楊羨は3年間、江朝宗こうちょうそうの行方を捜索し続け、ついに奸臣・崔謂之さいいちに仕えていることを突き止めた。復讐の機会を伺う楊羨。一方、楽善は招親会を欠席したことで酈娘子れきろうしに叱責される。謝罪した楽善は、投げた繡球が通りすがりの男と折淙おりしょう少将軍に拾われたことを知る。杜仰熙とようきから折家の家柄を聞き、酈娘子れきろうしから折家との結婚を急かされる。

折淙おりしょうは養母・劉夫人りゅうふじんと弟の折闵せつびんと話していたところ、酈家に関する知らせが届き、顔色を変えて部屋を出ていく。折闵せつびんは酈家と何か関係があると察する。折淙おりしょうは酈家を訪ねようとするが、ちょうど楽善も春来しゅんらいを連れて折家に向かう途中、楊家に連れ去られてしまう。

男装した殷瑶いんようは楽善に熱心に言い寄り、たくさんの宝石を贈り、妻に迎えようと庭園を案内する。庭園では楊羨が使用人に花を植えさせており、屋敷を整備して楽善を迎え入れる準備をしていた。3年ぶりに楊羨と再会した楽善は複雑な心境で、汴京にいながら会いに来なかったことに腹を立てる。殷瑶いんように楊羨を知っているか聞かれるが、楽善は知らないふりをする。

折淙おりしょうは楊家に駆けつけ楽善を救出する。楽善は折淙おりしょうの宝剣・転魄を借りて金の杖を切り、二人の関係に終止符を打つ。その後、折淙おりしょうは楽善の駕籠に乗り込むが、痴漢と間違えられ蹴り落とされそうになる。ようやく互いの正体を知り、楽善は折淙おりしょうを酈家に連れて帰る。そこで、折淙おりしょうが川に流された息子だと判明する。

折淙おりしょう酈娘子れきろうしにこれまでの経緯を話す。川に流された後、折夫人せつふじんに助けられ記憶を失っていた。折家は代々西北を守り、戦死する者も多く、40歳まで生きた者はいない。その忠誠心から太祖皇帝に認められ、府州知州の地位を世襲していた。嫡男がいなかったため、折夫人せつふじんは長男を洛陽の実家に預けていたが、再会前夜に長男が暗殺され、折淙おりしょうが身代わりとなった。成長するにつれ自分の素性に疑問を抱き、ついに折夫人せつふじんから真実を告げられたのだった。

一家は再会を喜び涙する。一方、江朝宗こうちょうそう崔謂之さいいちに美女を探していたところ、楊羨の罠にかかり、痛めつけられた挙句、役所に突き出される。翌日、楊羨は酈娘子れきろうしの作った服を著て酈家の前に現れ、復縁を懇願し、下僕にでもなると言って楽善の怒りを鎮めようとする。酈娘子れきろうしはそれを受け入れ、楽善は楊羨に辛く当たるものの、心境に変化が現れ始める。

崔謂之さいいちの口添えで釈放された江朝宗こうちょうそうは楊羨への復讐を誓う。楊羨は遊女の陶娘子とうろうしに助けを求め、江朝宗こうちょうそうを罠に嵌める。折淙おりしょうが怪我をしたと聞き、楽善は折家へ駆けつける。そこには楊羨もおり、折淙おりしょうを陥れた黒幕が崔謂之さいいちだと判明する。共通の敵を持つことで楊羨は折家と手を組むことを提案し、楽善も仮対しない。

その後、楽善は崔謂之さいいちが2000人の子供を誘拐し、自身の誕生日祝いに利用しようとしていることを知り激怒する。江朝宗こうちょうそう崔謂之さいいちに6人の女性を贈ろうとするが、村人に阻まれる。楊羨は部下を潜入させ女性たちを救出する。一方、陳孝姑ちん こうこが誘拐され、目を覚ますと楽善と楊羨が目の前にいる。二人は芝居を打ち、楊家に金塊が隠されていると信じ込ませる。

第35話の感想

第35話は、まさに怒涛の展開でした。登場人物たちの運命が複雑に絡み合い、息つく暇もないほどです。特に印象的だったのは、楊羨と楽善の関係性の変化です。3年ぶりの再会、そして楊羨の必死の謝罪。楽善の心はまだ完全に解けていないようですが、彼の誠意は少しずつ届いているように感じられました。下僕にまでなると申し出る楊羨の姿は、これまでの彼からは想像もつかないもので、彼の変化の大きさを物語っています。

また、折淙おりしょうの出生の秘密が明らかになり、酈家との再会を果たす場面は感動的でした。長い間、自分の本当の家族を探し求めていた折淙おりしょう、そして息子を待ち続けていた酈娘子れきろうし。二人の抱擁は、これまでの苦難を乗り越えた喜びに満ち溢れていました。しかし、折家の宿命、40歳まで生きられないという呪縛は、今後の展開に暗い影を落としています。

そして、忘れてはならないのが崔謂之さいいちの存在です。彼の悪行はますますエスカレートし、子供たちを誘拐するという許しがたい行為にまで手を染めています。楊羨と折家が手を組み、崔謂之さいいちに立ち向かう決意を固めたことは、今後の物語の大きな転換点となるでしょう。共通の敵を持つことで、二人の関係性にも変化が生じるかもしれません。

つづく