文宣は蘇容卿を李川の味方につけ、二人の復縁を後押しすると約束した。李蓉は秦真真の入宮を阻止する考えを告げたが、裴文宣はそれをやんわりと断った。二人は寝台に横たわり、夫婦ではなくなった今もなお続く二十余年の深い友情を回想した。
一方、李川は秦真真と会い、前線の状況を語り合い、夜が明けるまで話し込んでいた。皇帝は李川への牽製として粛王を傀儡に使い、士族を擁立して世家の勢力を削ごうとしていた。李蓉の助けで難を逃れた李川だが、依然として世家の支持が必要であり、皇后の切り札である上官家は皇帝にとって大きな懸念材料だった。
李蓉は上官雅の太子妃就任を阻止しようと、侍女に彼女の捜索を命じた。上官雅が聚財館にいる可能性を知り、淑やかで礼儀正しいはずの上官雅の意外な行動に李蓉は驚愕した。裴文宣は李蓉の護衛として同行し、道を開きながら、李蓉を自分の妻だと偽った。
聚財館で男装した上官雅を発見するも、彼女は金を撒き散らして逃走、蘇容華の腕の中に飛び込んだ。上官雅は蘇容華を買収しようとしたが、李蓉と裴文宣に見つかってしまう。李蓉の問いかけに対し、上官雅は家門のために犠牲になる覚悟はできていると答えた。
李蓉は、上官雅が記憶の中の陰気な皇后とは違い、活発で自由奔放な様子に気づいた。三人は太子妃問題について話し合い、李蓉は楊家の二の舞になるなと警告したが、上官雅は意に介さず、勝敗は太子次第ではないと主張した。
上官家から四代目となる太子妃が出るという噂が流れ、皇帝は激怒した。皇后は李川に上官雅との結婚を望み、上官雅が太子妃になれば側室を迎えることを許すと約束した。李蓉は皇后を説得しようと宮殿を訪れたが、成果はなかった。宮殿を後にした李蓉は、落胆する弟の姿を見て心を痛めた。
裴文宣は静蘭を通して李蓉の日常を気にかけ、李蓉には知らせないようにと指示していた。李蓉と碁を打ちながら語り合う裴文宣は、雲燕公主の話を持ち出し、李川が北伐で統一を目指すのは、李蓉に同じ轍を踏ませないためだと説明した。天下を手に入れても、李川は多くのものを失ったのだと。
第10話の感想
第10話は、李蓉と裴文宣、そして李川とそれぞれの想いを中心に、複雑に絡み合う人間関係とそれぞれの思惑が描かれた見応えのあるエピソードでした。特に印象的だったのは、李蓉と裴文宣の関係性です。かつて夫婦であった二人は、今は友人として互いを支え合い、深い信頼関係で結ばれています。裴文宣が李蓉のために奔走し、静かに彼女を見守る姿は、切なくも温かいものがありました。二人の間には、恋愛感情とは異なる、特別な絆を感じます。李蓉自身も、裴文宣の支えに感謝しつつ、彼との穏やかな時間を大切にしている様子が伝わってきました。
一方、李川は皇位継承問題や政局の混乱に翻弄され、苦悩する姿が描かれています。秦真真との会話や、皇后との対立を通して、彼の置かれた立場や責任の重さが改めて浮き彫りになりました。李蓉は弟である李川を心配し、彼を支えようと尽力しますが、政治の渦巻く中で思うようにいかないもどかしさも感じられます。
また、上官雅の登場は物語に新たな展開をもたらしました。奔放で自由な彼女の言動は、これまでの登場人物とは異なる雰囲気を醸し出し、今後の展開への期待を高めます。李蓉との対峙や、太子妃問題への彼女の考え方は、今後の物語のキーパーソンとなる可能性を感じさせます。
つづく