あらすじ

第一話では、北宋仁宗そうじんそうの時代、李氏が四人の娘を連れ汴京を訪れ、嫁いだ次女の福慧ふくえ の様子を見に行く物語が描かれています。初めて汴京に来た娘たちは、都の華やかさに驚きながらも期待に胸を膨らませ、李氏は娘たちに良い縁談を見つけてあげたいと願っていました。しかし現実は厳しく、福慧ふくえ は表向きは幸せな結婚生活を送っているように見えましたが、夫の範良翰はんりょうかん が遊郭に入り浸っていることに深く傷ついていました。実家が訪ねてきた際も、福慧ふくえ は姿を隠してしまい、それがきっかけで家族間で衝突が起こります。その後、柴安しばやすという有力者が福慧ふくえ範良翰はんりょうかん の浮気を信じ込ませ、怒りに駆られた福慧ふくえ は長刀を手に詰め寄りますが、事実は違っていました。こうした出来事を通して、家族一人ひとりの悩みや矛盾が明らかになり、複雑な人間模様が浮かび上がっていきます。最終的に、李氏一家は宿屋に落ち着きますが、家族そしてそれぞれの運命の波乱は、まだ始まったばかりでした。

ネタバレ

宋仁宗そうじんそう時代、活気あふれる汴京で、洛陽の富豪・酈娘子は四人の娘、壽華じゅか康寧こうねい、好徳、楽善を連れ、嫁いだ次女・福慧ふくえ を探しにやって来た。

太平車で汴京に著いた朝、姉妹たちは福慧ふくえ との再会に備え身支度を整えていた。好徳は旅の疲れからか、母に贅沢をさせてもらえず、駕籠で来ればよかったと文句を言う。楽善は好徳のうるささに辟易し、壽華じゅかは二人を見て、寝ている時だけが静かだと笑う。

窓の外の華やかな人々を見て、姉妹たちは羨望の眼差しを向ける。酈娘子は福慧ふくえ に会って汴京に落ち著いたら、娘たちに良い縁談を見つけようと心に誓う。しかし、一見幸せそうな福慧ふくえ は、夫・範良翰の女遊びに悩まされていた。

一方、役人の柴安しばやすは友人と範良翰と酒楼で宴を開いていた。いつもと様子の違う範良翰の顔には、福慧ふくえ に殴られた跡があった。柴安しばやす福慧ふくえ の元へ行き、問いただそうとする。

酈娘子たちは範家に到著するが、福慧ふくえ は会おうとせず、使用人は留守と嘘をつき、酈娘子たちを追い返そうとする。怒った酈娘子は使用人に平手打ちを食らわせる。

福慧ふくえ は悲しみに暮れ、柴安しばやすは馬で酈娘子たちの太平車とすれ違うが、互いに気づかない。夜、柴安しばやすは範良翰の部屋に女物の服を置き、福慧ふくえ に範良翰が浮気をしていると吹き込む。怒った福慧ふくえ は刀を持って範良翰の部屋へ乗り込むが、そこにいたのは柴安しばやすだった。柴安しばやす福慧ふくえ の嫉妬深さを叱責する。恥をかいた福慧ふくえ は家を飛び出す。こっそり見ていた範良翰は、福慧ふくえ が出て行った後、ようやく部屋から出てくる。柴安しばやすは範良翰の行いを厳しく咎める。

酈娘子たちは宿を見つけ、康寧こうねいがいなくなっていることに気づく。康寧こうねい福慧ふくえ の様子がおかしいと察し、範家を訪ねていた。福慧ふくえ康寧こうねいに悩みを打ち明け、康寧こうねい福慧ふくえ を宿へ連れて帰る。家族に事の次第を話した福慧ふくえ は、康寧こうねいに範良翰を懲らしめてもらうことにする。

翌日、範良翰は福慧ふくえ が戻ってきたと聞き、病気のふりを装う。福慧ふくえ は見破り、使用人の提案で偽の童子尿を使って範良翰を懲らしめる。福慧ふくえ は姉妹たちと笑い合い、自信を取り戻す。

梁俊卿りょうしゅんけいたちは酈家の娘たちの美貌を覗き見ようとして、康寧こうねいと楽善に懲らしめられる。柴安しばやす康寧こうねいに近づくため、わざと彼女の冠を壊し、康寧こうねいの美しさに惹かれる。酈娘子は娘たちと寺へ縁結びの祈願に行く途中、貢ぎ物を盗もうとする男に出会う。男の娘が貧しさのあまり嫁げないと聞き、酈娘子は貢ぎ物を男に渡す。しかし、男は貢ぎ物が粗末だと酈娘子の娘たちが嫁にいけないと呪い、酈娘子は気を失ってしまう。

第1話の感想

「五福の娘たち」第1話は、賑やかな汴京の街並みと個性豊かな姉妹たちの登場で、一気に物語の世界に引き込まれました。特に、太平車での姉妹のやり取りは、それぞれの性格が鮮やかに描かれていて、今後の展開への期待が高まります。長女・壽華じゅかの穏やかさ、好徳のわがまま、楽善の冷静さ、そして康寧こうねいの機転の良さなど、それぞれの個性が物語に彩りを添えています。

福慧ふくえ の抱える苦悩も印象的でした。一見華やかな生活を送っているように見えて、実は夫の女遊びに心を痛めている。そんな彼女の葛藤が、見ている側にも切実に伝わってきました。夫・範良翰の軽薄さも際立っており、今後の二人の関係がどうなるのか、目が離せません。

また、柴安しばやすの登場も物語に波乱を巻き起こしそうです。福慧ふくえ を叱責する場面では、彼の正義感と厳しさを感じさせました。一方で、康寧こうねいに一目惚れする様子からは、お茶目な一面も垣間見え、今後の彼の行動にも注目したいところです。

貢ぎ物を盗もうとする男との出会いは、酈娘子の優しさと同時に、世の中の理不尽さを浮き彫りにしています。娘たちの幸せを願う母の思いが、逆に不幸を招いてしまう皮肉な展開に、胸が締め付けられました。

つづく