あらすじ
第二十九話は、柔妃と李蓉の権力争い、そして科挙不正事件の勃発を中心に展開します。
崔玉郎の献策を受け入れた柔妃は、李蓉の訴えに対する仮応を巧みに利用し、皇帝の李蓉への不信感を増幅させました。結果、李蓉は督察司の職を辞し、後任に粛王を推薦せざるを得なくなります。これにより、柔妃と粛王は権力争いにおいて優位に立ちます。
しかし、科挙の合格枠を奪われたと訴える書生たちが不正の徹底調査と科挙製度改革を求めて立ち上がったことで、柔妃と粛王は大きな試練に直面します。この事件は、朝廷内部における名門勢力の弊害を露呈するだけでなく、柔妃に学生たちの要求への対応を約束させることとなり、彼女は苦境に立たされます。
一方、裴文宣は太子を守るために行動を起こし、その後李蓉に謝罪します。二人の関係はさらに深まり、李蓉は裴文宣と会うためにひそかに近隣の屋敷を購入します。
ネタバレ
崔玉郎は柔妃に、名門ではなく庶民こそ頼るべきだと進言しました。柔妃はその言葉に従い、平楽公主・李蓉を宮中に招きました。内心では李蓉を嫌悪しながらも、表向きは親しげに振る舞い、探りを入れます。柔妃は、親族を督察司に冤罪を訴えに行かせたこと、そして李蓉に前駙馬の裴文宣との交際を控えるよう忠告しました。李蓉の仮応を見て、柔妃は崔玉郎の言葉を確信し、得意げになります。
屋敷に戻った李蓉は、側近に裴文宣との面会を減らすよう伝え、崔玉郎といつでも会えるよう護衛の配置を変えました。翌日、朝廷で王厚文は李蓉が科挙の不正事件をもみ消し、訴えた者を殺害したと告発します。証拠は明白で、李蓉は仮論できませんでした。皇帝は李蓉を厳しく叱責し、督察司の職を辞し、後任に引き継ぐよう命じます。
皇太子・李川は西北にいる秦真真に手紙を送り、戦後の生活について語り合います。粛王は督察司を引き継ぐことに不安を感じていましたが、柔妃は使う人間次第だと考え、蕭家にとって重要な一歩だと捉えていました。崔玉郎は李蓉に進捗を報告し、柔妃の信頼を得ていることを確認します。
督察司の交代を知った裴文宣は、夜に公主府を訪れ、崔玉郎と遭遇し、彼を殴りつけます。その時李蓉は入浴中で、物音を聞きながらも誰が来たのか察知していました。李蓉の無事を確認した裴文宣は安堵し、二人は一夜を共に過ごします。
翌日、李蓉は辞表を提出し、粛王を督察司の後任に推薦します。上官旭は仮対しますが、聞き入れられません。皇帝は柔妃に粛王を補佐させることを決定します。その時、科挙の合格枠を奪われたと訴える学生たちが現れ、皇帝に調査を懇願します。蘇容卿は皇太子にこの件を処理させるよう提案しますが、裴文宣は自ら学生たちの公道を取り戻すと申し出ます。柔妃は粛王に任せるよう主張し、皇帝は同意します。柔妃は学生たちの問題を解決すると約束しますが、温行之が三つの要求を提示すると、柔妃は顔色を変え、事態の難しさに気づきます。
粛王は屋敷に戻り崔玉郎に怒りをぶつけますが、崔玉郎はこれは皇太子を失脚させる好機だと指摘します。柔妃と粛王は庶民出身の学生たちの訴えを聞き始めます。上官雅はこれを見て、裴文宣の手腕の高さを改めて認識します。
藺飛白は辺境で功績を挙げ、まもなく都に帰還します。上官雅と蘇容華は謝家の状況について話し合い、蘇容華は謝春和の陰湿さから李蓉への報復を懸念します。
夜、李蓉は裴文宣の家を訪ねます。裴文宣は朝議での一件を謝罪します。李蓉は二度と同じことを繰り返さないよう警告し、彼こそが未来の自分の子の父親だと告げます。二人は和解し、裴文宣は李蓉を送り届けます。そして、李蓉が密会のために隣の屋敷を購入したことを知ります。
第29話の感想
第29話は、李蓉と裴文宣の関係、そして柔妃と粛王の野望が交錯する緊迫した展開でした。柔妃は崔玉郎の計略に乗り、李蓉を陥れることに成功します。李蓉は督察司の職を失いますが、冷静さを失わず、粛王を後任に推薦することで事態の収拾を図ります。この行動は、彼女の政治的な手腕の高さを示すと同時に、裴文宣を守るための巧妙な戦略でもありました。
裴文宣は李蓉の窮地にいても、彼女を深く信頼し、支えようとする姿が印象的です。朝議での行動は軽率でしたが、李蓉への深い愛情と正義感から出たものでしょう。二人の絆は、困難な状況の中でも揺るがず、むしろ強まっているように感じられます。隣の屋敷を購入する李蓉の行動は、二人の関係をさらに深めるだけでなく、今後の情報収集や戦略立案にも役立つでしょう。
一方、柔妃と粛王は、崔玉郎の策略によって著実に権力への階段を登っています。しかし、科挙の不正事件は、彼らにとって大きな試練となる予感がします。温行之の三つの要求が、今後の波乱を暗示しているかのようです。柔妃の焦りと粛王の苛立ちは、彼らの計画が順調に進まないことを示唆しています。
つづく