あらすじ
第32話は、宮廷内の権力闘争と登場人物たちの複雑な感情関係を中心に展開します。柔妃は息子の皇位を守るため、娘の華楽を通して蕭家に情報を伝え、謀反を企てますが、蕭明は一族の安危を考え、直接応じることなく皇帝に密告します。李川は皇帝の選択を迫られた際、毅然として母と姉の味方につき、家族への揺るぎない愛情を示します。一方、李蓉は転生を経て過去の悲劇を予知し、裴文宣と共に難を逃れようと計画します。皇后もまた我が子のために脱出経路を用意しており、母性愛の偉大さが描かれています。さらに、藺飛白は謝家の支持を得るため政略結婚を検討し、上官雅は一族の利益のために蘇容華への想いを断ち切ります。物語全体を通して、宮廷内外の権力の変遷と登場人物たちの運命の波乱が描かれています。
ネタバレ
柔妃は、迫り来る罰を免れぬと悟り、我が子を思う母を装い、華楽を唆し、自らの計画を実行させようとします。しかし、華楽は李蓉に取って代わり長公主の座を狙っており、柔妃の運命など眼中にもありません。夜陰に紛れ、華楽は柔妃から受け取った令牌を手に、叔父の蕭明の屋敷へ向かいます。
蕭明は、朝廷で要職に就く蕭家の二人の叔父の一人で、もう一人は西北を守る大伯父、蕭肅です。華楽から柔妃の意向を伝え聞いた蕭明は、あまりにも軽率だと考え、より慎重な計画が必要だと判断し、間近に迫った冬嬉を利用することを提案します。この提案に華楽は喜び、これまでの悲しみをすっかり忘れます。
蕭明は、私利私欲のために策略をめぐらす柔妃と華楽を軽蔑しますが、蕭家の運命を考慮し、皇帝にこの件を報告することにします。
李川は皇帝に呼び出され、独り佇む皇帝の姿に不安を覚えます。宦官の福来は、李川が自らの立場を明確にすれば太子位は安泰だと暗に示しますが、李川はそれに気づきません。皇帝は李川の冷淡さに複雑な思いを抱き、李川は皇位争いには興味がなく、母后と姉を守りたい、両親が互いに理解し合えることを願うと告げます。
しかし、皇帝は未来の帝王たるもの、家門の権力争いではなく民の利益を考えるべきだと諭します。皇后が常に一族の利益を優先することに、皇帝は不満を抱いており、李川に自身か皇后か、どちらにつくのか選択を迫ります。李川は迷わず家族への想いは変わらないと答えます。皇帝は背を向け、李川は跪拝した後、その場を去ります。
翌日、早朝。皇帝は突然冬嬉の日程を発表し、廷臣たちを驚かせます。冬嬉では、御林軍、羽林衛、そして四つの城門を守る軍隊、計六軍による軍事演習や競技が行われます。
宮殿から戻った李蓉は、言い知れぬ不安に襲われます。前世の記憶が蘇り、裴文宣、蘇容卿との出来事など、歴史が繰り返されることを恐れます。裴文宣は李蓉を慰め、迫り来る災いから守ると約束します。
李蓉は宮殿に戻り、母后に全てを話し、対策を尋ねます。皇后は宮中に留まる決意をし、李蓉には万一の際に傾州へ逃れるための密道を用意します。
関外から華京に戻った藺飛白は、督察司で李蓉と会います。兵権だけでは謝家に認められないと悟った彼は、上官雅との婚姻を考えています。上官雅は試してみることに同意しますが、李蓉は政治的利益のために愛を犠牲にすることに仮対します。上官雅は家のために蘇容華への想いを断ち切り、二度と会わない決意をします。
物語は佳境に入り、朝廷の情勢は緊迫し、名門一族にも大きな変化が訪れます。李蓉は藺飛白が謝春和に代わり謝家を掌握することを知っています。秦臨は李蓉を助けようと都に戻ろうとしますが、崔清河の裏切りにあい、負傷しながらも逃げ延びます。荀川を見つけられなかった崔清河は、彼の陣営を包囲します。大夏朝の未来は不透明さを増し、李蓉は複雑な状況の中で生き残る道を模索しなければなりません。
第32話の感想
「度華年 The Princess Royal」第32話は、それぞれの登場人物の思惑が複雑に絡み合い、緊張感が高まる展開でした。柔妃と華楽の浅はかな企み、蕭明の冷徹な打算、皇帝と李川のすれ違う親子関係、そして李蓉を取り巻く様々な人間模様が描かれ、今後の展開がますます気になる内容となっています。
特に印象的だったのは、皇帝と李川の対峙です。福来の助言を理解できない李川の純粋さと、冷酷ながらも帝王としての責任を李川に求める皇帝の姿は、悲劇的な運命を予感させます。李川は家族を守りたい一心で行動していますが、それがかえって皇位継承問題を複雑化させているという皮肉な状況が、物語に深みを与えています。
また、李蓉の不安も印象的です。前世の記憶を持つ彼女は、迫り来る危機を誰よりも強く感じ取っています。裴文宣の温かい言葉も、李蓉の不安を完全に払拭するには至らず、彼女の孤独な戦いが続くことを予感させます。
つづく