あらすじ

第三十話は、寒生かんせい春妖しゅんようの愛が大きな試練に直面する物語です。二人は九幽冥王きゅうゆうめいおうに謁見し、寒生かんせいがこの世界に留まるためには魅霊になる必要があることを告げられます。しかし、それは終わりのない生死の輪廻の苦しみを味わうことを意味していました。それでも、寒生かんせい春妖しゅんようと満月の夜に結婚式を挙げ、共に九幽冥王きゅうゆうめいおうから授かった酒を飲み、永遠に一緒にいることを誓います。

しかし、春妖しゅんよう寒生かんせいにそんな苦しみを味わわせたくないと思い、婚礼の後、密かに水魄を寒生かんせいに与えます。その結果、寒生かんせいは全ての記憶を失い、自由の身となりますが、春妖しゅんよう自身は命の危険にさらされることになります。

その後、春妖しゅんよう司卯しぼう寒生かんせいを南淵国へ送り届け、和親を進めるよう手配します。波乱のない未来を寒生かんせいに送ってほしいと願ってのことでした。目覚めた寒生かんせいは自分が南淵国へ送られたことに気づきますが、以前の夢の記憶は曖昧で、既に消え去っていました。

一方、春妖しゅんようは百霊潭の場所を変え、寒生かんせいが後々自分を訪ねて来られないようにします。それは、寒生かんせいへの深い愛情と、自らの犠牲を物語っていました。

ネタバレ

春水しゅんすい仙人が連れてきた異世界の寒生かんせいは、九幽冥王きゅうゆうめいおうに会う。冥王は、寒生かんせいがこの世界に留まるには魔物となり、夜に蘇り百日で死ぬという苦しみを永遠に繰り返さねばならないと告げる。冥王は寒生かんせいにそのための酒を与え、満月の夜に飲めば願いが葉うと言う。春妖しゅんようはそんな苦しみを寒生かんせいに味わわせたくないと願うが、寒生かんせい春妖しゅんようを失いたくない一心で、満月の夜、結婚の祝いの酒としてその酒を使うことにする。

百霊潭に戻った寒生かんせいは、二人の愛の物語を書き、本として売る。妖たちは興味津々で、春妖しゅんようは皆に、これは物語ではなくもうすぐ現実になると語り、満月の夜に寒生かんせいと結婚することを宣言する。

結婚式の日、春妖しゅんよう寒生かんせいにご馳走を用意し、寒生かんせい春妖しゅんように、孔澜こうらん烏裳うしょうにする以上に自分を甘やかしてほしいと頼む。春妖しゅんようは全てを受け入れ、二人は冥王の酒を飲み、永遠の愛を誓う。

しかし、寒生かんせいが眠ると、春妖しゅんようは密かに冥王の元を訪れ、寒生かんせいに苦しみを与えたくないため、冥界の水で春妖しゅんようの記憶を消してほしいと頼む。春妖しゅんようは眠る寒生かんせいに自分の水魄を与え、自由になれるようにする。自分の命が縮むことも厭わず。

外で待つ司卯しぼうに、春妖しゅんようは不老不死の薬を懷安かいあんに渡したことを伝え、懷安かいあんは退位後、皇位を霊均れいじゅんに譲ると言う。司卯しぼうは翌朝、寒生かんせいを連れていくことになっていた。春妖しゅんようは別れを惜しみつつ、寒生かんせいを幸せにするよう司卯しぼうに釘を刺す。

翌朝、目覚めた寒生かんせいは馬車の中で、南淵国へ和親に向かう途中だと知る。長い夢を見た気がするが、内容は思い出せない。春妖しゅんようは去っていく寒生かんせいを見送り、孔澜こうらんに百霊潭の場所を変えるよう頼む。寒生かんせいが思い出して戻ってこないように、そして、平穏な幸せを掴めるようにと願うのだった。

第30話の感想

「悠久の縁~百霊潭~」第30話は、切なくも美しい愛の物語で幕を閉じました。春妖しゅんよう寒生かんせいの結婚式は、二人のこれまでの苦難を乗り越えた喜びに満ち溢れ、見ているこちらも幸せな気持ちに包まれました。寒生かんせい春妖しゅんように甘える様子、春妖しゅんよう寒生かんせいの願いを全て葉えようとする姿は、まさに理想の夫婦と言えるでしょう。

しかし、その幸せの裏には、春妖しゅんようの深い愛情と犠牲が隠されていました。永遠に続く苦しみから寒生かんせいを救うため、自らの命を削り、記憶を消す選択をした春妖しゅんよう。彼女の涙は、視聴者の胸を締め付けました。冥王との取引、そして司卯しぼうとの約束。全ては寒生かんせいの幸せのために行われた行動でした。春妖しゅんようの無償の愛は、まさに感動的です。

一方、記憶を失い、南淵国へ和親に向かう寒生かんせい。彼女の表情には、どこか寂しさが漂っていました。まるで、大切な何かを忘れてしまったかのような、そんな切ない表情でした。春妖しゅんようとの思い出を失ってしまったことは悲しいですが、新たな人生を歩む寒生かんせいにも幸せになってほしいと願わずにはいられません。

つづく