楊家の騒動は、楽善の機転によって収束した。彼女は楊徳茂ようとくもに対し毅然とした態度で、楊珠娘ようしゅじょう江朝宗こうちょうそう夫婦の悪行を糾弾し、更なる災いを起こせば容赦しないと警告。そして、意識を失ったふりをしてその場を収めた。皆は彼女に悪霊が取り憑いたと思ったが、楊羨は楽善の芝居を見抜いていた。彼はわざと犬の血で“除霊”し、姑の羅氏らしに気を付けるよう忠告した。

翌日、案の定羅氏らしは楽善を咎めようとしたが、楽善は準備万端で羅氏らし銀瓶ぎんぺいの両親の家に連れて行き、張家の詐欺の証拠を突きつけた。羅氏らしは態度を軟化させ、なぜ楊羨をかばうのかと尋ねた。楽善は楊婕妤ようしょうよとの約束、つまり楊家の安泰と名声を守り、楊羨を更生させることを誓ったと明かした。そして、羅氏らしから家計を握る印鑑を預かり、楊羨の浪費を阻止した。

楊珠娘ようしゅじょう楊琬娘ようえんじょうは、羅氏らしが楽善を懲らしめると思っていたが、予想外の展開に困惑した。一方、家計を握られた楊羨は、楽善に毒薬を飲んで脅迫したが、楽善は屈せず彼に薬を飲ませた。酈娘子の使いで瓊奴けいどが見舞いに訪れ、夫婦円満を勧めた。楽善は表面上は同意したが、内心では別の計画を練っていた。

日々の暮らしの中で、楊羨は楽善の明るく活発な性格に惹かれ、彼女と一生を共にしたいと強く願うようになった。彼はどうすれば結婚してもらえるかと尋ね、楽善は三つの試練を課した。楊羨は喜んで受け入れ、楽善は月に誓い、もし誓いを破れば孤独な老後を送ると宣言した。楊羨は半信半疑ながらも喜び、二人は別々の布団で眠りについた。

夜更けに楽善が庭を散歩していると、何者かの密談を耳にし、汗拭いを拾った。玉簪ぎょくさんは密会の可能性を疑い羅氏らしに報告しようとしたが、楽善は静観するように指示した。翌朝、楽善は楊羨に龍舟競漕の前に行われる獅子舞大会の話を持ち出し、優勝することが最初の試練だと告げた。

江朝宗こうちょうそうはこの機会に楊羨を亡き者にしようと企んだが、楊珠娘ようしゅじょうに仮対された。彼は楊羨を懲らしめるだけだと弁解した。楊羨は試練に合格するため、高所恐怖症を克服しながら梅花樁で猛練習に励んだ。友人の趙梁成ちょう りょうせいは心配し、楽善も心を痛めた。

大会当日、皇帝と楊婕妤ようしょうよが観戦に訪れた。太鼓奏者が急病で倒れたため、楊羨は楽善を挑発して一緒に参加させ、酈娘子も応援した。しかし、競技中、楊羨は何者かに襲われ重傷を負った。それでも彼は歯を食いしばり、見事優勝した。試合後、黄組の不正が疑われ、江朝宗こうちょうそうは隠蔽工作を試みたが、楊羨たちの追及により、靴に隠した刃物が発見された。激怒した楊羨は江朝宗こうちょうそうを叱責し、楽善と共に皇帝に謁見した。江朝宗こうちょうそうは恥をかき、笑いものになった。

第32話の感想

第32話は、楽善の機転と行動力、そして楊羨の変化が際立つエピソードでした。楊家の内紛を巧みに収め、姑の羅氏らしをも味方につける楽善の手腕は見事。嘘の気絶で騒動を鎮める場面は痛快で、楊羨とのやり取りも軽妙で面白く、見ていて飽きさせません。

特に印象的だったのは、楽善が羅氏らしを説得するシーン。楊家の安泰と楊羨の更生を願う彼女の真摯な言葉は、羅氏らしの心を動かし、家計を任される結果へと繋がりました。一見強引に見える楽善の行動も、実は緻密な計算に基づいていることが分かります。楊羨への三つの試練も、彼を試すだけでなく、共に成長していくための布石と言えるでしょう。

一方、楊羨も少しずつ変化を見せています。楽善に惹かれ、彼女と共に生きようと決意する姿は、これまでの放蕩息子とは別人のよう。試練を乗り越えようと努力する姿にも好感が持てます。高所恐怖症を克服するために梅花樁で練習するシーンは、彼の本気度が伝わってきました。

しかし、江朝宗こうちょうそうの悪巧みは止まりません。獅子舞大会での卑劣な妨害は、見ていて腹立たしい限り。楊羨の怪我の具合が心配です。今後、楽善と楊羨の関係がどう進展していくのか、そして江朝宗こうちょうそうの企みをどう乗り越えていくのか、今後の展開が非常に楽しみです。

つづく