獅子舞の騒動は皇帝の耳に入り、楊羨と楽善は呼び出された。楽善は皇帝に対し臆することなく、誰かが故意に争いを起こし、乱闘になったと説明した。皇帝は楽善の言葉を聞き、怒るどころか大笑いし、彼女の勇敢さを褒め、犯人を厳罰に処すことを約束した。
楊家に戻ると、楽善は楊羨の腰の傷を自ら確認し、怒りと心配の入り混じった気持ちになった。そこへ趙梁成が駆けつけ、獅子舞騒動の裏側を説明した。白礬楼が賭博を開帳し、多くの高官が金を賭けていたため、今回の事件が起きたという。そして、高所からの刃物による襲撃は、楊羨を狙った計画的な犯行であり、黒幕は既に姿をくらましていた。
楊羨が最初の試練を乗り越えると、楽善はすぐに第二の試練を与えた。それは、庭で見つけたハンカチの持ち主と、その背後にある理由を三日以内に突き止めることだった。楊羨はハンカチの刺繍に見覚えがあったため、屋敷の使用人たちを集め、楽善が百家の衣を作りたいと言い、布に吉祥模様を刺繍するように指示した。しかし、多くの刺繍が集まったにもかかわらず、問題のハンカチと価たものは一つもなかった。
酈家の姉妹はこの件についてそれぞれ意見を述べ、楊羨が手強い妻をもらったとからかった。調査を進めるうちに、楊羨は継母の陳孝姑がハンカチの持ち主ではないかと疑い、百家の衣の縫製を手伝ってくれるよう頼んだ。この行動に楊頤は怒り、楊羨が自分の母親を召使いのように扱っていると非難した。楊羨がハンカチを見せると、陳孝姑は保身のため、楊頤が使用人と密通していると嘘の告発をした。楊頤はこの濡れ衣を受け入れざるを得なくなった。
それでも楊羨は楊頤がそんなことをする人間ではないと信じていた。一方、江朝宗は楊琬娘を脅迫し、自分に協力するよう迫っていた。楊琬娘は仕方なく楽善に会い、楊頤を許してほしいと懇願し、祠堂で楊頤と会うよう仕向けた。
その夜、楽善は約束通り祠堂へ向かったが、何者かに迷香で気を失わされた。外には待ち伏せしていた男たちがおり、祠堂に火を放った。知らせを聞いた楊羨は、火の中に飛び込んで楽善を救出した。幸いにも楽善は無事であり、二人は抱き合った。
実は、陳孝姑は江朝宗に唆され、楊家の財産を狙っていた。そして、楊頤の本当の出自は外から来た子であり、この秘密を知っているのは江朝宗だけだった。江朝宗は楊頤の死を利用して楊羨を排除しようとしていた。陳孝姑はためらったものの、結局は利益に目がくらんでしまった。楽善は異変に気付き、機転を利かせて火事から逃れ、楊羨と協力して江朝宗の陰謀を暴いた。最終的に江朝宗は楊徳茂の命令で捕らえられた。
その後、羅氏は楊樹生に江朝宗の部屋を捜索させ、ある箱を発見した。中には楊琬娘の秘密が隠されていた。彼女はかつて密かに子供を産んだが、その子は夭折しており、このことを江朝宗にずっと脅迫材料として使われていたのだ。楊羨は姉の秘密を守ることにした。
しかし、宮廷から悲しい知らせが届いた。皇后が誰かと争い、巻き込まれた楊婕妤は道観に送られ、修行することになった。楊家はこの事件の責任を問われ、財産を全て没収され、一家は路頭に迷うことになった。そんな窮地に陥った楊家を、酈娘子が救いの手を差し伸べ、隣の小さな家に住まわせることにした。
第33話の感想
第33話は、まさに怒涛の展開でした。獅子舞の騒動から始まり、楊羨への襲撃、楽善の機転、そして祠堂の火事と、息つく暇もないほどの出来事が次々と起こり、ハラハラドキドキさせられました。
特に印象的だったのは、楽善の勇敢さと知性です。皇帝の前での堂々とした態度、楊羨への深い愛情、そして江朝宗の陰謀を見破る鋭さ。まさに理想の女性像と言えるでしょう。火事のシーンでは、彼女の機転と勇気によって危機を脱することができ、安堵すると同時に、彼女の強さに改めて感銘を受けました。
一方、陳孝姑の豹変ぶりには驚愕しました。楊家の継母として、これまで温厚な人物として描かれてきましたが、今話では江朝宗に唆され、楊家を陥れる悪女へと変貌を遂げました。利益のために家族を裏切る姿は、人間の弱さ、恐ろしさを改めて感じさせます。
そして、楊家の窮地。せっかく皇帝の信頼を得て、順風満帆に見えた楊家でしたが、宮廷内の争いに巻き込まれ、全てを失ってしまうという悲劇的な結末。あまりにも理不尽な仕打ちに、胸が締め付けられる思いでした。しかし、そんな中でも酈娘子が手を差し伸べるシーンは、温かい光が差し込んだように感じました。苦境の中でも、人との繋がり、助け合いの大切さを改めて感じさせてくれる感動的な場面でした。
つづく