あらすじ
第十一話では、検死房を中心とした一連の捜査が描かれます。仵作の曹恵は助手・春条と共に、外傷の見られない二体の遺体を検分します。手に残る掻き傷、痣、そして窓の形に似た傷跡を発見し、死後経過時間を推定、死因は強い外力による内臓損傷の可能性が高いと結論付けます。その過程で、曹恵は仕事への過剰な集中と亡き息子への想いが重なり、感情を爆発させてしまいますが、それでも職務を全うしようとします。
今回、曹恵は蘇無名と初めて共同で検死を行います。当初は意見の衝突もありましたが、互いの専門性を認め合い、協力して肋骨の圧迫骨折という重要な証拠を発見します。
一方、馬槐は娄青苔殺害の罪を自首します。その動機は師である独孤羊を守るためでしたが、事件はより複雑な背景を持つことが明らかになります。蘇無名は持ち前の推理力で事件に介入し、更なる真相究明に乗り出します。
これらの展開に加え、曹恵の亡き息子への想い、馬槐の独孤羊への敬愛など、登場人物たちの複雑な感情や過去が織り交ぜられ、物語に深みを与えています。
ネタバレ
薄暗い検死房の中、仵作の曹恵は二体の遺体を検分していた。頭部に外傷や毒の痕跡は見られない。助手の春条が、曹恵の観察結果を一つ一つ記録していく。その時、春条は両方の死者の手に明らかな掻き傷と痣があることに気づき、驚愕する。
盧凌風、蘇無名らも検死の様子を見守る。重苦しい空気が部屋を支配する中、曹恵は死者たちの体に窓のような形の傷があり、強い外力による衝撃を受けたと指摘。さらに、体内の淤血、裂けた衣服についても言及し、死亡推定時刻は前日の亥の刻ごろだと推断した。
その時、春条は部屋の隅にいる老婦人の様子がおかしいことに気づく。老婦人はうつろな目で何かを呟き続けている。一方、仕事に没頭し、感情が高ぶった曹恵は、息子を呼んで自分の代わりに仕事をさせようとするが、息子が既に亡くなっていることを忘れていた。周囲からその事実を告げられると、曹恵は悲しみに暮れ、泣き崩れる。しかし、彼女は責任感の強さから、泣きながらも検死を続けようとする。春条はそんな曹恵の姿に胸を締め付けられながらも、敬意を抱く。
過労のため、曹恵はついに倒れてしまう。魯二の兄は、一体の遺体が弟だと確認する。盧凌風はもう一体の遺体の首に外傷がないことから、絞殺されたと判断する。啞女が遺体確認に訪れ、馬老板はその様子を見て顔色を変え、急いで店の掌櫃たちを集めて対策を協議する。一方、目を覚ました桜桃は蘇無名の身を案じる。啞女は裴喜君 に助けを求め、兄の無念を晴らしてほしいと訴える。
その後、馬槐が自首し、娄青苔を殺害したことを認める。理由は彼女が独孤羊に危害を加えるのを恐れたためだという。彼は賄賂を否定し、独孤羊を恩師と呼び、事件はさらに複雑化する。名探偵として知られる蘇無名は、夢の中でも事件を解くという。独孤遐叔は春山、董老板、牛大名の三人を容疑者として挙げる。盧凌風はさらなる証拠が必要だと考え、長期戦を覚悟する。
牛大名が釈放されたと知った蘇無名は、急いで記録を調べようとする。その時、曹恵が検死のためにやって来て、二人は検死方法をめぐって意見が衝突する。しかし、蘇無名が自ら検死を行うと、その集中力と専門知識に曹恵は感服する。検死の過程で、蘇無名は肋骨が圧迫されて骨折していることを発見し、曹恵の結論と一緻。二人は互いの能力を認め合う。
蘇無名は盧凌風から、馬槐が盗掘によって両親を失ったという話を聞く。しかし、馬槐は恨みを抱くどころか、独孤羊の技術を学ぼうと誌したという。師弟の絆は深く、独孤羊は妻にサプライズをしようと貯金していたが、葉わなかったという。
これらの話を聞いた春条は、後悔の念に駆られ、涙が止まらない。曹恵は嫁である春条に、公の場で取り乱さず、家風を守るように諭す。春条は悲しみをこらえながら話を聞き続ける。曹恵は過去を思い出し、息子が遺体を持って検死を頼みに来た時のことを語る。その時の息子の様子が少しおかしかったこと、検死後に詳しく調べるように言われたことなど、今になって不審に思う点を語り始める。
第11話の感想
第11話は、重苦しい雰囲気と切ない人間ドラマが交錯する、息詰まる展開でした。曹恵の息子を失った悲しみと、それでも職務を全うしようとする強い責任感には、胸を打たれました。泣き崩れながらも検死を続けようとする姿、そして、息子との過去の思い出を語るシーンは、彼女の深い悲しみと母としての愛情を強く感じさせ、涙を誘います。
また、馬槐の自首と、その背景にある独孤羊との師弟愛も印象的でした。盗掘で両親を失いながらも、恨むことなく恩師を慕う馬槐の姿は、複雑な人間心理を描き出しています。独孤羊が妻のために貯金していたというエピソードも、彼の温かい人柄を偲ばせるものでした。
事件の真相は依然として謎に包まれており、蘇無名と曹恵の協力による検死シーンは緊迫感に満ちていました。二人のプロフェッショナルとしてのプライドと、わずかに芽生え始めた信頼関係が垣間見えるのも、見どころの一つです。
つづく