あらすじ

第四十一話は、比翼族の姫・橘諾きつだくの処刑を中心に展開します。罪を犯した橘諾きつだくは、神宮の霊梳台にて斬首刑に処されることになり、処刑人は比翼鳥族の聖物である白虎刀を用いることになっていました。前世で橘諾きつだくと婚約していた沉晔ちんようは、彼女を救おうと試みます。その最中、阿蘭若あらんじゃくが現れ、自らの血で白虎刀に封じられた霊獣を鎮めることで橘諾きつだくを助けます。この一件で相里闕は沉晔ちんようを罰しようと考えますが、阿蘭若あらんじゃく沉晔ちんように自分の屋敷で剣を鋳造させることを提案し、それが認められます。傾画けいが夫人は助けを求めますが叶わず、沉晔ちんように相談を持ちかけます。一方、息沢に姿を変えた東華帝君とうかていくん橘諾きつだくへの嫌悪感を露わにします。

処刑当日、沉晔ちんようは再び現れ橘諾きつだくを救おうとしますが、今回は阿蘭若あらんじゃくに扮した白鳳九はくほうきゅうが自らの血で白虎刀を鎮め、気を失ってしまいます。そして、この騒動が緲落びょうらくの耳にも入ります。全てを目撃していた東華帝君とうかていくんは、意識を失った白鳳九はくほうきゅうを連れ去り、白鳳九はくほうきゅうの体内の魔力を奪おうとする緲落びょうらくを阻止します。

その後、目を覚ました白鳳九はくほうきゅうは、誤って氷棺の中に安置されていた自身の額にある鳳羽の花に触れてしまい、光となって吸い込まれてしまいます。

緊迫した展開と登場人物たちのやり取りを通して、複雑に絡み合う関係性とそれぞれの運命が描かれた第四十一話でした。

ネタバレ

皆如かいじょが言ったように、四月は殺伐の気運が強い月。梵音穀は俗世から遠く離れているとはいえ、今年の四月は殺気が漂っていた。橘諾きつだくは翼族の公主であり、処刑の場所は神宮の霊梳台に定められた。見届け人は一族の者に限られ、彼女の処刑は記録され、後世に伝えられることとなる。処刑に用いる刀は白虎刀という翼族の聖物で、まず罪人の血で刃を開き、双翼の霊獣「白額虎」を放つ。白額虎は罪人の血肉と魂を喰らい、魂を刀の中に閉じ込めて、長年輪廻転生を阻むのだ。

前世で沉晔ちんよう橘諾きつだくと婚約していたため、処刑の際に彼女を救おうとした。その際、白額虎に襲われ瀕死の重傷を負うが、阿蘭若あらんじゃくが駆けつけ、自らの血で刀を鎮め、霊獣を刀の中に封じ込めた。相裏闕は他に術がなく、橘諾きつだくを庶民に落とし、沉晔ちんようを職務怠慢の罪で天界に訴え、岐南神宮から追放することにした。阿蘭若あらんじゃく息澤そくたくの名を借り、沉晔ちんようを自分の屋敷に滞在させ、九重天の太子に献上する剣を鋳造させるよう相裏闕に頼んだ。

蘇陌葉そはくようが感慨深く語ると、白鳳九はくほうきゅうはため息をついた。助けたい気持ちはあるものの、阿蘭若あらんじゃくが素手で白虎刀を握ったと聞き、恐れを抱き、痛みを恐れて練習を躊躇していた。一方、傾画けいが夫人は相裏闕に嘆願するも葉わず、自ら沉晔ちんようを訪ね、橘諾きつだくの救出を相談した。沉晔ちんようが迷っていると、師である息澤そくたくが窓の外に立っているのを見つける。教えを請おうと息澤そくたくの元へ向かうが、東華が化けた息澤そくたくは意外にも冷淡で、橘諾きつだくの話には嫌悪感を示した。

処刑の日、橘諾きつだくは白い衣を纏い、壇上に跪いていた。罪を負ってはいるものの、高貴な生まれのためか、死を恐れず、王族としての風格を漂わせていた。聖刀裁刑の書には、聖刀が出た後、魂が離れる前に刀の中の虎を封じ込めれば罪を赦免されると記されている。

沉晔ちんようはいつものように現れ、すべては前世と同じように進んでいた。彼が白額虎と戦い、互いに傷を負う。前世と同じであれば、この危機に阿蘭若あらんじゃくが助けに入るはずだった。しかし、夢に異変が生じた。白鳳九はくほうきゅう阿蘭若あらんじゃくとして自らの血で刀を鎮めたが、妙義淵の緲落びょうらくを目覚めさせてしまい、自身の体力も尽き果て、気を失ってしまう。緲落びょうらくはかつて東華帝君とうかていくんとの戦いで人間界に元神の一部を残していたが、その赤い気が阿蘭若あらんじゃくの夢の中に現れたのだ。緲落びょうらくはすぐに化身でそこへ向かった。

東華は処刑を見物していたが、白鳳九はくほうきゅうが現れるとすぐに飛び上がり、蘇陌葉そはくようを叱責するのも忘れて彼女を抱えてその場を去った。水月潭を通ると、緲落びょうらくが氷の棺から白鳳九はくほうきゅうの本体を取り出し、体内に残る魔力を奪おうとしているところだった。東華は「阿蘭若あらんじゃく」を大きな岩陰に置き、剣を手に緲落びょうらくを阻止し、白鳳九はくほうきゅうの本体を無事に棺に戻した。

緲落びょうらくは計画が失敗に終わり、悔しさから全力で東華と戦った。その時、白鳳九はくほうきゅうが目を覚まし、既に包帯が巻かれた右手を見ながら蘇陌葉そはくように文句を言っていた。辺りを見回すと、水月潭に辿り著き、氷の棺の中の白鳳九はくほうきゅうの本体を見つける。記憶を失っていた白鳳九はくほうきゅうは、自分とそっくりな姿と額の赤い鳳羽花を見て、思わず手を伸ばそうとした。しかし、額に触れる前に、全身が金色の光となって鳳羽花に吸い込まれ、輝き始めた。

第41話の感想

第41話は、まさに息詰まる展開の連続でした。アラン若の夢の中で繰り広げられる物語は、いよいよ佳境に入り、様々な伏線が複雑に絡み合い、目が離せません。

まず、橘諾きつだくの処刑シーン。高貴な生まれにも関わらず、死を前にしても毅然とした態度は、彼女の芯の強さを際立たせていました。そして、彼女を救おうとする沉晔ちんようの必死の姿。二人の悲恋は、見ているこちらも胸が締め付けられるようでした。

白鳳九はくほうきゅうがアラン若として、自らの血で白虎刀を鎮めるシーンは、まさにクライマックス。しかし、その行動が妙義淵の緲落びょうらくを目覚めさせてしまうとは、予想外の展開でした。緲落びょうらくの登場により、物語はさらに混沌とした状況へと陥っていきます。

つづく